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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー020: 『仮面ライダー1号』とヒーローと藤岡弘、。

仮面ライダー1号

監督:金田治
出演:藤岡弘、、西銘駿、岡本夏美、大沢ひかる、山本涼介、柳喬之、大杉漣竹中直人
 
 
仮面ライダーの映画作品は毎年3本公開されるのが定番になってます。1つ目はスーパー戦隊と同時上映される単体作品である定番の「夏映画」、2つ目は年末にテレビで放送中のライダーと1コ上の先輩が共演する「MOVIE大戦シリーズ」、そして3つ目が本作があたる「春映画」です。
 
春映画は他の二枠と比べて「お祭り感」が高いのが特徴です。わかりやすく言うと、ライダー大集合。果てにはスーパー戦隊まで大集合してライダーと対決なんてこともありました。質より量だろと言わんばかりに大雑把極まりない作りで、ファンですらまともに見るのはアホらしいレベルのカオスが展開されるというのが毎年恒例行事になってました。
 
もしファンでない人が観たら開いた口が塞がらないような代物が連発される内に、僕なんかはそれに毒され、いつしか春映画の支離滅裂に対して友人とケタケタ笑いながら文句を言いあうのまでが楽しみな境地(?)に達していました。宇多丸か誰かの言葉を借りると「コスパがいい」。トークまで含めればこんなに楽しいこともなく、毎年情報解禁の頃は心が躍るものです。
 
そんな春映画の情報を心待ちにしている僕に入ってきた本作の情報。春映画の脚本は毎年悪名高い米村正二という人が担当していたのですが、平成仮面ライダーで数々の名作(とちょっと迷作)を生み出してきた井上敏樹が脚本を担当!加えて藤岡弘、単独主演ということで、これまでの雑然としたヒーロー乱闘とは全く違う春映画が観られるのではという期待はありまくりつつも、僕の中で作風として成立しかかっていた春映画のカオスさが失われてしまうのではという危惧もありました。あと初代ライダーから関わってる金田治が監督なのは仕方ないと思いつつがっかり。「変身」をかっこよく描ける柴崎貴行監督にやって欲しかったぞ。
 
でも藤岡弘、が企画段階から関わっているということは(テレビとかの彼のイメージから)やっぱり変な作品になるに違いないぞという謎の期待感もあったりして、これほど公開が待ち遠しい映画は久しぶりでした。なので前置きだけでいつもの記事1本分ぐらいの文字数になってしまったという。すみません。
 
 
結果的には、春映画のテイストが失われて普通に微妙な一本の映画になりつつも藤岡弘、の映画としては全然許せる!!!!というところに落ち着きました。名優駒木根隆介氏の言う通りアイドル映画ですよ。橋本環奈とか広瀬すずとか観に行ってる場合じゃねえからって話。両方観てないけど。
 
最近のライダー映画は「仮面ライダーとは」というテーマを一応取り扱ってる作品が多かったような気がします。例えば去年の『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』も「車に乗る仮面ライダー」という最早ファンでも「それドライバーでは?」と突っ込みたくなるようなドライブが「それでもこの精神性を持ってるから仮面ライダーなんだよ!!」をやるからこそ生まれる感動が若干あったわけです。前半に若干ね。
 
また、奇しくも同時期公開『バットマンvsスーパーマン』、そして恐らく『キャプテン・アメリカ シビルウォー』も「ヒーローとは。またどうあるべきか」という問を内包してると思います。やっぱ『ダークナイト』からなんですかね。
 
そんな流れに藤岡弘、がどういう問題提起をしてくるのか?ヒーローとは?仮面ライダーとは?いやいや、藤岡弘、がそんなありきたりやるわけないじゃん。
 
「生命とはなぜ大事なのか?」ですよ。
 
もうね、流石としか言い様がない。予想を遥かに超えてきた。
でもこれって考えてみたら「今まで何でなかったの?」ってぐらいド直球なテーマで。ヒーローって色々いるけど基本的には「人間個々人の命を尊重し、力を行使してそれを守る」という点ではほぼ共通してると思います。その大原則の核をむき出しにしてスクリーンに持ち出してきたわけです。
 
で、何故今までなかったのかときたらそれは「自信を持って答えられる大人がいないから」ですよね。そこに御年70歳の男が名乗りを上げてきた。別にこの問いに正解はないし、藤岡弘、がスクリーンで説く論だって必ずしも正しいとは限らない。でも、間違ってはないんだろうなっていう、説得力は間違いなくある。台詞でバンバン言っちゃうけど、温和な笑顔も饒舌なんだよな。
 
それって仮面ライダー1号としての重みではなくて、藤岡弘、として生きてきた人生で経験したことから導いた教訓から来る説得力なんでしょう。最早本郷猛と藤岡弘、が一体化してるとかでもなくて、皆言ってるけどただの藤岡弘、なんだよね。ただ、日本のショッカーを倒して海外で人を助け続けた本郷猛そのものの生き方を藤岡弘、はしてきたんだとも思わされる。
 
「何故人を殺してはいけないのか」と教師が聞かれて答えられなかったとかいう話がありましたけど、答えのない問いに対して自分はこうだと思うっていうのが一個自信を持って言えたらいいし、そういう大人になりたいね。その姿が人に希望や理想を与えたら尚更いいね。って藤岡弘、を見てて思いました。いや、見てる時は「なにこれ」って感じで笑っちゃってましたけど、後から思えばこうだなって。
 
藤岡弘、が若々しすぎるせいでJKと歩いてるシーンがパパ(隠語)にしか見えねえとか、金田演出の進歩のなさとか、「命」をテーマにした現行のゴーストにテーマとして通じるようで通じてない気もする…とか映画に関して文句や言いたいことはいっぱいあるけど、とにかく藤岡弘、さん今まで半笑いでバカにしててすみませんでしたっっ。そしてありがとうございました。