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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー009: 『ヤクザと憲法』

『ヤクザと憲法

監督:ひじ方宏史
(ひじは土の左下に点みたいな字)
プロデューサー:阿武野勝彦
 
 
総武線住人にも関わらず罰当たりなことに今まで行ったことのなかったポレポレ東中野へ。地下へ続く狭い階段の入口に立った瞬間漂ってくるタバコの臭い、脇に雑然と置かれたフライヤーの山、ハンコで数字だけが刻印された半券、声の小さい私服のスタッフ…ああ、ミニシアターに来たんだなって実感しかなかったです笑
 
整理番号に従ってシアターに入ると、最終的に公開から一ヶ月半経ってるにも関わらず平日夜の回で半分弱席が埋まってて驚きました。クチコミが人を呼び続けているようですね。僕もそうして訪れた内の一人です。にしても今年の新作邦画初めがこれか。ヘビーだ。
 
まず企画・製作・配給を務めた東海テレビの着眼と勇気は賞賛されて然るべきでしょう。誰もやりたがらないし、やったからと言って得するわけでもない作品を観られる機会を設けてくれたことに感謝します。この作品が突っこみづらいところに突っ込んでるから目立ってるだけで、これってまああらゆる映画に言えることで、この感謝は大なり小なり持ってなきゃいけないなあと思います。そういう創作に対する敬意を思い出させてくれただけで観た価値はあったかもしれません。上映してくれる映画館に対しても同様です。
 
内容の話。僕は暇に任せて北野武の映画を一通りマラソンしたことがあるんですが、武がヤクザ嫌いらしく、氏の映画のヤクザは本当にデフォルメされてるんだなとこの作品を観て思いました。そのイメージがずっとあるから、もうこっちはファーストカットから超緊張してるわけです。どんなヤバいことになるんだろうと。ちょっとフィクションでは出せない類のいやーな緊張感が。
 
そしたら思い描いているようなヤクザインシデントは一切起こらない。そりゃカメラが回ってるわけだし、組の側はボロを出さないようにし、東海テレビ側は自主規制してるかもしれませんけど、それっぽい匂いがしてこないことに素直に驚きました。映画の観過ぎですね。(それだけにマシンガンのくだりはめちゃくちゃ笑いました)
 
一番印象的だったのは定食屋のおばちゃんがマジになんのてらいもなく「警察が何守ってくれんの」って言ってたシーン。僕は幸いヤクザにも警察にもお世話になったことがないのでわからないのですが、警察ってそんな腐敗か堕落してるんすか?って思っちゃうレベルの迫真ぶりにビビった。あそこはもうちょっと掘り下げても良かったかも。
 
そもそもこの作品の場合「ヤクザと憲法」なんてテーマの説明的なタイトルをつけずに、もっとヤクザの実情やそれに関わる一般人の観察に徹した方が見方も開かれて良かったんじゃないかなあと思う。それだけ撮れ高で言ったらとんでもないことになってるんだし。や、勿論この問題提起はとても憲法改正が取りざたされてる時勢なだけにタイミング的にも価値があるとも思うんですけどもね。それに、消えゆく文化(?)のたそがれを映像化したという意味でも価値あるんじゃないですかね。
 
あと、ツイッターで知ったんですけど、21才の彼は組抜けて強盗未遂で捕まったようですね。うーん、なんだかやるせない。
 
ドキュメンタリーは一層難しいですね。想田和弘監督の牡蠣工場は観たいと思ってます。