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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー013: 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

監督・脚本:アダム・マッケイ
 
 
僕でも4人とも知ってるし、痛快な逆転劇を匂わせるサブタイトルや予告から割と楽しみにしていた本作。ウルフオブウォールストリート的な。
 
蓋を開けてみると専門用語乱舞にビターな後味と、鑑賞前のイメージとはかけ離れた場所に連れて行かれた気分でした。ただ不思議と嫌な感じはなく、むしろかなり集中して130分過ごせたので満足してます。でも間違いなく出てくる専門用語はある程度わかってた方が飲み込みやすいとは思うので、マネー・ショート 華麗なる大逆転 特集:オスカー授賞式直後のタイミングで公開される「注目のアカデミー賞受賞作」世界経済が破綻したリーマンショックの中、この4人は一体どうやってウォール街を出し抜こうとしたのか!? - 映画.comは読んでいくことをお勧めします。
 
ともすれば観客置いてきぼりとも言われかねない本作になぜ満足感があるのか考えると、半分ほどは『フォックスキャッチャー』の名演が記憶に新しいスティーブ・カレルのおかげです。演技の素晴らしさは勿論、キャラクターとしても入れ込みやすかった。奇しくもフォックスキャッチャーと同じような「正しさ」を巡る問題提起をしてくるキャラな訳ですけど。他のメインキャストの演技も勿論良かったですよ。特にクリスチャン・ベイルダークナイトしか観たことがなかったので、こんな引き出しがあるのかと驚きました。
 
あと、POVの体を取ってるわけでもないのにゆらゆら揺れながら不自然な引きやアップを繰り返すカメラワークが印象的でした。普段の映画ならイラつきそうなところですけど、これも嫌じゃなかったですね。金融トレーダーたちの心情や、先の見えない経済の不安定さ、僕らが現実に知る破滅の予兆なんか表すのに有効だったんじゃないでしょうか。わかんないけど。
 
で、考えてみると、さっき用語解説読んでいけって言ったけど、結局読んでも情報量が多すぎて理解はしきれないと思います。というか多分それが狙いで、冒頭に引用されるある言葉を最後まで念頭に置きながら鑑賞しろってことなんですよね。1%の人間が全体の70~80%の富を有するとか言われるアメリカ社会において、お前らがこの映画を観てる時みたいに、現実でも専門用語でけむに巻かれて騙されてる間に頭の良い奴が富を独占しているんだよと。そういうことを2時間で体験できる映画なんじゃないですか?そしてそれは日本でもさ、あるじゃん。多分会社の理念を語るときにあやふやなカタカナ言葉使いまくってるやつらとそれの意味が分かんない俺らの関係とかそうなんだよ。わかろうとしなくていいんだけど。
 
僕はこの映画を観て、自分の無知を自覚してそれ相応に誠実に生きていこうって思いました。結構身につまされる、後からじわじわくるタイプの作品でした。