静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画126: 『アメリカン・アニマルズ』

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監督:バート・レイトン

出演:エバン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン 他

 

何不自由ない生活をしていてせざるを得ないような何かはないし、何かをやりたい衝動もないけど、何者かである他人を見て自分もそうなりたくて仕方ないという欲求は特に昨今の若い人には珍しくないらしい。敢えて言うなら男子に多いのかもしれない。

 

例えば『クリード チャンプを継ぐ男』で富裕層の主人公はYouTubeを通して見る父親の背中を追いかけてボクシングをやるし、『スパイダーマン ホームカミング』ではヒーローとしての使命感よりも既に活躍している他のヒーローのようになりたいという欲求が先にあったのが特徴的だった。現代的なテーマなのかもしれない。

 

ついでを言えば自分もそうだった。大それた事や目に見える成果があることはしていないけど、映画を観始めたのも他の人より夢中になってるものが欲しいというのが先にあったし。思えば物心ついた時から本当に小さいところで他の人と違うことをしたい、こいつがやらないなら俺がやろうという理由で物事を選択するフシがあった。

 

この映画の主人公はケンタッキー州に住む普通の大学生。普通の大学生ということはつまり一定の生活水準を享受しているんだけど、ぼんやり、あくまでぼんやり今ここに自分がいる意味とかを自問してる。結果今の生活はつまらない、チンケな生活を維持するためにちまちま働く未来なんて嫌だと騒ぐ友人にほだされて1200万ドルの本を盗む計画を立て始める。

 

もし仮にこの映画を批判する人の中に「動機が弱くてノレない」という人がいたらそりゃそうだよとしか言いようがない。繰り返すと、彼らは何かひっ迫した衝動は持っていないけど何かをして何者かにはなりたい。ただし強盗をするモチベーションも覚悟は微塵もない。だから驚くぐらい何のきっかけもなくのぺーっと行動を始める。たまたま大学に高価な本が所蔵されているのを知ったからというだけで。

 

物事は実際にやる前の方が楽しいというのはよく聞く話だ。旅行、引越し、好きなゲームや映画の新作。計画を立てる彼らの物語の主人公は紛れもなく彼らだった。自分の机上の有能さや仲間が増える喜びに酔う無邪気さ。今サントラで「First Plans」という曲が流れてるんだけど、オーシャンズとかで流れてそうな洒落たジャズ調なのがマジで性格悪いなって思う。このスコアは図書館の図面を描き上げて二人で喜ぶところで流れてた笑

 

この課程でとても面白いと思ったのは、実際のメンバーの間で記憶に齟齬があること。例えば同じ場所にいた2人が見た男の外見の証言が異なっていたりする。人が自分の過去を脚色し、物語として補完しようとする部分が露わになる瞬間を暴くような作りがとてもスリリングだった。現在の4人のインタビュー映像が間に差し込まれる構成がめちゃくちゃ効いてると思う。それを映画的にサラッと描くのもスマート。ちなみに監督は昨今の「ベースドオントゥルーストーリーもの」へのアンチテーゼのつもりでやったらしい。

 

そんでいよいよ決行ということになるんだけど、ここまではほんの序の口に過ぎない。これから決行なんだから当たり前だろとかそういうことじゃない。ここまでは上にも連想する作品を挙げたけど、ここからがこの映画の唯一無二のところであり、僕が心底震えたところだ。ややネタバレというか核心に触れるので是非観てから読んで欲しい。

(予告ではここまでしか匂わせてないのはグッジョブだった。まあその方が人呼べるだろうけど。)

 

 

 

この映画の肝は時間の不可逆性にある。シーンで言うなら、映画みたいにスタンガンで気絶せず、痛さで泣き喚く司書を半泣きで縛り上げて半狂乱で鍵を探すシーン。もう絶対に後戻りできない、やってしまったという実感がビンビンに伝わってきてこっちまで青褪めた。彼らと同じくケイパーものの映画を観たことがある僕らの予想を悉く下回る用意周到でなさに目眩がする。スマートに計画を実行するイメージ映像が出た時にある程度予想はしていたけど、あれ程無茶苦茶だと本当に笑えない。もう本置いて逃げろとか客観的に突っ込むこともできないぐらいのめり込んで「マジでやべえ。終わった。」としか思えない地獄のようなシーンだった。

(エンドロール入ってようやく解放されたと思ったらラストに犯行のときの劇伴をぶち込んできて思い出せるのが本当に嫌。褒めてる。)

 

最悪は続く。辛うじてカバンに詰めた本を売り捌くくだりのケンカと言うにはあまりにおぞましい口論、精神的に追い詰められた彼らの行動、そしてあっけない逮捕。

 

