静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー022: 『ちはやふる 上の句』

ちはやふる 上の句』
脚本・監督:小泉徳宏
出演:森永悠希野村周平広瀬すず、真剣佑、上白石萌音、清水尋也、矢本悠馬、坂口涼太郎加部亜門松田美由紀國村隼


メインビジュアルの広瀬すずがいまいち可愛くないし、ぶっちゃけ未だに「はいはい東宝の原作モノね」みたいなナメ目線があったので全く観る気はなかったです。原作も読んでないし、広瀬すずが無双するんでしょぐらいにしか思ってなかったです。

でも皆があんまり褒めるから期待値を90%ぐらいに上げて観て嫌味でも言ってやるかと思って行ったらうん、(クリードを去年枠としたら)今年今のとこベスト!!

満足度をキャラクターがそれぞれが占める割合は
机くん:太一:千早:その他=4:3:2:1
ぐらいのもんでしょうか。

私と仲良くしてくれてたり、こんなブログを読んでるくれてる中には机くんに感情移入しまくりな方が多いのではなかろうかと勝手に思ってます。勿論私もそう。久しぶりに涙でスクリーンが見えなくなったよ。「いやほんと良かったなお前…」って思ったのはやっぱりクリード以来ですよ。割とあるじゃんと自分でも思ったが気にしない。

実は僕自身、所属してる集団が良い結果出してる中で自分は…みたいな思いをし続けた結果、そういう団体戦の世界から逃げたことがあるわけです。彼を見て「ああ、あの時逃げた自分が今目の前で頑張ってる……」と胸が熱くなりました。

そんな彼が再び熱を取り戻す瞬間のあの演出が白眉でした。「あ、そこ見せないんだ」と誰しも思うあのカットをそこに持ってくる編集にはまあやられたよ。やられた。

僕の中で『日々ロック』での怪演の印象しかない野村周平くん演じる、実質主役の太一の葛藤の人間臭さも、例のマンションのアドリブの実在感なども相まって非常に共感できた。カルタと人生が重なるクライマックスのケリのつけ方が激アツだった。彼の成長という幹がきっちり描けてるから枝葉の部分も映えて観えるんじゃないかなあ。

その木の芽を出させるのが広瀬すず演じるまさしく太陽のような存在の千早なわけで、これはもう広瀬すずだからいいんだよという暴論でも受け止められてしまうような、今しか出せない存在感がバシバシ出てた。でもそんな彼女の単なる無双映画にはなってなくて、彼女の出番は序盤に抑えて、その後は彼女にアテられた奴らの話になってるのがうまいなあと。多分あいつがあのテンションで出ずっぱりだったら途中でバテてたと思う。とは言え彼女のバトルが中心になるであろう『下の句』もとても楽しみですが。

存在感という意味では『リップヴァンウィンクルの花嫁』の3時間の尺で体感9割以上のカット写っていたけど飽きの来ない黒木華とは真逆のそれと言えるかも。どっちも素晴らしいよ。藤岡弘、とタメ張れるレベルだよ。

他の2人はにぎやかしといろいろ便利な立ち回りに徹していてて、そこの都合の良さはちょっと感じてしまったかも。

とは言え5人ともキャラは立ってて、その点だけ手間個人的にキム・ジウン監督のシュワちゃん主演の『ラストスタンド』をとても思い出しました。瑞沢高校かるた部の戦隊感が気に入った人は是非観てくれよな。

個人的に今年はこれまで邦画が不作というかそもそも観たいのが全然なかったので、そんな中一発かましてくれたのも痛快でした。これから期待作もかなり控えてるので楽しみ。