静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー054: 『デスノート Light up the NEW world』

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監督:佐藤信

原作:大場つぐみ小畑健

出演:東出昌大池松壮亮菅田将暉戸田恵梨香川栄李奈藤井美菜船越英一郎中村獅童沢城みゆき松坂桃李松山ケンイチ藤原竜也 他

 

※少しだけ内容に触れてます

 

『淵に立つ』も『ダゲレオタイプの女』も『ぼくのおじさん』も『溺れるナイフ』も観れてないのにわざわざこの映画をチョイスしたのは菅田・池松見たさ以外の何者でもございません。

 

僕の場合映画の前2作は遥か彼方の記憶であまり憶えてないし、原作も未読。勿論ノートのルールもほとんど把握できてない状態だったので、ほどほどに頭は働かせながら観なきゃいけない。でも突っ込みどころが逐一気になる作劇で、ディティールを考えるのもアホらしくなってくる。「調理に手間がかかる上に歯と歯の間にめっちゃ挟まって食べづらいのにそんなに美味しくない料理」みたいな映画でした。例えが上手くなりたい。

 

お話は終始そんな感じだったのですが、池松壮亮が演じた竜崎は割に好きなキャラであります。本人のバックボーンは殆ど描かれないんですが、Lから継いだ意思を完遂させるという目的意識が行動や言動から一番感じられたからかな。キャラとしての落としどころもニクい。そんなことされたら好きになっちゃうだろと。実においしい。実質的に竜崎が主役だったと思ってます。出番も多かったので映画全体の印象が悪くないし、この映画の良心と言っていい。まあ言いたいことはあるけど。池松壮亮はフィクショナルな役も行けるんだなと幅の広さを感じた。

 

逆に菅田将暉演じる紫苑と東出昌大の三島が割を食っているというか。

 

三島くんはデスノート対策本部のエースと言われてる割にそういうことを感じさせるシーンがほぼないのが辛い。その上なぜデスノートを追うかの動機付けが同じ立場の竜崎と比べて著しく弱い。2人の天才に翻弄される受身の役であるにしても、それはキャラの弱さとは別問題だと思う。かと言って2人の引き立て役になってるわけでもないし。「じゃあ何してんだよ」と言われると僕も困る。東出昌大はやっぱ桐島やクリーピーみたいな役がいいよ、うん。

 

紫苑はサイバーテロリストとして笑っちゃうぐらい万能で、ノートの使い方でもっと天才ぶりを見せてくれよと思わずにいられない。これはデスノートの映画だからと小一時間問い詰めたくなった。超映画批評の人が「デスノートの強みはステルス性にある」と言ってたけどまあその通りだし、劇中の人物にすらそこを突っ込まれてたのでノートの扱いの下手さに関してはある程度確信犯だったのかもしれない。菅田将暉はもう安定感しかない。個人的には少し仮面ライダーWのフィリップくんを彷彿させる台詞があって嬉しかった。

 

紫苑はノートの使い方が下手、竜崎は予告でも言ってる通りLの意思を継いでノートは使わない、当然対策本部の三島も使わない。ノートを使った一方的な大量殺戮を行って悪目立ちした結果、主要人物にノートを狩られるという、まあ噛ませ犬的な立ち位置のやつらはいるんだけど、勿論知的とは程遠い。又はノートを奪取される過程のシーンをすっ飛ばされるキャラ等…(ちなみにここは小説版で補完されてるらしい)

 

結果として皆さんが仰ってる通り、「劇中で」「デスノートを使って」「頭脳戦」をする奴がいない。原作と映画前作の魅力はここじゃないんですか。魅力と言うか前提としてそういう話だろうし、観に来る人は大体思ってるはず。ここを削いでどうすんだよ。この映画のダメなところはここに尽きるでしょう。

 

だから、言ったらこの映画におけるデスノートは極端に言うとドラゴンボールみたいなものになっちゃってる。集める対象として偶像化されているというか。加えてノートが6冊あるのに早いうちに結局敵側と味方側に集まっちゃう。だから構図としては1vs1になってて、6冊ルールを活かせてる訳でもない。前述した通りノートを持った噛ませ犬が出て来るだけだから。シブタクがデスノート持ってるようなもんですよ。6冊ルールこそ連ドラでじっくり計算してやったら面白くなりそうだったのになー。勿体無い。

 

不満を上げ連ねる方が筆が進むし、文としても何か理屈が通ってる風なのが悲しい。そもそも映画という非言語的なメディアから受け取った、言葉にし難い感慨を具体化して共有したくてこういうブログを書いている訳で、簡単に文章にできたら僕にとってはよくないのである。やっぱそういう意味でも今年僕が観た映画達は質が高かったんだなと思う。前回の『永い言い訳』とかこの半分の文字数で10倍ぐらい時間かかったもの。

 

最後にこの映画を観ていて僕の頭に去来した小津安二郎の名言を貼ってシメたい。

「映画はドラマだ。アクシデントではない。」