静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画71.5: 『T2 トレインスポッティング』2回目

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監督:ダニー・ボイル

出演:ユアン・マクレガーユエン・ブレムナージョニー・リー・ミラーロバート・カーライルケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤルコーバ 他

 

 

内容触れるのでご注意ね。

 

2回目でやっと気付いたこと。

「ジムのルームランナーで走る現在のレントンがそこから滑り落ちる」というシーンから始まることがこの映画のスタンスというか、前作からの違いを明確に示しているということ。20年前は壁にぶつかると曲がる車のおもちゃみたいに無軌道で、スピードの配分も考えないようなやつだったのが、今では一定のペースで走っても走っても前に進むことができないということ。同じ部屋の他人は皆一様に同じ方向を見て走り、目線が交わることもない。挙句に走ることすらできなくなって、無様に地面に倒れこむ。

 

そして(恐らく)母の死の報せを聞き地元に帰り、金を残して行ったから少なくとも恨まれてはいないと思しきスパッドに顔を出せば「ヤク漬けになった上死まで奪う」とゲロまみれでキレられ、スパッドの勧めで会ったサイモン(元シックボーイ)にはボコられ、サイモンがチクった結果ベグビーには命を狙われ。母の死以外は自業自得とは言え散々な目にあうレントンおじさん。

 

見返して思ったけど、冒頭からサイモン(元シックボーイ)とATMから金を下ろしまくるとこまでは割と好き。いいおっさんが何してんのよとも思うけど、やっぱり「あの頃のあの感じ」が親友だった二人の間に一瞬戻ってきたのは素直に嬉しかった。単純にプロテスタントの集会で歌うところは普通に笑ったし、そのままの勢いでLust for life(しかも私の敬愛するプロディジーリミックス!!)が二人が走り出した瞬間流れてきたらそら上がるよ。あのテンポがね。いいよね。

 

というかダニー・ボイルはやっぱ音流して走らせとけば間違いないんだと改めて思っちゃった。『127時間』も岩に挟まるまでチャリで走ってるとこの方が好きだし、『スラムドッグ$ミリオネア』も少年時代のスラム走ってるとこが良いもん。

 

今回は明らかに意図的にそのシーンにしか前作のノリを持ち出してないから僕が微妙にハマんないのは必然だったと言える。『スティーブ・ジョブズ』も僕はあれだったし『トランス』とか曲流しながら強盗するシーンとヒロインが脱ぐシーン以外最悪だったしな!

(脱ぐシーンで思い出したけど今回のヒロインもめちゃ可愛い。脱ぎっぷりもよし。ダイアンもそのまま綺麗になってて、出番と扱いはアレだったけど出てくれて感動。)

 

でもトレインスポッティングの続編を20年後の設定でやるって言うんならこの形がベストだったんじゃないかとも思う訳ですよ。がむしゃらに走ってたあの頃に後ろ髪引かれたおっさんたちが、若い女ちょっと取り合ったり影響されたりしながら内輪でドスドスなんかやってんの。

 

特に別の人たちがやっちゃったなら「これをトレインスポッティングの続編とは認めない」的な物言いもできなくはないけど、当時のメインキャストと監督が考え抜いて話し合って納得して撮影して公開まで漕ぎ着けた結果ならもう納得するしかない。だから個人的には結局のところ続編はそもそもやらんで欲しかったという1回目の感想に戻る。これが結論になる。

 

 でも4人の中で唯一未来を見据えて動き出しているのがまさかのスパッドで、新しい才能を発見して周囲に少し認められているのは何とも嬉しかった。

(このスパッドに関してはけんす。さんの放談主義。が熱いのでそちらも。http://roomamole.blog107.fc2.com/blog-entry-843.html?sp )

 

ほんで他の3人はと言うとやっぱり過去にがんじがらめにされてる。メンタリティが変わってないどころか20年前の出来事を経て捻くれてしまったベグビーと元シックボーイに巻き込まれる自業自得なレントンという形になるけど、二人は「コイツに痛い目見せないと俺たちは未来に進めない」とでも言うようにレントンを狙う。はっきり言って鈍重で醜悪な争いだけど、これをスパッドの一発で締めるというのも象徴的かもしれない。多分今まで通りなら縄から降ろすのがスパッドで、ベグビーを殴るのがシックボーイの役割というのが自然なはずなので。

 

うーん、ここまで書いて思ったけど、トレインスポッティングの続編とかそういう話の以前に、僕はベグビーと元シックボーイにノレてないんじゃないかと思う。

 

「20年前の裏切りなんてもう大人どころかおっさんなんだし水に流せよ」とは言わないけど、「せめてもう少し前を見る努力はしなよ」と言いたくなった。元々しょうもない奴らだったけど、もうちょっとなんか成長というか大人びたところはあって欲しかった。単純に残念な感じがした。だって20年ぶりに会ったしょーもないやつらが20年経って未だにしょーもなかったら何だかなあってなるでしょ。  

 

その片方に当てられてクスリにまでカムバックしちゃうレントンのシーンは、部屋の隅でそれを見つめるスパッドの姿もあって無茶苦茶悲しかった。だってせっかくそういう沼から抜け出して順調に暮らしてたのに母親が死んで、離婚して、病気して、地元戻って、またしょーもないやつらとツルんで(しかも利用されてる)、人の金あさって、ジャンキーやるなんて悲しすぎるわ。

 

まあその最初の沼の抜け出し方がまずかったんだね。友達と違法に金稼いでしかも持ち逃げするなんていうやり方が。そんな1のラストに死ぬ程シビれた身としてはやっぱ複雑なんだよこの2って。「陰惨で陽気」だったのがただただ陰惨なとこしか見えなくなっちゃった。