静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー:002 『パディントン』 ※ネタバレ有

パディントン

監督:ポール・キング

出演:ベン・ウィショー(声)、サリー・ホーキンスニコール・キッドマン

※今回は展開やシーンのネタバレ有で書きます。

 

どうも。観た日の午後3時丁度にTOHOシネマズ新宿の前にいたんですけど、通りのスピーカーからゴゴゴゴゴって音して何事かと思ったら、かなりの大音量でゴジラの鳴き声が。ゴジラヘッドの方を振り返ると口から白い煙を出してました。知らなかったのでびっくり。

 

何を観てきたかというと、まあ『パディントン』です。全くスルーするつもりだったのですが、友人の強い勧めで観てきましたよ。観たのは新宿バルト9だったのですが、平日夕方の回で入りは半分弱ぐらい。かなり評判も良いみたいですね。Rotten tomatoesで批評家98%、観客80%高評価とかやばい。有名絵本が原作ということですが、全く知りませんでした。NHKでアニメもやってたんだ。

 

最初良かったところ。屋根裏部屋の模型で家族の状況をダイジェストしたり、骨董屋の電車の模型(あの仕掛け自体も超キュート)からシームレスにその人の昔の話に移行したりする見せ方。友人がウェス・アンダーソンっぽいと言っててすごく納得。あとニコール・キッドマン。金髪ショートが似合いすぎててほんっと可愛いし美しかった。剥製にして欲しい。あと街中の5人組のバンド。エンドロールで名前確認したのに忘れてしまった。誰か教えてください…。

 

こっからダメだと思ったところを挙げ連ねます。

 

どっから書けばいいのか。いや、僕は不思議なほどノれなかったんです。これだけ周りと自分のテンションに差を感じる映画は初めてかもしれません。もうこれは好みの問題としか言えないんですが、致命的な原因が2つ。

 

まずパディントンが可愛いと思わなかった。原作の絵を見てみると、目は点に近くデフォルメされてて、やっぱどことなくプーさんっぽい。これは可愛い。一方今回のパディントンは割とリアル熊ですよね。黒目はでかいし歯茎や牙も見える。じっくり見るために画像検索してたらたまたまこういうまとめも見つけたよ!!

実写映画『くまのパディントン』が怖すぎてホラーパロディが大量発生 - ライブドアニュース

動いてもあまり可愛く見えなかったのは僕だけじゃない…はず。

 

もう1点。これは前述のパディントンリアル熊すぎ問題にも関係あるんですけど、なまじパディントンのリアルな身体の質感とかが表現できているだけに、そういうリアルさとドタバタギャグの不条理さが噛み合ってない感じがして…。

例えば歯ブラシで耳そうじしちゃうシーン。これがモンスターズ・インクのやつらとかだったら心置きなく笑えるんですけど、パディントンはリアル熊だから「おい、そんなに耳に突っ込んだら鼓膜破れないか?大丈夫?」と不安になってしまって。挙句取れるのがまた結構リアルに汚い耳クソ(?)じゃないですか。改札に挟まれるシーンとかも普通にあいつの顔怖えーし痛そうだし。あれがテッドだったらボフゥって顔がヘコんでちょっとわたとか飛び出しちゃったりなんかしてキュートなんでしょうけど。あとエスカレーターの降りるところに結構長いこと横たわるシーンとか「おい毛巻き込まれんぞ!!!」って結構真剣に怖かった。今思えばスリラー映画だったんじゃないかと。『ファイナルデッドブリッジ』観てる時みたいなハラハラ感が随所にありました。僕だけなんでしょうか…。とにかく笑えなかったんだよ!!

これブリティッシュのギャグセンスが僕にはちょっと合わないってことなのかな。こちらも評価は高いようですが、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』を観たときも思ったんですよ。全然笑えなくて。検証のためにもう1本イギリス製のコメディー映画でも観てみようかなと思ってます。何かおすすめでもあれば教えて欲しいです。

 

この2点が合わなかったせいもあってか、普段なら気にならない細かいところも気になってしょうがなかったです。地震で森はそんな風にならないのでは…とか、マーマレードそんなに入ってなかっただろとか、なにより駅に熊が2本足で立ってたらもっと驚くだろとか。ましてママも家族もふっつーーーに会話してるから「この世界では普通の存在…なのかな…?」とか。だって探検家の人がペルーで喋るクマと遭遇した事実は剥製を持ち帰らなかったから、皆に信じてもらえず、なかったことにされたんですよね???

 

「いや、これ元絵本だから。」って言われても実写映画でやられたら気になるよ。ほかの人は普通に生身の人間で思いっきり現実のイギリスだし。僕が感じていた違和感は総じてリアリティラインの問題なような気がします。きっちり設定できてなさすぎじゃないかな…。

 

リアリティライン関係なしに気になったこともあるよ。娘だよ。パディントンが家に来た時は「キモい。クサい。」の一点張りだったくせに、パディントンが偶然の連続で一躍街のヒーローになった(あのくだり自体は一番楽しかった。)瞬間手のひら返して「あれはウチのクマだ」とか言い出して。普通にムカついたんですけど。僕がひねくれすぎなんですかね。

「家」とはいつでも帰れる自分の居場所であり、「家族」とは単なる血縁関係でなく、そういう場所を共有し合う共同体なのであり、そこに血の繋がりは関係ないのだと去年『海街diary』を観たとき心から納得しました。セリフではなく物語で観せてくれたことに感動しました。『パディントン』もテーマとしては同じことを描いてると思うんですけどそういうことはセリフで言っちゃうし。子ども向けだからってこれでいいのかなあ。よくわからん。

 

愚痴多めでしたけど結構場内はウケてたのでまあ観てみて欲しいです。