静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画075: 『スプリット』

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監督:M・ナイト・シャマラン

出演:ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリージェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソン 他

 

 ※内容触れてます※

 

邦画良作ラッシュだった去年の揺り戻しかのように洋画ばっかり。邦画が特撮しか観られてない。というかそもそも映画館に行けてない。いかん。

 

 

かの有名なシャマラン監督の前作『ヴィジット』がすんげー面白かったので、多少ホラー色強めの印象を受けても観に行くことに迷いがなかった本作。

 

事前情報からは「多重人格のサイコパスが色んな人格を切り替えながらキャイキャイ騒ぐ3人の女子高生を追い詰めるパニックホラー」みたいな感じをイメージしていた。実際観てみると割と趣が違った。それ自体はいい。

 

問題は、うん、肩透かし気味だった感じが否めなかったこと。間に逐一カウンセラー婆ちゃんとマカヴォイの会話が入ってくるので正直中盤まで眠くて死にそうだった。もっと言っちゃうと『ドント・ブリーズ』の感じを勝手に期待してしまっていた。限定された空間を舞台に無力なJKがなんやかんやで多重人格者の魔の手から逃れる(或いは撃退する)感じを。

 

冒頭、女の子3人の人物描写がほぼないまま誘拐された時点で若干嫌な予感がしていたんだけど、2人がほぼ何もしないまま殺されてずっこけそうになった。しかも設定的に割と終盤まで引っ張るもんだから「結局何もせず死ぬのかよ…あのハンガーのカチャカチャやるくだりなんだったんだよ…」とか思ってしまった。マカヴォイも8人格ぐらいしかいないし「3人vs23人」ってキャッチは看板に偽りありでは…。

(ちなみに24人格というのには元ネタがあるらしいっす。)

 

対して主人公の子は間間に回想を挟む形で人物を掘り下げてたけど、あれも集中を削ぐだけであんまり効果的とも思えなかった。ビーストが主人公と同じような境遇から生まれた存在ってのが最後にわかるんだから見え方も変わんないし、もう少し何とかならなかったのか。

 

そのビーストが実在するのかどうか、いつ覚醒するのか、覚醒するとどうなるのか、なぜ3人は誘拐されたのか、などミステリー的な引きがあるから観てたけど、結構あっさり台詞でバラしたりするので、うん、逐一噛み合わなかった。

 

虐げられていた者が自分を守るために生み出した人格の最終形態(っていうのは考察サイト読んで納得した情報なんだけど)が世間に対して攻勢に転じるという設定自体はとても好きなんだけど、なんかそこはそんなに重要じゃないのか?とか思っちゃった。

 

あとあの最後のネタだけど、あれは単体の『スプリット』という作品自体とは関係ないから何とも言えない。『アンブレイカブル』を観た人はあの電車のホームに花を手向け、車輌で覚醒するシーンでビビッとくるのかもしれないけど。僕もあのハゲが出てきたときはびっくりしたけど、その反面何の作品のハゲかわからなくて微妙だった感は否めない。

 

だったら先に「シャマランユニバース第一弾」とか言っといてくれた方がよかった。シャマランも恐らくわかっててファンに向けて「ナイショだよ」とか言ってあのネタブチ込んだんだろうけど、ファンでもない僕は置いてかれた感じがすごかった。今流行りの作品を超えた繋がりがあるということを明かすこと、それ自体をどんでん返しの部分に持ってきたこと自体は面白いとは思うけども。

 

アニヤ・テイラー=ジョイはすっごく良かった!!ごちそうさまです!!

 

新作映画074: 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』

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監督:ジェームズ・ガン

出演:クリス・プラットゾーイ・サルダナ、デビット・バウティスタ、ビン・ディーゼル(声)、ブラッドリー・クーパー(声)、マイケル・ルーカー、カレン・ギラン、ポム・クレメンティエフ、シルベスター・スタローンカート・ラッセル

 

※アイムグルート(若干内容に触れております)※

 

 

バトルロイヤルよりリミックスの方が意味わからんくないですか?いや、わかるけどリミックスだと総集編みたいじゃん?

