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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー051: 『怒り』

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監督:李相日

出演:森山未來綾野剛松山ケンイチ広瀬すず妻夫木聡宮崎あおい、佐久本宝、池脇千鶴、水澤紳吾、ピエール瀧三浦貴大高畑充希原日出子渡辺謙

原作:吉田修一

音楽:坂本龍一

 

八王子で起きた夫婦惨殺事件の犯人の情報がテレビで報じられる中、東京、千葉、沖縄に現れた3人の素性不明の男と、それぞれ巡り会った周囲の人物たちの話です。

 

「(ほぼ)交わらない3つの話が並行して語られる日本映画」と言えば橋口亮輔監督の『恋人たち』を連想します。ラスト付近、3人の主人公たちの独白が数珠繋ぎになるクライマックスとも言えるシーンの連なりを観ながら僕は「この映画はコミュニケーションを巡る話なのだなあ」とぼーっと思っていました。

 

本作も同じような感覚で、(僕にしては珍しく)観ている途中に「人を信じる」というテーマがうっすら去来していました。まあ同じテーマのお話を3つ語ってるんだから伝わりやすいのは道理なんでしょうけど。

 

また、「ミステリー的な見出しで興味を惹かれて観てみたらそこはメインじゃなくてメッセージ性の強い映画だった」という意味では『明日、君がいない』を想起しました。こちらは「冒頭に誰かが自殺→それぞれ悩みを抱える高校生6人の群像劇→誰が死んだかわかる」という流れで、推理による興味の持続を頼りに映画を観ていた当時の僕は、観終わった後とてもヘコみました。なぜかは観て欲しいので言いません。

 

映画を観てる時は基本的に頭空っぽなので、テーマが頭に浮かんできたり、似てる映画を連想したりすることがほぼないのでちょっと嬉しい。

 

演技はほとんどの役者が素晴らしい。メインビジュアルの6人は勿論、オーディションで沖縄の男子高校生役に選ばれた佐久本宝くん、キーマン水澤紳吾さん、ゲイパーティーシーンで素晴らしい裸体を見せつけながら妻夫木くんの匂いを嗅ぐ(!)岩永洋昭さん、そして高畑充希ですよ。何あの目線の動かし方。正直「梅酒のCMやってた可愛くない人」というイメージしかなかったので驚きました。個人的に渡辺謙が町内に娘の噂が広まってることを松ケンに話すシーンと並ぶぐらい、彼女の語りのシーンは良かった。あと『マイバックページ』でも思ったけど妻夫木聡は泣く演技が上手ー。

 

犯人の物語は、ある種人に裏切られたことに端を発していました。その結果、殺人という方法でまた別の人を裏切る。その後彼が何かを信じたのか、何かを裏切ったのか、役者の演技によって、観客が考えながら観られるよう昇華されている点が映画的だと思う。

 

重たいのでもう観たくはない…けどもう一回観ながら考えたい…。