静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー040: 『セトウツミ』と無駄話は青春のトレードマーク説

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監督、脚色:大森立嗣

脚色、構成:宮崎大

出演:池松壮亮菅田将暉中条あやみ鈴木卓爾、成田瑛基、宇野祥平 他

 

もうそろそろ上映回数減って来てるんですけど、観に行けない人は公式の特報だけでも面白いんで観てください。延々こんなことをやってる映画です。しかもこれ撮りおろしなので映画観た人にもオススメです。

www.setoutsumi.com

 

お久しぶりです。最近新作が観れておりません。ややあって小津安二郎の映画を観まく(るという苦行をや)ってるからです。小津映画はマジで3ヶ月に一本ぐらいが丁度いいなと思いながら今月15本ぐらい観ました。今月中にあと20本観なくてはいけません。後回しにしてきたのが悪いんだけどさ。頑張れ俺。終わったらシンゴジラだ。

 

そんな感じで下半期の出遅れ具合が酷いことになってるんですが、一発目は前から楽しみにしてた本作に決めてました。新作も池松壮亮菅田将暉が喋るだけの映画なんて面白いに決まってるだろうと初報から楽しみに待っておりました。

 

結果としては満足。いやでも正確には腹七分ぐらい。食い足りない気持ちもあるけどそれは多分尺のせい。というか「もっとあの2人と一緒にいたいよ!!」と思わせる、けど一応の満足感はある丁度良い尺だったんじゃないかな75分って。

 

これまた七割ぐらい埋まった劇場からは終始笑いが起きてて嬉しかった。嬉しかったと言うのは、若い人が多かったからなんですけど。劇場で声をあげて笑うのって大概場慣れした高齢の人が多くて(名画座のシニアなお客達とかむしろ何故そこで笑うんだってぐらい笑う)、若い人は割と硬いイメージがあったので。皆笑ってれば笑いやすい空気ができるし、そういう空気に包まれながら観てると「映画館で観て良かったな」と思ってくれるだろうから、そこが嬉しかった。

 

ところでこないだの「ダウンタウンガキの使いやあらへんで」が狩野英孝七変化って企画だったんですよ。狩野英孝がガキ使の打ち合わせの現場(という体の場所)で7回ネタやるっていう。案の定最初の2回はダダスベりしてて、誰も笑わない。テレビの前の僕まで変な脇汗出てきちゃって。エアコンつけてるのに。

 

映画館でも同じようなことがあって、笑える映画のはずなのに誰も笑ってないと「(あれ…?ウケてない…)」と謎の危機感が生まれて上手く楽しめなかったり。そういう人いないかな。もしかしたらいるかもしれないので僕は面白いと思ったらなるべく笑うようにしてます。笑うようにしてますって変なんだけど、「僕は面白いと思ってますよ」というのが周りに伝わるとそれで笑いやすくなる人がいるかなって。さっきの七変化でもお誕生日席で怖い顔して狩野の芸を見てるハマちゃんが笑うと皆(多分安心してっていうのもあって)笑うって場面があったんですよ。そういう感じ。

 

(因みに同じ列で観てた老夫婦が終始くっちゃべってて「帰れ」って思ってたら途中で帰りました。なんだったんだ。)

 

いきなり脇道に逸れたというか、作品の感想とは違うことになってしまいました。僕は前述の通り主演の2人が大好き。2人について語る前に、そもそもこの漫画を実写映画でやるってなると、興行的に成り立たせるためにも内容の質を担保するにもベストキャスティングだと思う。人も集まるし、会話だけで間を持たせることができる。アップにも耐えうる顔だしね。ただ池松は高校生にしては髯の剃り跡が濃かったね。あとこの作品で2人の距離が急接近したっていうのが嬉しい。

www.cinematoday.jp

 