 

ただ『シビルウォー』で一見さんお断り感がマックスに達したMCU作品において、続編ということを意識させないタイトルにするという発想自体は良いと思う。実際これからインフィニティウォーに向けて盛り上げようってタイミングで単体でこれだけ面白い作品を提示できているわけですし。

 

 

正直前作を観に行ったとき「皆さん何をそんなに盛り上がってらっしゃるの」などと冷めていたのがウソのように面白がっていた。

 

いや、というよりは「前作で皆が言っていたガーディアンズの良さをシリーズ2回目の鑑賞にしてやっと実感できた」と言った方がいい。

 

なのでガーディアンズ好きの方が読んだらあたりめえじゃん帰れアホと思われるのを承知で書くなら、それは「作中に溢れるアイデアとエンターテイメント精神」。これに尽きます。

 

そのことをはっきり感じたのは、宇宙船を修理するため残ったロケットが単身ヨンドゥ率いるラヴェジャーズの荒くれ者たちを翻弄するシーン。です。ここでロケットが使った地雷にビビビッときたわけです。

 

なんでかって言うと、普通なら地雷は爆発して終わりだからです。それが爆発すること自体は面白くもなんともない。大体砂や砂煙とともに人の姿が見えなくなって、晴れると踏んだ者がいなくなっている。

 

ただジェームズ・ガンと愉快な仲間たちは「そんなの面白くないじゃん」と言わんばかりに、地雷を踏んだ屈強な男たちを目測20mほどの空中に舞い上げたわけです。するとカットが夜空に輝く大きな月(的な衛生?)をバックに男たちが空中でジタバタする引きの画に変わります。

 

この時僕は「あー普通なら爆発するだけの地雷を空中に浮かせる兵器にするというアイデアを盛り込むことで、こんな面白いカットが実現するんだな。皆が言ってたアイデアとかエンターテイメント精神ってこういうことだったんだ。」と一人でニタニタしながら納得していたわけです。

 

前回はまあ初対面だったんでね、馴染めないうちにダンスとか始めるもんだから「なんだコイツら」感が拭えなかったっていうことなんでしょうかね。そのことが画面に溢れる楽しさに対する目を曇らせていたってことにしといてください。まあ「なんだコイツら」感が完全に払拭されたわけではないので、そこは次に期待ですね!

 

あとまあ何よりヨンドゥがあんなアレっていうのはずるいよ。走馬灯みたいのはずるい。よかった。

 

新作映画073: 『ワイルド・スピード ICE BREAK』

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監督:F・ゲイリー・グレイ

出演:ヴィン・ディーゼルドウェイン・ジョンソンミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・"リュダクリス"・ブリッジス、ナタリー・エマニュエル、エルザ・パタキー、ジェイソン・ステイサムスコット・イーストウッドシャーリーズ・セロンヘレン・ミレンカート・ラッセル

 

 

シリーズは前作『〜SKY MISSION』を観たっきりですが、今回はそれでも割と最高でした。とにかく面白くてよかったです。ファミリーになりたい。

 

で終わりにしたいぐらいだけど一応そうもいかないので何か書くよ。

 

割と物議を醸し気味なステイサム演じるデッカードさんファミリー入りに関しては、過去作を観ておらずハンさんの人となりを知らないのが逆によかったのか、そこまで気にならなかった。まあこの人は前作のオープニングの時点で「最高のハゲのうちの1人だ」って盲信してたので。勝手なことを付け加えるなら、仲間の仇を家族として受け入れるということはドム兄貴の器のデカさとして捉えることもできると思う。

(ちなみにシリーズをあんまり観てない僕は人質の女性のことも誰だかわかってなくて終始混乱していた。)

 

そんな無理矢理な擁護をしたくなるほどステイサムが映ってるシーンはとにかく楽しんだ。刑務所大乱闘から子連れ狼まで、もう終盤ただのいい人になってたけど個人的にはオールオッケー。「頭に血が行ってないのか?もっとサイズの大きいシャツを着ろ」という煽りがかなりツボだった。

