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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー053: 『永い言い訳』

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監督・脚本・原作:西川美和

出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、池松壮亮山田真歩堀内敬子黒木華深津絵里

 

少し内容に触れているので観てない方は読まないことをお勧めします。

 

 

予告を見た時は①「シリアスで重たい話」、②「愛してない妻を失った夫が、その不在から想いを改める話」という印象を受けた。僕の場合(恥ずかしい話ですが)西川監督の作品も結局観ずじまいできてしまってたので、余計にそんな型通りの話が展開されるんじゃないかと疑っていた。まず全く違ったことを勝手にお詫びすると共に以下で弁明させて頂きます。

 

まず①だけど、現時点で映画館で観た53本作品の中でもかなり笑った方だった。特に竹原ピストルの強面をフル活用した緩急で笑わせる芸(?)は本当にうまいと思った。「笑い=緊張と緩和」ってこういうことなんだなあと感心した。そして見た目ばかりカッコ付けの自意識オバケの幸夫くんをここまで愛すべきキャラにしてるのはもっくん力なんだろうと思う。天国の妻二人も残された旦那二人のジタバタをケラケラ笑いながら見ているのではないでしょうかね。1番笑ったのは、妻の死を知った疎遠だったと思われる知り合いからの宗教勧誘の電話をバックに荒れ放題の幸夫くんの部屋が映されるところ。字面にすると全然笑えないけどね。

 

 ②。多分幸夫くんの妻への想いはラストまで変わらなかったと思う。しかし妻の死に何も感じない自分に嫌悪感は少なからず感じている。同じ境遇にも関わらず喪失感で滅茶苦茶になっている男が傍にいるから余計だろう。その「免罪符」としての子育て。しかも同じ境遇とは言え赤の他人の子どもの。その結果何が変わったかって自意識だと思うし、まあ、「人生は他者だ」の一言に集約される。

 

いや、要約すると本当面白くないですね。映画ってすごいね。他者を通じて自意識が変化するっていう点ではやっぱ『何者』とちょっと似てるなあと。こっちはアダルト版だけどね。劇場の年齢層はとても高かった。

 

関係ない極私的論だけど、人間は社会的な契約を結んで結婚相手という専属の他者を作り、その次に共通の他者としての子どもを儲けて…っていうのを繰り返してきてるんでしょうね。普通は他人の子どもにここまで入れ込むシチュエーションにならないでしょうからね。

 

ちなみに僕のベストシーンは竹原ピストルがトラックの車内で一人でカップ麺食べながら妻の留守電聞いてるところです。書いてて僕は孤食(飲)シーンが好きなのかもしれないと思いました。『恋人たち』のカレートースト、『オーバーフェンス』の唐揚げ弁当、『フォックスキャッチャー』の車内ハンバーガー&部屋での袋麺(?)、『秋刀魚の味』のバーでウイスキー→家で水、『グラントリノ』のビール、『海よりもまだ深く』の立ち食いそばなど。食事や飲酒と言えば食卓や会話が想起されるからなんでしょうかね。