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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー047: 『後妻業の女』

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脚本・監督:鶴橋康夫

撮影:柳島克己

音楽:羽岡佳

出演:大竹しのぶ豊川悦司尾野真千子長谷川京子水川あさみ風間俊介余貴美子ミムラ松尾諭笑福亭鶴光樋井明日香梶原善六平直政森本レオ伊武雅刀泉谷しげる柄本明笑福亭鶴瓶津川雅彦永瀬正敏

 

 

映画を観たのが9/14、原作を読み終わったのが9/22辺りで大分時間が空いてしまった。なんせ雨ばっかりで何もやる気が出なかった。何でも雨のせいにする。

 

加えてと言うべきか微妙だけど、この映画から貰ったエネルギーは、原作を読むことに遣ってしまったようだった。映画は登場人物たちの年齢や立場と関係なく、ただ自分の欲に忠実で活動的な人たちの話で、エネルギッシュな魅力に溢れていた。

 

一方で、原作版は(これは読み手のイマジネーションの問題でもあるかもしれないけど)どことなくささくれ立っていて、重たい。軽快に読み進められる関西弁のやり取りに挟み込まれる、金のみで繋がった者同士心情描写がその表面上のノリと乖離していて、なんだか気が重い。人物の周辺のことも掘り下げられ、「皆色々事情があるのね」と同情してしまう。

 

勿論映画版は原作をベースにしているから、柏木が小夜子を煙たがりつつも利用している点は共通なんだけど、でも映画版の小夜子には大竹しのぶが演じる以上どことない憎めなさがあって、それは豊川悦司演じる柏木さんとて同じなようで、ラストでは満面の笑みでタイタニックの真似事をするという心象風景のようなものが挿入される。屈託の無い笑顔でアホなことをしていて、その前のクライマックスの展開も相まって(良い意味で)呆れつつ笑ってしまった。

 

映画版で印象的なシーンはほとんど映画オリジナルのものというのが驚きだった。冒頭の海辺婚活パーティー、船上での自己紹介、思い出のツイストダンス、ニセブランド屋、すごいベロキス(すごい)、タクシー生着替え、焼肉屋乱闘、そしてクライマックスの展開…。会話と書類、聞き込みが主な原作の骨子をそのままに、生の人間が躍動するシーンを散りばめていて、それが別の魅力に繋がっていくという素敵なアレンジの映画版だったと思う。

 

他の役者の話をすると、MVPは樋井明日香。もう「りさ」という女性の名前を聞くだけでちょっと興奮する。素晴らしい。風間俊介の使いっぱ役を観られたのは『任侠ヘルパー』好き的にはニヤニヤできて良かった。