静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画127:『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

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監督:ボー・バーナム

出演:エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン 他

 

 

アルフォンソ・キュアロンが「ここ最近で一番、泣いた映画」とかいう女子大生みたいな感想を寄せてることで話題の映画です。

 

今までも映画について書いてると自分の話になってることはままあったけど、ここまで映画と自分の近似値が高い映画は初めてかもしれない。こちとら中3から10年ぐらいTwitterに入り浸ってるんだよ。ナメるな。

 

主人公は現代のアメリカに生きるエイス・グレード(中学2年生)の女の子。物心ついた時にはスマホTwitterもあった人類初の世代。

自分のことを「私は喋れないんじゃなくて喋らないだけ。クラスはアホばっかり」と信じてるタイプの中学生でもある。自撮って人生を語るYouTubeの再生回数は軒並み1桁。JCなのに1桁。

 

とはいえこのままじゃいかんってのはわかってるから変わろうと勇気を出してカースト上位女子のプールパーティーに行ったり学校で話しかけたりする。結果はお察し。

 

もう俺はこの子の"リア充(死語)だらけのプールという名の戦地に向かう時の水着に乗った肉と猫背とだらしないケツの後ろ姿"で笑いながら悶えた。イケてないティーンエイジャーものの大傑作『スウィート17モンスター』でも、ここまでフィジカルで訴えかけてくるカットはなかったと思う。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラピの上裸に匹敵する身体的説得力。このクソダサい水着を着させてオーディションをやったのかと勘繰りたくなるレベル。自信のなさや恐怖心が伝わってくるのに申し訳ないけど笑えてしまう素晴らしい一瞬だった。

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静止画でも十分おわかり頂けるだろう

 

彼女は頭が良いので大事なことは全部わかってるし、言葉にすることもできる。でもそれが実行できない自分の現実とのギャップに苦しんでる。そこに向かって一歩踏み出した時に感じる自分の何でもなさとかその場での存在価値の低さとかが分かっていく。身の丈を思い知る。それは立派に大人になるっていうことだと思う。その積み重ねが自分を作って、得てきた実感が本当の自分の言葉になっていって、お父さんみたいに身近な人にそれを伝えられる大人になれたらサイコーだね。

 

昔の自分となりたい自分をその狭間の今観れたような気がした。

 

オススメしてくれたけんす。さんとなんすけさんに感謝します。