なんと言ってもキツいのは犯行を語る現在の本人達の顔、顔、顔、顔。何であんなことしたんだろう、心底思い出したくねえと言わんばかりの伏し目。それまで軽口叩いてたウォーレンですら。それは司書という明確な被害者を出したからなんだけど、彼らは悪人じゃないから他人を傷つけたことにヘコむんだよね。と言うより他人を傷つけてまで何かをする覚悟はない人っていうか。

 

この監督はドキュメンタリーで名を挙げた人らしいんだけど、だからこそ事実に対する冷徹な視線が作品全体に行き渡っている。まあ明確な被害者がいるからってのもあるだろうけど、作品全体から若気の至りとして甘やかすような視点を徹底的に排除した作りにシビれた。本人にインタビューして、その映像を散りばめてこれをやるのは凄い。

 

僕は自分が理解できない思想を持った人でも、確固たる信念を持ってそれを実行する様を描く映画が好きだ(直近だとアベンジャーズのサノス)。でもこの映画は逆に信念や理想を何も持たずにぼんやりした欲求だけで一線を越えた、まさしくアニマルズを描いてた訳で。

 

自分はもうそういう「何者かになりたい」期は過ぎた(ウォーレンのなりたくなかった「労働者」になった)けど、根っこの気持ちは今でも全然わかる。叶える方法は最悪手だったけど。悪いことすんのって多分手っ取り早いんだよね。何かを成し遂げる近道みたいに見えるんだと思う。それが若さ故の想像力と実力のなさが引き起こした悲劇のきっかけだったという。愚かで悲惨だけど絶対他人事で切り捨てられない。僕はいつでも加害者になり得る。

 

まさかこんな方向から心を抉られるとは思ってなかったのでかなり嬉しい。サントラもめちゃめちゃ良い。今年ベスト級。

雑記:インフィニティ・ウォーだけ観てエンドゲームに挑むあなたへ

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こんにちは〜

 

この記事はMCU(ざっくり言うとマーベルのアメコミ映画のことを指す)を『ブラックパンサー』と『インフィニティ・ウォー』しか観ていない人向けに、エンドゲームを観るにあたって最低限ノイズが生じない程度の知識をもってもらうために極個人的に書いた文を公開するものです。

 

MCU作品を観てもらうためとか、その魅力を十分に伝えるためのものではありませんので悪しからず。また情報過多にしないために敢えてスカスカに書いているところが多々ございますのでご了承を。

(これでも知らん人からしたら「は?」って感じだと思う)

 

 

◾️前回(インフィニティ・ウォー)までのあらすじ

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画10年間19作品の中に登場してきた6つのインフィニティストーンを一つに集めたものは万物を作り変える力を得る。

 

「全宇宙の生物を半分に減らし、宇宙を生き長らえさせる」という宿願を果たすため、遂にサノス自らが動き出す(それまでも先鋒使って地球にちょっかい出したりはしてた)。

 

サノスは各地に散っていたアベンジャーズを次々襲撃。元からの強さとストーンの力を用い、ガントレットに全ての石を収めた。

 

指パッチンで全宇宙の生物は半減され、残された初期メンバー(後述)を始めとするアベンジャーズは大敗を喫した。

 

 

◾️エンドゲームの導入

インフィニティ・ウォー(以下IW)とエンドゲーム(以下EG)の間には2本の新作が公開された。

1本目は『アントマン&ワスプ(=アントマン2)』、2本目は『キャプテン・マーベル』。

 

それらの面々含めIWに不参加だった人が主に3人ほどいて、初めて見る顔だと思うけど以下で紹介するので安心して欲しい。

 

EGのあらすじ:残ったメンバーで頑張ろう!

 

 

◾️キャラクター紹介

①トニー・スターク(アイアンマン)

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世界的企業の社長。

自社で作った兵器を奪ったテロリストに酷い目に合わされたので、いっそ自分で犯罪者やテロリストも根絶したれと思い立ち自分で作ったアイアンマンスーツで活動し始める。DIY精神の人。

 

秘書のペッパー・ポッツとはなんやかんやあって交際中。街の隣人として細々と活動していたスパイダーマン(ピーター・パーカー)を見出し、ヒーローとしての師匠(?)を務めた人物でもある。

 

IWラストでは惑星タイタンでの戦いでサノスに敗北、ネビュラと共に取り残される。今までの戦いで派手にやって散々地球に迷惑をかけたので、今度は相手の本拠地に乗り込もうという責任感から危険を冒したにも関わらず、結果的に初対面の寡黙な青ハゲと2人にされるという可哀想な人。