ただアクションで一番印象に残ってるのは、刑務所で画面左から機動隊が3人ギャグみたいに同時に吹っ飛ばされてきて後からホブスが歩いてくるカット。笑った。

 

敢えて言うなら、せっかくシャーリーズ・セロンをキャスティングしたのだからパソコンの前にいるだけじゃなくてもうちょっとなんか欲しかった。次にとってあるにしてもね。

 

こういう、シリーズに疎い上に「楽しかった」以外の感想があまりない映画の感想が一番難しい。短めで失礼します。

新作映画072: 『ハードコア』

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監督:イリヤ・ナイシュラー

出演:シャルト・コプリー、ヘイリー・ベネット、ダニーラ・コズロフスキー

 

 

瀕死になったヘンリーくんは恋人の手によってサイボーグとして生まれ変わり覚醒するも、声帯手術(僕だったら小杉十郎太の声にしてもらいます)の直前に現れた悪い奴らによって空中研究施設(?)からの脱出を余儀なくされ、喋ることのできないまま決死の逃避行、そして奪われた恋人の奪還を開始するのであった。

 

トーリーはこんなもんで、これ以上の展開があったり、物語が何らかツイストしたりすることもない。トニー・ジャーの『マッハ!』並に「奪われたものを取り戻す」のみのお話。

 

僕は映画(に限らずフィクション全般?)は「何を描くか」ではなく「どう描くか」が大事だと思っている(僕モテメルマガの大川編集長の『天空の蜂』の回に詳しい)。それを再確認できたという意味では割と満足した。

 

平たーーーく言えば全編一人称でアクション映画をやり切るというだけでもう面白いということになる。橋のアーチの上登ったりパルクールやったり、マリオジャンプしたりハイウェイから落ちたり。しかもゲームじゃなく実写で、映画館のデカいスクリーンなんだからそりゃエキサイティング。飽きずに楽しんだ。まあ敢えて言うなら今どのぐらいダメージを受けてるのかがわかりづらいかなあというぐらい。最早画面の周り充血させても許された感。

 

ただねえ、完全に好みの話で恐縮なんですけど、自分が映画に求めているのは他者の観察なんじゃないかとも思いました。自分がなりきるんじゃなくて、あくまで一定の距離から見つめていたいというか。

 

ついでに言えば、その他者が映画を観る前や冒頭に「今の自分ではわかり得ない立場や思想の人だ」と感じるほど、その距離が勝手に縮まったと思う時の感動が増します。

 

もう本当に正直に言うなら、なりきりなら自分で操作までできるゲームでやればいいんじゃねっていうのが思うところです。クソみたいに身もふたもないこと言ってるのはわかってるんですけど。そもそもそれを映画でやったろっていう企画でしょうから、別に監督の志や努力とか創意工夫を否定したいわけではありません。「実写の一人称」でアクション映画をやり切ることにゲームと異なる意義があるのは間違いないし、高評価なのもまったく頷けます。

 

ただ今この映画の数多くの元ネタFPSゲームの内に入ってるであろうファークライ4というゲームをやってて、余計にそう思ってる自分がいてなんだかなー!要するに面白かったけど全然残ってないんですよ!さーせん!!

 

イタリアに行ってきた。 ④ローマ〜日本編

良きも悪しきも思い出色々なフィレンツェの駅を離れる感慨を感じる間も無くトラブる。電車が遅れに遅れているからだった。イタリアの列車は日本みたいに路線ごとにホームが決まってないので掲示板を注視していないといけないのは前書いた通りだけど、いつまで経っても到着ホームが表示されない。30分遅れの表示だけ出てる状態。不安。そわそわする。

 

掲示板は下から新しいのが現れて段々上に繰り上がっていくんだけど、真ん中上あたり(元々の出発予定の20分後ぐらい)になっても出てこない。焦る。またフィレンツェの駅でこんな思いしなきゃいかんのかいと思ったらやっとホームが発表。一息つく。

 

