静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画097:『スイス・アーミー・マン』

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監督:ダニエルズ

主演:ポール・ダノダニエル・ラドクリフ

 

※内容に触れてます※

 

僕モテメルマガで話題になっていたので、「無人島」「死体」というワードと劇場で見たポスターのビジュアルだけしか知らずに観にいった。

 

最低限の前情報しか入れなかったのが良い方向にはたらいたと思う。とにかく97分間物語的にも、画面に映るものも、全てが予想の斜め上を行きまくる。一体どうやったらこんなことを考え、形にすることができるんだろう。人間のイマジネーションとそれを形にする作り手の成果として感心してしまった。観終わったあとはね。

 

観てる時はとにかく「えっ何これは」という引き笑いの連続。不条理コメディと言ってもいい。スイス・アーミーナイフ(十得ナイフ)ならぬスイス・アーミーマン(十徳人間)を駆使してサバイバル。屁で泳ぎ、身体に雨水を口からマーライオンばりに出し、脊髄を曲げた反動で木を折り、歯でヒゲを剃る。動力源は愛。なんだそれは。しかもこれをダニエル・ラドクリフが迫真の演技でやり切る。ケツも出す。もうこれだけで還暦あたりまでこの映画忘れないよ俺。

 

終始そんな感じなんだけど観終わったあとは謎の爽やかさがある。精神的に社会から弾かれた(と勝手に思ってる)ポール・ダノが誰も人がいないところで肉体的に社会から弾かれた(と地球人なら誰しも認める)ラドクリフに出会う。僕ら観客しか知らない変人二人の世界。人知を超えた変人に出会って一皮むける変人の話。

 

ただ本当のゴールは変じゃない人が「変でもいいじゃん」と変人を認めてあげられるとこな気がする。ラドクリフとの別れの後、ポール・ダノは普通に社会の中で生きるだろう。でもその中で出会った変人のことを認めてやれる男になったんだと思う。同時にダメな自分のことも。