静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画084: 『パトリオット・デイ』

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監督:ピーター・バーグ

出演:マーク・ウォールバーグケビン・ベーコンジョン・グッドマンJ・K・シモンズミシェル・モナハン

 

 

ピーター・バーグと言えば今は亡き新宿ミラノ座のバカでかいスクリーンで『ローン・サバイバー』を観たことが思い出される。本作の直前に公開された『バーニング・オーシャン』は上半期見逃して最も後悔している映画。

(あと『バトルシップ』最高)

 

本作とその2本はピーター・バーグの作品の中でも実録三部作と位置付けられてるらしい。いずれも2005年(レッド・ウイング作戦)、2010年(2010年メキシコ湾原油流出事故)、2013年(ボストンマラソン爆弾テロ事件)とアメリカ人に起こった事件を題材にしている。ちなみにどれも発生から10年以内に大きな規模映画化していて、バーグ監督とアメリカ映画界のフットワークの軽さにまず恐れ入る(日本は小規模映画が率先してやってるイメージ)。

 

パトリオット」が「愛国者」の意味であるというのはメタルギアソリッド3(ゲーム)で知った。愛国心と言えば真っ先に『フォックスキャッチャー』と『アメリカン・スナイパー』が思い出される。2014年の2月に立て続けに観たこの2本に共通しているテーマだなあとぼんやり考えていたからだ(ちなみにその年の7月早稲田松竹で「愛国心、栄光の影に」というタイトルでこの2本立てをやってた)。この2作における愛国心は、私生活で満たされない自分の心を埋めるために利用されるものであったり、それを発端としてとった行動が自らを滅ぼす結果になったりと、様々な形に歪んだものだった。

 

そんでこないだウサイン・ボルト桐生祥秀(日本陸上の若きホープ)に贈った言葉をネットで見た。以下引用。

「最後に1つ、いいかい。日本の陸上界にいいたい。

桐生にあまりプレッシャーをかけないでほしい。

いいか、桐生。自分のために走れ。それが国のためになればいい。

まずは『自分のために走る』。そして『楽しむ』。

それが日本のためになるんだ。決して国のためだけに走ってはだめだ。」

 

これを見て逆説的にこの2作に共通していることがわかった。それは「最初から『国のため』を念頭に置いて行動する人が悲劇的な結末を迎える」ということだった。

(全くの余談だけど戦争はその最中、最初から国のために何かをすることを国から強制させられる状態が続くということなので反対。)

 

パトリオット・デイ』の中には元ネタとなった実際の事件に関わった人たちのインタビュー映像が用いられている。彼らは口々に「愛」という言葉を用いて事件を語る。それは単に家族や恋人に対する愛だったり、隣人愛だったり様々なんだろうけど。とにかく目の前の危機に対して勝手に動いてしまう身体のエネルギーになるようなもの、なのかもしれない。

 

彼らは結果としてその「愛」がこのテロ事件を早期解決に向かわせたと語る。ピーター・バーグは彼らの発言をリスペクトしてこの劇映画を作った。そしてその劇映画の力でこの恥ずかしさすら感じるようなテーマを爆発させ僕らに伝えてくれる。目の前の人々を愛することが結果的に国を守ることになる、なぜなら国とは人の集まりだから。ピーター・バーグのこの姿勢が好き。

 

「最初から『国のため』を念頭に置いて行動する人が悲劇的な結末を迎える」というのは、犯人のテロリスト二人組にも言えることなのは言うまでもない。

 

不謹慎かもだけど銃撃戦が普通にすごすぎて、あとGTAやってる時の俺みたいで笑っちゃった。よかったです。