車中で前の席の日本人の女の子がバカでかい声で日本のお姉ちゃんか何かと電話しているのをBGMにボケーっと外を眺めていると電車が止まった。そのまま30分ぐらい止まってた。まあいいやと思って英語のアナウンスには耳を傾けずにぼーっと「やっぱイタリア人ってあの掃除のおっさんみたいのばっかりなのかもな」とか思ってた。

 

1時間遅れで駅に着く。そこから地下鉄に乗り換えて目的の駅に向かう。ローマの主要な地下鉄はA線とB線の二本で、これがテルミニという駅で交わっている。運賃は時間制の定額で確か€1.5(約200円)ぐらい。安くて助かる。

 

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(ホーム。暗くて割と汚い。駅構内でポップミュージックみたいのが流れてて驚いた。)

  

それは良いんだけどこの地下鉄というのが中々物騒らしく、油断してると集団に囲まれてスラれたりするらしい。事前に一番不安だったのがこのスーツケースを持っての地下鉄移動だった。まあドア側に立たない、カバンは前掛けなど調べた対策をがっちりして常に気を張っていたら何事もなかったんだけど。

 

最寄駅から10分程歩いてホテルに到着。休んでコロッセオに向かう。ところが地下鉄を乗り過ごしてしまった。気付いた駅で降りて反対側のホームに行こうとするも、改札内からでは行けないらしい。なんという不親切仕様…。ローマの地下鉄にはこういう駅があるのだなあと勉強になった(投げやり)。

 

コロッセオ駅を降りると早速左手に石の壁が見える。

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荷物検査を受け中に入る。デカくて風が気持ち良い。結構高いところまで席があった。

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次はコロッセオの向かいにある遺跡群(フォロ・ロマーノ)に歩く。広い場所に石の建物の跡が点在している。

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なんか目つきの悪い鳥に食べ物をたかられた。

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僕はカルボナーラが好きなので、その発祥のお店と言われてる(らしい)「ラ・カルボナーラ」に向かった。ウロウロ迷って辿り着くと昼休憩の時間だった。一応写真だけ撮った。

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同伴者と気まずい空気の中彷徨っていると良い感じの入りやすそうなお店があって、アジア系の爽やかなウェイター兄ちゃんが声をかけてくる。カルボナーラもあるしそんな高くないしここでいいやと半ば投げやりで入店。席についてお店をググると、我々と全く同じ境遇でたどり着いた人が絶賛してて安心する。

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カルボナーラ、めちゃめちゃ美味しかった。日本(及びアメリカ)のと違ってイタリアのは牛乳を使ってないので日本のより卵味が強く塩気が強い。飲まなかったけどワインにすごく合いそうな感じ。ボーノ。

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食後にティラミス。ウェイターの兄ちゃん、気さくで良い感じだった。

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もうなんか疲れたし金欠だしということでスーパーでお買い物してホテルで夕食にすることに。レジが3つ並んでんだけどレジ打ちながら3つのレジ越えて3人で笑いながら喋りまくってるし商品は放るし日本だったら殴ってたと思うけど「まあこいつらイタリア人だしな」と思えるレベルには順応していた。多分。カップ麺が期待してなかったけど美味かった。

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ローマ2日目は勿論バチカン美術館へ。最寄駅で降りるとさもバチカン美術館のスタッフのものと思しきカードを首から下げた中東系のスーツ男に声をかけられる。立ち止って話を聞くと道案内してくれた。その道通りに行くとバチカン美術館が見えてくる。

 

するとまたさっきの男と同じ風貌の人に声をかけられる。何やら「君の持っているチケットではバチカン美術館しか見られなくて、我々が教会と大聖堂のセットのファストパスを売ってやる」的なことを言っている。「あ、やべえこれ偽物の人だ」と焦って振り切る。のちにググったらそういう詐欺だそうでした。危ねえ。

 

予約してない側の長蛇の列(なんで予約しないんだ?)を横目には入場。ロビーも人がごった返し。

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 中。システィーナ礼拝堂以外は基本撮影オーケーの太っ腹ぶり。ダリとかもあった。