菅田くんはデビュー作「仮面ライダーW」の第1話からの付き合い。付き合いとか言うと勘違いファンみたいな感じ出ちゃうけど、1年間リアルタイムで毎週観てたので情が湧くというか。特に菅田くんの場合最初は(当たり前ですが)今からは想像できないぐらい演技がたどたどしかったので、成長を見守ってきたという意味では余計に距離感が掴めないというか。好きとかファンとかとは少し違う親しみがあった。でもやっぱり彼を1人の役者として好きになったのは『そこのみにて光輝く』でしょう。『共喰い』とかで活躍を耳にしてはいたんですけど、実際ちゃんと映画で演技を見て成長に驚愕しました。Wの1年も相当だったけどそれ以上に経験を積んでやがる……と。

 

今回彼の演じた瀬戸くんは若干そこのみにて〜の拓児を彷彿させる人懐っこさとハイテンションさが微笑ましい。(うっすら貧困と辛目な家庭環境の香りが漂ってるところも。)「このポテト長ない?」とかそういう日常のどうでもいいことに気付ける感性って大事にしたいよ。そんなしょーーーもないことを話せる友達がいるってのも彼にとっては嬉しくて仕方ないのだろう。多分サッカー部のやつらにそんなこと言っても「で?」って言われるだけだもんな(偏見)。高校のサッカー部って大体嫌な奴だし(偏見)。

 

 

池松はまあまあ良かった。

 

 

というのはあれですけど。池松壮亮くんのことはなるべく嫉妬を込めて池松と呼ぶようにしています。なぜなら『紙の月』で宮沢りえとイチャコラするか様が羨ましいからです。更に腹がたつのは演技が非常に達者なこと。ヒモ男が板につき過ぎている。かと思えば『海よりもまだ深く』で良い感じの後輩とかもやっちゃってさあ!なんだよ!最高!『私たちのハァハァ』も良い役だったね。

 

そんな達者なあいつが演じる内海くんは思春期にありがちな「周り皆バカ病」の患者さん。まあそういうのあるよね。塾まで暇と言いつつ塾行って自習したりしないのは彼なりに抵抗があったからなのだろう。なんかワスプマザーというかネグレクト気味なのかな。そこで瀬戸みたいのに会えたらそりゃサボりたくもなるわ。例えツッコミの例えの部分がやたら凝ってるのとかちょっと昔ありがちだったので恥ずかしくなった。それがやった相手に理解されてないのは幸か不幸か。内海くんは瀬戸と話してる時のナチュラルツッコミの方が面白いよ。

 

無駄話って青春だと思う。例えば前述の小津映画は登場人物の大半が20代後半から60代。たまに子どもも出てくるけど清涼剤程度というか、話には絡まないことが多い。とにかく結婚の話、仕事の話、生活の話、昔話、近況の話、人生の話…など無駄な話がない。「この線香長ない?」とかないから。そういうのばっかりだったからすごく癒された。観るタイミングがとても良かった。

 

ていうか最近観た青春映画『スタンド・バイ・ミー』や『リンダリンダリンダ』にはやっぱり無駄話シーンがあるんだよ。ちゃんと。日常の些末なところに気付ける感性や口にするのもアホらしいと思わない純粋さと、そういうのを口に出しても受け入れてくれるウマの合う友人の存在が無駄話という豊かな時間が生むのかもしれない。何より親に庇護されてるところからくる余裕と不自由さあってのものなのだから、やっぱり若さのトレードマークかもしれない。無駄話。

 

あと宇野祥平さんが出てるとわかった瞬間笑っちゃったよ。

脇役繋がりであ、ヒロインにはすごい言いたいことがあるよ(ここ来て微ネタバレ)。

 

 

イケてる(ように見える)彼女作らない(作れない)男にすぐゲイ疑惑かけるタイプの女!!挙句暴力に走るタイプの女!!あれは酷い。顔が良くても内海くんが関わりたくない気持ちがすごくわかった。内海くんには女を見る目がある。寺生まれでその道徳観の低さはヤバいよ。仏教の評判落とすよ。あと最後はなんか良い事いってシメてんじゃねえよ!!瀬戸と内海の世界に早く戻りたいと思わせてくれたという意味では評価したい。瀬戸と内海最高!!!