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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー016: 『家族はつらいよ』が超居心地悪くて死ぬかと思った。

『家族はつらいよ』



「どうせ『昔は良かった』ものだろうけど良いらしいし…」と録画したやつをぼーっと観てたら、実は近づいてくる戦争の足跡と昔ながらの人間関係の窮屈さを不穏なタッチで描く『小さいおうち』は個人的に快作だった。

そんな訳で恥ずかしながら山田洋次2本目なのですけど、「やっぱりコメディは劇場でお客の笑い声に包まれながら自分も笑いながら観るのが最高だな!」と思って一人出向いた映画館の雰囲気にまさか居心地の悪さを感じるとは思ってもいなかった。ちなみに『東京物語』は観たけど『東京家族』は観てないです。

平日の18時の回で、4割ほど埋まった席の内案の定8割程度がお年寄り。更に言うとその中の7割ぐらいが女性だったと思う。「いいねーこれなら楽しく見れそうだ」なんて思いながら席について暗転、上映が始まった。

ジャブ的な笑いを入れながら家族構成をざっと紹介してから吉行和子が離婚届を持ち出して本筋が始まるわけなんだけど、本筋と言ってもそれについて家族と多少の部外者がてんやわんやするだけで話が二転三転したりは全くしない。勿論これ自体に全く文句はないんだけど、問題は登場人物とそれらが構成する平井家に一切魅力を感じなかったことでして…。

特にもう林家正蔵のキャラが本当キツかった。奥さんよりも「お前は黙ってろ」って思ってたよ。ダメ亭主で空気読めないキャラの上にあの絡みつくような声と話し方で、口を開くたびにイラっとした。しかも割としゃべるし。

話運びに関しても、話が二転三転もしないのは別に良いと言ったけど、さすがに「お母さんたち本当に離婚すんの?冗談でしょ?」みたいなくだりは何回やるんだよというイライラもあった。

そして終盤「色々めんどくさいけどやっぱ家族っていいよね」って思わせるための仕掛けも当然あるわけなんだけど、どう考えても弱すぎる。電話一本かよ。せめて生でやってよと思わずにいられなかった。

ただ劇場のおばさま方には大変ウケていた。いやだって、長年夫に不満を募らせてきた妻が熟年離婚を切り出しておいて「もう決めたから我関せず」キメこんでるのを尻目に家族と夫がてんやわんやしてる話なんだからそりゃ愉快でしょうよ!現実の鬱憤をフィクションが晴らしてくれてるんだもん。

作劇的にも明らかに男が悪者にされてるのでなんだか肩身が狭かったし、結婚して家庭作ったらこんなめんどくせえことが起こり得るんだなと改めて暗い気持ちになった。ていうか今の人はそういうことを肌で感じてるから結婚しないし子ども作らないんじゃないかな。特に若い男には全くおすすめできない。

いやただ役者さんたちは素晴らしい。橋爪功さんとかそろそろ還暦の親戚のおじさんの佇まいにそっくりだったし、風吹ジュンさんのファンになりそうです。ただ蒼井優は『東京物語』の原節子の役を背負わせるのには明確に物足りない。いや蒼井優のせいだけではないのだろうけど。

いやはや生きるレジェンド山田洋次の作品に明らかターゲット外であろうこんな若いのがね、文句言うなんて野暮ったいなあなんて自分でも思うんですけど。いやでも僕は単純に全然面白くなかったし心も温まらなかったというのが本当のところです。すんませんしたっっ。