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サン・ピエトロ大聖堂は無料な代わりに予約とかはなくて列が無限に伸びていたのでスルー。広場だけ行った。ここには何カ国の人々が集まっているのだろう。

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そこからスペイン坂とトレビの泉に行くことにした。道中、やかましいおっちゃんに捕まって言われるがまま入ったトラットリアでピザ食べた。いくらか忘れたけど値段の割にいまいちだった。フードコートのやつのが美味かった。事前に聞いてたけどローマは特に物価が高かった気がする。観光地価格ってやつかな。

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店を出てタバッキを見つけたので、お土産で頼まれていたタバコを買う。ググって、イタリアで一番ポピュラーな国産のMSという銘柄にした。カフェとタバッキが併設くっついてるような店で、店先にいたウェイターに画像を見せると「あるよ」と店に入れてくれる。一つ€5(約630円)。箱とその上についてる注意書き?がこちら。

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もうネガキャンとかそういうレベルじゃない。ガチで潰しにきてる。なんかボロボロになった肺バージョンとかもあってバリエーション豊かに喫煙意欲を削ぎにきてて笑った。帰国して渡した人に微妙な顔をされたのは言うまでもない。

 

気温は25度ぐらいで、暑い。汗かきながらダラダラ20分ぐらい歩いて到着。スペイン坂周辺にはアパレル関連のお店が立ち並んでいて、観光地に比べて若者がとても多い印象。

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(スペイン広場。ここまで書いてスペイン坂は渋谷にある坂のことだったと気付く。)

 

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トレビの泉はすぐ近くだった。

 

コインを投げたかったが、人が多すぎて遠投みたいになるレベルだったのでやめた。いや、そんな迷信より俺は自分の身体の喜びを取ることにした。

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ああ美味しい。ジェラートには生クリームがとても合う。

 

夕食は前日と同じ理由で買ってホテルでとることに。ローマ高いんだよ。スーパーで買い物を済ませて電車に乗る。これでホテルに着けばこの旅行は95%おしまい。あとは朝ホテルに送迎が来てくれて、飛行機に乗って家に帰るだけだ。

 

そんなことを考えていたのが甘かった。なんとまた電車を乗り過ごすという痛恨の凡ミス。野球で言ったらサヨナラボーク(その試合2回目)級の失態を犯してしまった。サイアク。ただ乗り過ごしに気付いて降りた駅が改札内で反対側のホームに行ける駅だったのはラッキーだった。ほっと一息ついてホームで電車を待つ。遠くの暗闇の中に電車の光る目が見えてきた。

 

電車がそのまま僕らがいるホームを通り過ぎた。

 

「え、快速?」などと話してとりあえずもう一本待つ。やはりスルーされる。「人があんまりいないと止まらない仕組みなのか」とか思っていると、駅員(おそろのジャンパー着てるだけ。ゆるい。)が降りて来てイタリア語でなんか言っている。とりあえずエスカレーターを登れっぽいジェスチャーをしているので従う。結局駅から締め出されることになり階段を登っていると、街中にいるライフルを持った兵隊たちとすれ違ってビビる。駅の入り口には人が溜まっていて、次の駅の方向には人の流れができている。理由はわからないけど駅が使えないらしい。

 

「買った切符はそのまま使えるようにしたから」的なことを言われたので、周りに倣って歩いて次の駅に歩いて向かう。僕らと同じに電車にスルーされていた中国人母娘の母の方が次の駅の方向を手で教えてくれて嬉しかった。

 

 結局500m程歩いて次の駅から電車に乗り無事ホテルに着いたとさ。もう疲れすぎて晩飯の写真すらとってない。

 

翌朝朝食をとって「ああもう終わりかあ。疲れた。」などと思いながら荷物をまとめる。迎えに来てくれた兄ちゃんは車中でヘッドセット使ってずーーーーーっと誰かと電話していた。フリーウェイでは無茶苦茶飛ばすし基本運転が荒い。前の日にホテルの近くの十字路を渡ろうとして車が来たので待ってたらウインカー出さずに目の前曲がってったしイタリアは自動車の運転もゆるゆる。

