静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

自分と父の話。『家族を想うとき』。

父との関係に悩む男が『家族を想うとき』という映画を観てあまりに刺さりすぎて、そのまま映画館のロビーで書く文章。ほとんど自分の話だよ。

 

 

父親は昔っから仕事で家にいなかった。朝起きたらもういないし、自分が寝た後に帰ってくるような感じ。僕は幼少の頃、仕事に行く父に「また来てね」と言い放ったことがあるらしい。

 

父は僕が中2になるまで皆知ってる大手の運送会社にいた。その後脱サラして自営で運送業を始めた傍ら、コンビニでバイトしてた。今はフランチャイズでコンビニのオーナーをやってる。

 

 

そんな父とあまり仲がよくない。

 

正確に言うと僕が一方的に距離を置いている。小学生の時はキャッチボールしたり銭湯行ったりしてたのに、いつの間にか同じ空間にいることに嫌悪感すら感じるようになっていた。僕に対して手を上げるようなことは勿論、怒られたことすらないのに。

 

父と母は些細なことでケンカしていた。特に3人で買い物や外食に行くと必ずと言っていいぐらい。父は短気で、母は負けん気が強い。僕は一人っ子というのもあり、仲介してくれる人もいない。間にいて居心地が悪かった。

 

加えて父はサラリーマン時代、家にいるといつも仕事の電話に追われていて、その都度部下にキレていた。今でも怒っていたり不機嫌な人に敏感だし、いれば鼓動が早くなるのがわかる。社会人になってちょっとはマシになったけど。

 

あと言動やファッションが奇抜で人に紹介するのも昔から恥ずかしかった。周りから見たらとても面白くて良い人だから親戚や友達にはめちゃくちゃ人気あるのも自分的にはモヤモヤしてた。いい人なんだけどね。

 

多分そんなことの集積が段々自分を父から遠のかせていった。お互いあまり話しかけないし、話しかけられても良くて二言三言で終わり。

 

僕は去年家を出た。わざわざ実家から職場と同じぐらいの距離の家を借りて、一人暮らしを始めた。家のことは頼り切りで生活力をつけるというのもあるんだけど両親、とりわけ父に会うのすら面倒だったからというのも同じぐらいある。

 

そんな両親と嫌でもやりとりをしなければならないイベントに今直面している。結婚。

 

話は逸れるけど年明けてすぐ、彼女のご両親に挨拶に行った。もう何度も会っているし、彼女は家族仲がとても良く、普段から僕の良いところばかり両親に話してくれていた。彼女のおかげで結婚はすんなり承諾してもらえた(彼女は彼女で家族に悩みがある中、兄弟とも両親とも全く問題なく関係を保っていて本当に尊敬する)。

 

彼女のお父さんはザ・普通のサラリーマンって感じの人で、自分は昔っからこういう父親に憧れていたことを会う度思い出させられる。

 

2月の頭、うちの実家に2人で行った。母が出迎えてくれた。父の出席可否は店次第だとは聞いていたけど、2週間以上前に日時は決めていたのでさすがに…ぐらいには思ってた。

 

いなくてほっとしてる自分もちょっと感じつつ、そのまま残ってる自分の部屋に荷物を置きにいってみたら父が寝ていた。は?と思いつつそっとドアを閉めてリビングに戻った。夜勤がいないから、この後店に行くために寝てると母が言っていた。母から結婚の了承を得て、その場はつつがなくおひらき。

 

それから4日後(これ書いてる昨日)、朝仕事に行く前に携帯を見ると父から「話したいことがあるんで泊まりにきませんか」というLINEが入っていた。理由つけて断ろうと思えば秒で断れるし、そうしようと思った。けど、結婚に差し支えが出る可能性と天秤にかけて、残業まみれで疲れた身体で実家に向かった。道中で父から「氷買ってきて」というLINEが入ってきて舌打ちした。氷は買っていってあげた。

 

帰ったら両親と実家猫が2匹いた。いつも通り無言で飯食う自分。最初はテレビに目をやっていた父が、彼女について質問のジャブを打ってくる。兄弟とか両親のこと。いつも通り二言三言返すことしかできない俺。

 

一通り食べ終えた。既に風呂に入っていたので今までなら速攻で部屋に入るところだけど、肝心の要件が聞けていない。これじゃ家帰ってフリースタイルダンジョン観ながら酒飲みたい欲抑えて実家に来た意味がない。母は皿洗ったり、僕のベッドメイクしてくれたりせかせかしている。

 

父が口を開いた。1時間ぐらい同席していたと思うけど、一言でまとめると「お金は貯められるうちに貯めた方がいいから、2人でこの家に住むことを検討してほしい」というもの。秒でNO。断固拒否。そもそもそれができるなら俺はまだ実家にいるわ。なんで実家から1時間のとこに月10万も使ってわざわざ1人で生きてると思ってる。

 

と、そんなことも言えずただただ薄い相槌を打ちながら聞いていた。少なくとも持ち帰って彼女と話し合うというポーズだけでもとってやろうと思ったから。気味悪いので彼女に話したくもないと思ったけど、話すかどうかこの時点では決めかねていた。

 

一夜明けて今日。父にさらっと別れを告げて、映画(『ナイブズ・アウト』)を観た。劇場を出るとLINE。「昨日はありがとう。彼女とまともに話せてないので今度外で食事しませんか」という内容。そんなこと今更言うなら寝る時間30分削ってリビングに降りてくる事はできなかったのか?読んで3秒で頭が沸騰しそうになった。その勢いで返せたそのLINEはまだ返してない。そんなこともできずこんなとこに愚痴吐いてる。

 

何も切り替えられないまま次の映画館に向かう。観るのは『家族を想うとき』。映画友達に勧められていて、たまたま予定が合うので予約していた。内容はほぼ知らなかった。以下あらすじ。

 

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イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。

 

いや、このタイミングでなんちゅー映画やんねん。どんだけ俺にクリティカル?映画友達に勧めてもらったのも、今この瞬間に観れたことも、父親と未だにこんな感じなのも全てが運命なのか?って思いで今映画館のロビーでこんな文章書いてるぐらいにはぶっ刺さったということ。

 

この息子は半グレでグラフィティ描いたり万引きしたりするような奴なんだけど、根っこでは父親や家族に優しい。一方で自分は父親に優しくしたことなど一回もないゴミ野郎で。そんな自分も長年嫌だったし。もうそんなことばっかり考えて映画というかずーっと自分と父を観せられてる気分だった。ついでに涙でスクリーンすら見えないし。映画館にいるのに何やってるんだろうと思う。ちなみにラストカットの直後におばちゃんが「嘘でしょ…」って言ってた。

 

全然頭は整理できていない。けどこの映画を観て父親に優しくしたいと思ってる自分がいる。どうしよう。まだ3人で飲みに行くかどうかは悩んでる。まずは彼女に話そうかな。この文読んでもらうか。どうしよう。