静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画063: 『マグニフィセント・セブン』

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監督:アントワーン・フークア

出演:デンゼル・ワシントンクリス・プラットイーサン・ホークイ・ビョンホン、ビンセント・ドノフリオ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアー、ピーター・サースガード、ヘイリー・ベネット 他

 

 

※内容に触れてるのでこれから観ようという人はあれしてください

 

滑り込みでやっと観られた。それだけにレコメンが遅くなってしまったのが悔やまれる良作でした。正直『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』とかあんまりピンとこなかったけど『グッドバッドウィアード』は好きぐらいの西部劇弱者ですがこの作品は十分楽しめました。リテラシーとか関係なく面白いよ。

 

評判の高さと尺の長さから割と身構えていたのだけど、期待以上に満足。『七人の侍』フォーマットの中でコンパクトにまとめられていて、過不足なくちょうど良い感じを受けた。個人的に黒澤明御大の原典はさすがに尺が長すぎると思ってるので、多少リクルートシーンがあっさり目でもこっちの方が好みではある。

 

やっぱり掴みというのは大事で、アバンタイトルでノせられると「いいねいいね〜」と口の端が釣りあがってしまう。本作においては金採掘の権利を有するボーグ氏一味が平和だったであろう街のメインストリートの突き当たりに位置する教会で悪虐非道の限りを尽くすシーン。

 

特にボーグ氏の初登場のタイミングが絶妙。街に住む若者がボーグ氏と戦おうと勇ましい声を上げると、それに賛同する人が現れ…ようとするところにバーンと大見得を切って登場。一目で悪党とわかる上に、手に持った謎の小瓶が一層不穏感を煽る。子どもにそれを触らせるところでそれがピークに達すると一転、ただの塵であることがわかる。「なんだ」と思っているとそこからボーグ氏が自らの目的を高らかに宣言、住民たちは十分な金も与えられず街を追われ、さもなければ命を取られることがわかる。こいつ、腐ってやがるッ…と憤る間も無く神父を始めとした村人は教会を追われ、教会は炎に包まれ、声を挙げた若者をはじめ無辜の住人たちは殺害され…。

 

あまりの仕打ちにこっちまで悲しくなってきたところにタイトル。この無念を晴らしてくれと祈らずにいられない瞬間。アバンタイトルでお膳立ては完璧。多少ガンマンたちの動機が弱くてカタルシスが薄くても、それを補う悪役演出、お見事です。

 

続くデンゼル・ワシントン演ずるサム・チザムが荒くれ者たちのたむろする酒場に現れるシーン、こちらまで固唾を飲んで見守ってしまう。騒いでいたガンマンたちが静まり返り、思わず懐の銃に手をかける数カットがたまらない。電車に乗ってる時にヤバそうな奴が乗車してきた時の空気感に似ていた。

 

サム・チザム(声に出して読みたい英語)に関してはこの導入から最後まで描き方がいちいち完璧にキマっていた。早撃ちがマジでこっちにまで見えなくて笑ってしまった。あの乗馬しながら真後ろの敵を撃つ動作も真似したくなる(できない)。この人のネタバラシに関してはまああってもなくてもいいと思う。僕はベタながらこの人推しですね。あとインディアンも好き。

 

ヘイリー・ベネットのヒロインもこちら側に表情の変化で訴えてくる演技が見事でした。ボーグ氏の演説を聞いている時や彼氏が声を上げた時に見せる不安げな顔とガンマンたちの前で見せる男勝りな顔のギャップ。でもやっぱりお墓の前で泣いちゃう感じ、守りたい。ちょっとソバカスとかあって幼顔なのもグッとくる。素晴らしい。

 

セットや衣装、ロケーションがリッチで眺めているだけで満足感があり、銘々キャラも最高。総じて申し分ない、過不足ない、滅多にない、ないない尽くしの秀作だと思います。オススメ。