 

 

スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)

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第二次世界大戦中に米軍に生み出された超人。

 

元々はひ弱で兵役の適性すらなかったが、崇高な正義感が見出されめでたく身体を魔改造された。特殊能力はないけど、人間にできることは全て人間最強クラスにできる。武器は硬い盾。

 

当時の上官のペギーとは恋仲に発展しかけダンスの約束をするという死亡フラグを立て、戦いの末皆を守るため南極で氷漬けになった。冬眠から起きたら2012年になってたのでダンスの約束はすっぽかした。ペギーは2016年に老衰で死去。

 

目覚めてからはアベンジャーズのリーダーとして活躍。各地で悪党と戦ったりテロを未然に防いだりしていたが、他国で派手に戦いすぎて国連の管理下に入れとお達しが来る。しかしそれまでの経験から拒否し、国連賛成派のアイアンマンと他のヒーローも巻き込んだ大喧嘩をしてそのまま解散。お尋ね者として密かにヒーロー活動をしていた。

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お尋ね者だった時。ヒゲも伸ばしてみたりした。

 

IWではワカンダの戦いで敗北。残された地球のアベンジャー達とサノスの情報を集める。

 

黒人の羽根生えてるやつと左腕がメタルな人が家臣。

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③ソー

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アスガルドという神の国の王子。

 

これまでの戦いで両親を亡くし、弟を亡くし、戦友を亡くし、故郷のアスガルドも滅亡、民の半分を率いて宇宙船で地球に移住しようとするもその半数もサノスによって殺されてしまう。(IWの冒頭のシーン。弟↓もそこで死。)

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守るべきものを殆ど失った彼はIWでサノスへの復讐を誓い、最強の武器を手にワカンダに降り立つも、サノスの頭を潰さないというミスを犯し敗北。

 

ちなみに元々はソーを始め高潔な精神を持つ者にしか使えないハンマー、ムジョルニアで戦ってたんだけどそれもIW以前に壊された。今現在とことん何も無い人。

 

①〜③は原作からBIG3と呼ばれ人気が高いらしく、MCUでも単独映画がそれぞれ3本作られた。なのでEGでも物語で特にフォーカスされる。

 

 

④ブルース・バナー(ハルク)

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キャプテン・アメリカを誕生させた実験を現代で再現しようとし失敗、結果自分の中にもう1人のどう猛な人格と強靭な肉体を宿した科学者。

 

自分でハルクの力を制御できず、市民やアベンジャーズを危険に晒すこともあった。自責の念から遠い星に隠居していたこともあったが、そこで偶然ソーに再会、立ち直って地球に帰ることを決めた、ということもあった。

 

IWでは冒頭では地球に帰還中サノスにボコられ、ハルクは引きこもり化。EGではハルクがどう復活するかが見所。

 

 

 

⑤ナターシャ・ロマノフ(ブラック・ウィドウ)

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元ロシアのスパイ。

 

主にキャプテン・アメリカと数々の戦いを共にしてきた。能力はなく、本当にただの(めちゃ強い)人間。

 

スパイの経歴を持つだけあって、組織から組織、人から人の間を飛び回るような立ち位置であることが多かった。が、アベンジャーズとして戦いそこに自分の居場所を見出した。くせ者揃いだったメンバーの面々を繋ぐ潤滑油的な存在でもある。

 

 

⑥クリント・バートン(ホークアイ)

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ただの人間その2。ただし弓矢が無茶苦茶上手い。EGでは刀を使ったりもする。

 

前述のアベンジャーズ分裂でキャプテン・アメリカ側についたせいで犯罪者として扱われ、IWの時は自宅に軟禁されていたため出番がなかった。嫁と、子供が3人いる。

 

ナターシャとはアベンジャーズ以前からの戦友でもある。

 

①〜⑥がアベンジャーズの初期メンバー。③〜⑥も①〜③程ではないけど中心人物になるぞ。

 

 

⑦スコット・ラング(アントマン)

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身体を小さくする能力を持つアントマンであるスコット・ラングもまた普通のおじさん。

 

バツイチ。親権をとられた娘の養育費とかで困窮した挙句泥棒やってたまたまアントマンスーツを手に入れた。主に9歳の愛娘のために戦う。IWの時はクリントと同じ理由で自宅に監禁されていたので不参加。

 

ある目的で原子レベルまで小さくなって量子世界にいたら、その最中にサノスの指パッチンが発動、周りにいた人が消滅して原子世界にただ1人取り残された(←これがEGに直結するアントマン2のラスト)。

 

 

⑧キャロル・ダンヴァース(キャプテン・マーベル)

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今年の頭に公開された単独主演作で初登場したニューカマー。

 

1980年代のアメリカにやって来て人知れず頑張っていた。ラストでとある事情で宇宙に旅立っていたのでIWには不参加だった。

 

IWのラストで眼帯の黒人がポケベルで呼んだのはこの人。

 

⑥〜⑧がEGで初対面の人。

 

 

いかがでしたでしょうか?