 

路上で信号待ちしてると黒人(移民?)が前の車を洗車しようとしている。これで金をせびるらしいので驚き。あと途中で車止めてコーヒー買いに行ってた。最後までイタリアの仕事人はやっぱりゆるゆるだ。

 

空港でチェックインの列に並んでいると、前の方に日本人のツアーの集団が見える。その中にこの旅行の1ヶ月ほど前に10年ぶりぐらいに会った小学校の同級生に似てる人がいた。同伴者に「どこにでも似てる人いるんだねえ」とか話してチェックインを済ませる。

 

ロシア行きの飛行機は一番後ろの列の廊下側。席の真後ろがトイレなので、右肘の傍の廊下には常に人が溜まっていて落ち着かない。スタンリー・キューブリックの『シャイニング』を観ていると、前述の女性が向こうから歩いてくる。チラッと顔を上げると、やっぱりとても似ている。いやいやでもまさか。うん。こないだ会った時酔っ払ってたし。などと一人で気持ちを落ち着ける。

 

モスクワの空港に到着して、送迎バスに乗り込む。席が一番後ろだったのでバスも最後の乗車になる。ドアの傍に立っていると、またさっきの女性が友達と話しながら目の前に乗って来た。間近で声を聞いて「これはもう間違いないな」と確信したのでもう違ってもいいやと肩を叩いてみた。

 

不思議そうな顔でこちらを振り返ると3秒ほど固まってから「え、なんで?」と半ば引き気味に言われる。友達に「誰?」と聞かれると「え、小学校の友達…」と困惑気味で答えている。当時から変わっていなければ、僕の実家の裏徒歩1分のマンションに住んでいる人が同じ時間にイタリアのローマからロシアのモスクワにいたというとこになる。卒業旅行シーズンとは言えなかなかの(無駄な)強運ぶり。その子と別に仲良くないのがまた。

 

帰りの飛行機はとても長く感じて辛かった。けど行きの時になかった『シン・ゴジラ』(当時ソフト発売前)があったので1.5回ぐらい観る。やっぱり蒲田上陸までは全てが完璧すぎる。もしイタリアで『ゴジラ』が生まれていたら、『シン・ゴジラ』みたいな作品は生まれなかっただろうか。ケツに火がついてもローマに120mのバケモノが来てもまともに働かなさそうだもんな。そんなことを考えていると日本に着く。

 

ポケットWi-Fiを返しに行く時通ったエスカレーターの前で、空港職員の人が「電車のホームはこちらでございます」的なことをにこやかに言っている。仕事なのに。仕事だからか。日本に帰ってきた感じがする。

 

あとやっぱりウォッシュレットつきの綺麗なトイレがどこでも無料で使えるのはありがたいなあとつくづく思う。イタリア(だけじゃないと思うけど)は基本有料だし綺麗じゃないしウォッシュレットとかないし。

 

2時間ぐらいかけて一週間ぶりに家に帰る。何事もなく家に着けてホッとする。イタリアで買ったお土産がこちら。

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ワイン、オリーブオイル、バルサミコ酢、パスタ、プレッツェル、チョコ、タバコ、ウォッカ等(これはロシアの空港)、フォトアルバム、ポストカード、etc。

お気に入りは何と言っても中央のブラーノ島の無愛想なおっさんから買った名物マスク。必要な人貸すので言ってくださいね。

 

最後に。あー久しぶりに和食食べられるなあと着いた家の食卓で出たもの。

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同伴者と冗談めかして言っていたのが現実になりましたとさ。

 

おしまい。

 

 

 

 

新作映画71.5: 『T2 トレインスポッティング』2回目

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監督:ダニー・ボイル

出演:ユアン・マクレガーユエン・ブレムナージョニー・リー・ミラーロバート・カーライルケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤルコーバ 他

 

 

内容触れるのでご注意ね。

 

