静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画091: 『スパイダーマン ホームカミング』

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監督:ジョン・ワッツ

出演:トム・ホランドマイケル・キートン、ジョン・ファブロー、ゼンデイヤマリサ・トメイロバート・ダウニー・Jr

 

※少し内容に触れております※

 

サム・ライミ版について書くとMJの悪口が止まらなくなるしアメイジングは(特に2に)思い入れがあって止まらなくなるので敢えて触れないことにする。

 

まあまずよかったですよ。公開4日で2回観たよ。これまでで最も親しみやすく且つ新しいスパイダーマン(=ピーター・パーカー)像。マーベルシネマティックユニバースの世界の一員であることを全力で活かしながらも単体の映画として正直MCUの中で一番面白いと思う(ソーとハルクは観てないけど多分変わらないとも思う)。

 

なんたってファーストシーンで完全に引き込まれてしまった。MCUの世界にも市井の人々が息づいていて、その中には確かな弱者が存在するということ。そして『アベンジャーズ』で地球に姿を現した宇宙人種チタウリが、そこに住む人類の世界を変えてしまった瞬間。『シビルウォー』では直接的な人死にが取り沙汰されていたけど、今回はヒーローやヴィランたちが間接的に人々に与える影響を描いていたのが面白かった。 尚且つ今回のヴィランであるヴァルチャーのキャラとしてのつかみはバッチリという算段。強さの説得力(理由)もある。素晴らしい。

 

 続いてベルリン研修旅行という名のシビルウォーをピーターが手持ちカメラで撮影したフッテージのシーン。シビルウォーを観てない人にもピーターがどういう経緯でアベンジャーズと関わりを持ったかがわかり、まあ一応そういう内ゲバがありましたということがわかり、そして何よりピーターがアベンジャーズ(世界を守るヒーローたち)に多大な憧れを抱いていることがわかる。単純に笑える上に導入としてフレッシュで親切。もう2シーン目にして安心感しかない。

 

今回のピーターくんはこれまでのピーターくん2名との差別化がハッキリ為されている。まだ15歳と若いこと、叔母さんも若くて美人なこと、自分と同じくギーグの友人がいること。しかし決定的に違うのは上述の2シーン目で描かれた最後の一点、ヒーローへの憧れ、だと思う。

 

偶発的に超能力を手にしたという点では同じでも、当初の彼のモチベーションには「すごい人たちに認められたい」という部分があった。言ってしまえば承認欲求。更に言うなら実生活で満たされないオタクのそれ(でもそれなりに楽しそうなのはネッド君の存在が大きいのかもしれない)。

 

自分はやっぱりヒーローには人知れず戦っていてほしいのかもしれない。名誉とか認められるとか抜きに、純粋に人命を救うために動く姿に心動かされる。自分にしかできないこと、自分のやるべきこと、自分のやりたいことが人命を救うことである者が真のヒーローになれる。大いなる力に伴う責任を果たすために自分を鼓舞し立ち上がるシーンには素直に熱くなったし、心底頑張れと思った。

 

失敗を繰り返して遂にピーターくんはヒーローの入り口に立った。結果的に先輩たちに認められるという当初の宿願は叶ったけど、時既に遅し。彼の頭には最早自分の手の届く範囲の人たちを救うことしかなかった。

 

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 もそうだったけど、僕と変わらないようなメンタリティの持ち主が、僕が憧れていた(る?)ヒーローになってゆく、そのグラデーションの部分に心動かされるのかもしれません。

 

(全くの余談ですが先週放送が始まった「仮面ライダービルド」にもそこのところは期待したいです。前作エグゼイドの主人公は1話から割と完成されたヒーロー観の持ち主だったので。)