静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画075: 『スプリット』

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監督:M・ナイト・シャマラン

出演:ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリージェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソン 他

 

 ※内容触れてます※

 

邦画良作ラッシュだった去年の揺り戻しかのように洋画ばっかり。邦画が特撮しか観られてない。というかそもそも映画館に行けてない。いかん。

 

 

かの有名なシャマラン監督の前作『ヴィジット』がすんげー面白かったので、多少ホラー色強めの印象を受けても観に行くことに迷いがなかった本作。

 

事前情報からは「多重人格のサイコパスが色んな人格を切り替えながらキャイキャイ騒ぐ3人の女子高生を追い詰めるパニックホラー」みたいな感じをイメージしていた。実際観てみると割と趣が違った。それ自体はいい。

 

問題は、うん、肩透かし気味だった感じが否めなかったこと。間に逐一カウンセラー婆ちゃんとマカヴォイの会話が入ってくるので正直中盤まで眠くて死にそうだった。もっと言っちゃうと『ドント・ブリーズ』の感じを勝手に期待してしまっていた。限定された空間を舞台に無力なJKがなんやかんやで多重人格者の魔の手から逃れる(或いは撃退する)感じを。

 

冒頭、女の子3人の人物描写がほぼないまま誘拐された時点で若干嫌な予感がしていたんだけど、2人がほぼ何もしないまま殺されてずっこけそうになった。しかも設定的に割と終盤まで引っ張るもんだから「結局何もせず死ぬのかよ…あのハンガーのカチャカチャやるくだりなんだったんだよ…」とか思ってしまった。マカヴォイも8人格ぐらいしかいないし「3人vs23人」ってキャッチは看板に偽りありでは…。

(ちなみに24人格というのには元ネタがあるらしいっす。)

 

対して主人公の子は間間に回想を挟む形で人物を掘り下げてたけど、あれも集中を削ぐだけであんまり効果的とも思えなかった。ビーストが主人公と同じような境遇から生まれた存在ってのが最後にわかるんだから見え方も変わんないし、もう少し何とかならなかったのか。

 

そのビーストが実在するのかどうか、いつ覚醒するのか、覚醒するとどうなるのか、なぜ3人は誘拐されたのか、などミステリー的な引きがあるから観てたけど、結構あっさり台詞でバラしたりするので、うん、逐一噛み合わなかった。

 

虐げられていた者が自分を守るために生み出した人格の最終形態(っていうのは考察サイト読んで納得した情報なんだけど)が世間に対して攻勢に転じるという設定自体はとても好きなんだけど、なんかそこはそんなに重要じゃないのか?とか思っちゃった。

 

あとあの最後のネタだけど、あれは単体の『スプリット』という作品自体とは関係ないから何とも言えない。『アンブレイカブル』を観た人はあの電車のホームに花を手向け、車輌で覚醒するシーンでビビッとくるのかもしれないけど。僕もあのハゲが出てきたときはびっくりしたけど、その反面何の作品のハゲかわからなくて微妙だった感は否めない。

 

だったら先に「シャマランユニバース第一弾」とか言っといてくれた方がよかった。シャマランも恐らくわかっててファンに向けて「ナイショだよ」とか言ってあのネタブチ込んだんだろうけど、ファンでもない僕は置いてかれた感じがすごかった。今流行りの作品を超えた繋がりがあるということを明かすこと、それ自体をどんでん返しの部分に持ってきたこと自体は面白いとは思うけども。

 

アニヤ・テイラー=ジョイはすっごく良かった!!ごちそうさまです!!