2回目でやっと気付いたこと。

「ジムのルームランナーで走る現在のレントンがそこから滑り落ちる」というシーンから始まることがこの映画のスタンスというか、前作からの違いを明確に示しているということ。20年前は壁にぶつかると曲がる車のおもちゃみたいに無軌道で、スピードの配分も考えないようなやつだったのが、今では一定のペースで走っても走っても前に進むことができないということ。同じ部屋の他人は皆一様に同じ方向を見て走り、目線が交わることもない。挙句に走ることすらできなくなって、無様に地面に倒れこむ。

 

そして(恐らく)母の死の報せを聞き地元に帰り、金を残して行ったから少なくとも恨まれてはいないと思しきスパッドに顔を出せば「ヤク漬けになった上死まで奪う」とゲロまみれでキレられ、スパッドの勧めで会ったサイモン(元シックボーイ)にはボコられ、サイモンがチクった結果ベグビーには命を狙われ。母の死以外は自業自得とは言え散々な目にあうレントンおじさん。

 

見返して思ったけど、冒頭からサイモン(元シックボーイ)とATMから金を下ろしまくるとこまでは割と好き。いいおっさんが何してんのよとも思うけど、やっぱり「あの頃のあの感じ」が親友だった二人の間に一瞬戻ってきたのは素直に嬉しかった。単純にプロテスタントの集会で歌うところは普通に笑ったし、そのままの勢いでLust for life(しかも私の敬愛するプロディジーリミックス!!)が二人が走り出した瞬間流れてきたらそら上がるよ。あのテンポがね。いいよね。

 

というかダニー・ボイルはやっぱ音流して走らせとけば間違いないんだと改めて思っちゃった。『127時間』も岩に挟まるまでチャリで走ってるとこの方が好きだし、『スラムドッグ$ミリオネア』も少年時代のスラム走ってるとこが良いもん。

 

今回は明らかに意図的にそのシーンにしか前作のノリを持ち出してないから僕が微妙にハマんないのは必然だったと言える。『スティーブ・ジョブズ』も僕はあれだったし『トランス』とか曲流しながら強盗するシーンとヒロインが脱ぐシーン以外最悪だったしな!

(脱ぐシーンで思い出したけど今回のヒロインもめちゃ可愛い。脱ぎっぷりもよし。ダイアンもそのまま綺麗になってて、出番と扱いはアレだったけど出てくれて感動。)

 

でもトレインスポッティングの続編を20年後の設定でやるって言うんならこの形がベストだったんじゃないかとも思う訳ですよ。がむしゃらに走ってたあの頃に後ろ髪引かれたおっさんたちが、若い女ちょっと取り合ったり影響されたりしながら内輪でドスドスなんかやってんの。

 

特に別の人たちがやっちゃったなら「これをトレインスポッティングの続編とは認めない」的な物言いもできなくはないけど、当時のメインキャストと監督が考え抜いて話し合って納得して撮影して公開まで漕ぎ着けた結果ならもう納得するしかない。だから個人的には結局のところ続編はそもそもやらんで欲しかったという1回目の感想に戻る。これが結論になる。

 

 でも4人の中で唯一未来を見据えて動き出しているのがまさかのスパッドで、新しい才能を発見して周囲に少し認められているのは何とも嬉しかった。

(このスパッドに関してはけんす。さんの放談主義。が熱いのでそちらも。http://roomamole.blog107.fc2.com/blog-entry-843.html?sp )

 

ほんで他の3人はと言うとやっぱり過去にがんじがらめにされてる。メンタリティが変わってないどころか20年前の出来事を経て捻くれてしまったベグビーと元シックボーイに巻き込まれる自業自得なレントンという形になるけど、二人は「コイツに痛い目見せないと俺たちは未来に進めない」とでも言うようにレントンを狙う。はっきり言って鈍重で醜悪な争いだけど、これをスパッドの一発で締めるというのも象徴的かもしれない。多分今まで通りなら縄から降ろすのがスパッドで、ベグビーを殴るのがシックボーイの役割というのが自然なはずなので。

 

うーん、ここまで書いて思ったけど、トレインスポッティングの続編とかそういう話の以前に、僕はベグビーと元シックボーイにノレてないんじゃないかと思う。

 

「20年前の裏切りなんてもう大人どころかおっさんなんだし水に流せよ」とは言わないけど、「せめてもう少し前を見る努力はしなよ」と言いたくなった。元々しょうもない奴らだったけど、もうちょっとなんか成長というか大人びたところはあって欲しかった。単純に残念な感じがした。だって20年ぶりに会ったしょーもないやつらが20年経って未だにしょーもなかったら何だかなあってなるでしょ。  

 

その片方に当てられてクスリにまでカムバックしちゃうレントンのシーンは、部屋の隅でそれを見つめるスパッドの姿もあって無茶苦茶悲しかった。だってせっかくそういう沼から抜け出して順調に暮らしてたのに母親が死んで、離婚して、病気して、地元戻って、またしょーもないやつらとツルんで(しかも利用されてる)、人の金あさって、ジャンキーやるなんて悲しすぎるわ。

 

まあその最初の沼の抜け出し方がまずかったんだね。友達と違法に金稼いでしかも持ち逃げするなんていうやり方が。そんな1のラストに死ぬ程シビれた身としてはやっぱ複雑なんだよこの2って。「陰惨で陽気」だったのがただただ陰惨なとこしか見えなくなっちゃった。

新作映画071: 『T2 トレインスポッティング』 1回目の雑感と前作の話。

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監督:ダニー・ボイル

出演:ユアン・マクレガーユエン・ブレムナージョニー・リー・ミラーロバート・カーライルケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤルコーバ 他

 

 

ダニー・ボイルの最高傑作はロンドンオリンピックの開会式。

 

トレインスポッティング』に出会ったのは高校生のときで、映画の「え」の字も知らないような頃だった。元々アンダーワールドが好きで、印象的な使われ方をしていると聞いて観てみた。ラストシーンのカタルシスが忘れられない。ボーンスリッピーがかかり出すタイミングがたまらん好きなんですねー。

 

前作を見返していて気付いたこと。執行猶予がついたレントンに対してシックボーイ(現サイモン)が「Choose the life」とサラッと言う。これに「将来を考えろ」と字幕がついている。「未来を選べ。」のキャッチコピーが有名だけど、会話の中で訳すとこういう普通の言い回しになるのだろう。

 

 ラスト、マーク・レントンが不敵な笑み(に僕は見える)を浮かべてこちらに歩いてくるラストシーンは、歪なやり方ながら「未来を選んだ」人のそれだった。「友達だもんな 仕方ないよ」という言葉に表された地元の友達関係という泥沼、そしてドラッグという泥沼からダーティーな方法で飛び出す爽快感にヤラれた。その決断にスイッチした瞬間(=かつての仲間に顔に煙をかけられた瞬間)に流れ出すのが例の曲というのがまたとない使われ方だと思う。

 

そんな彼の20年後が描かれてしまうということ自体にいまいちノレない自分がいた。未来を選んだマーク・レントンがその後どうなったかということに興味がないわけではない。どちらかと言えば「そのままにしといてほしいナア…」という思いが強かった。

 

なんというか、前作のラストで「開かれた未来」とか「狭い地元の関係から広い場所に飛び出す」といったところに感動・興奮してた身としては、20年経って結局元の鞘に戻るというのがいまいち受け入れたくないというのが実際のところだった。でも当時のキャストと監督がゴーサインを出してるわけだから、観ないで「俺のトレインスポッティングは1で終わった」などと心中で喚くわけにもいかない。

 

前置きが長くなったけど、『トレインスポッティング』の正統な続編『T2 トレインスポッティング』を観てもその思いが覆ることは、うーん、なかった。そのままにしといて欲しかった感じがまだ拭えてない。

 

かつての「現在」と、かつて思い描いていた「未来」すら過去になった2017年に、おっさんになった4人が過去にすがる部分の残念さだけにしか目が行ってなかったんだと思う。その中でもまだ未来に進もうともがく良さの部分に注目できてなかった感じはしている。

 

もう一度観に行って書きます!1回目はこんな感じ!