EGは上映時間が3時間あるので、大丈夫とは思いますが前日からの水分コントロールも忘れずに!

 

 

新作映画125: 『愛がなんだ』

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監督:今泉力哉

出演:岸井ゆきの成田凌深川麻衣若葉竜也江口のりこ 他

 

《一番言いたいこと》

この映画を観て、声を大にして言いたいことがある。

それは他人の関係性を否定するのはやめましょうということだ。

 

僕はこの主張を元々強く持っていた。

これは高校の時初めてできた彼女にフラれた経験から来ている。破局の引き金は当時の彼女が他人に僕らの関係性を相談したことによって引かれた。
相談すること自体は勿論良い。ただその相手とアンサーは僕の中に禍根を残した。
相談相手は僕と当時の彼女の共通の女友達だったんだけど、そいつはマジもんのアバズレだった。加えて顔もブスだったのが今でも腹立たしい。

 

相談内容は、僕が家に呼んだのに彼女に何もしなかったことで「自分に魅力がないのか」と不安だ、というもの(確か)。

確かに僕は付き合って2ヶ月ぐらいの時にデート帰りに彼女を家に上げて何もしなかった。
僕の言い分。当時高校1年生だった僕にはそういう発想が全くなかった。純粋に付き合って2ヶ月だしそんなのまだだろとか思ってた。純粋だったのよ。
今思えば流石に1アクションぐらい起こすべきだったと思わなくもないが、クソ童貞はそんなことに思い至るはずもなく。
アバズレはそれに対して、あいつはあなたに興味ないからさっさと別れるべき、とアドバイスをしたらしい。
その件以来、他人、特に恋人やその手前同士の関係性を否定することはしまいと固く誓った。苦目の経験がクソ童貞にもたらした些細な人生訓。

 

なので別荘のシーンのすみれさんには腹が立った。
確かに仲原くんの尽くし方は一般的ではないし、話だけだと葉子さんは悪い女に聞こえるかもしれない。
でもその裏にある複雑な想いを一蹴する想像力のなさは許し難いものがある。普通にデリカシーがない。

元々強く持ってたポリシーだったけど仲原くんへの同情がこの怒りをブーストさせていることは言うまでもない。

これを読んでる人は元々大丈夫だと思うけど、テアトル新宿を埋め尽くしていたキャピキャピ女たちにもこの願いが届くことを切に願う。女子大みたいになってたもん。

 

とても良いケーススタディだったのでこの場を借りて主張させてもらった。

今回はこの映画をダシにしてこれが言いたかっただけなんだ。

ついでにまとまらない感想も書きますね。

 

 

《山田さんの好きなところと理解不能なところ》
この映画は場所が変われば人は変わるということを描いていて、そこが好きだ。
意図的にやったことかどうかわからないけど、身に覚えがあってとてもリアルに感じた。
こないだ丁度映画友達と話したんだけど、どこにいてもよく言えばブレない、悪く言えば一本調子な人物描写に違和感を覚えることがある。
漫画とかアニメに多い。それはそれで良いんだけど、あんま人間っぽくは見えない。

 

山田さんは田中に対してそれこそ人間的でないレベルで敬虔で勤勉な反面、興味のない職場では他者など意に介さない怠惰っぷり。
初対面の人間が集まる場では壁の花な反面、田中と二人の時はニコニコで饒舌、仲原君との時は割と適当、葉子さんには甘え気味。
そういう意味で山田さんはとても人間的で好感がもてる。演じる岸井ゆきのさんは愛想の良いパグみたいで可愛い。

 

そんな山田さんの理解不能な点は田中への執着。
自分でも言っていたけど、最早愛とか恋とかそういう定型的な情念でない。尋常じゃない執着。
野暮を承知で敢えて言うなら信仰に近い。自分が信仰対象に近づこうとするという点では仏僧とかが近い気がする。

ファーストシーンは明らかに山田さんに肩入れさせる描き方をしていたし、田中が悪者に見える。
ただラストシーンはほのぼのした絵面のサイコホラーだったし、結果的には山田さんが登場人物で一番自分と距離のある人だと思った。

ただそこが嫌じゃないどころか、むしろとても興味深かった。

それはこの映画が単なるあの二人の恋愛物語でなく、もっと根っこの人と人との何かを描けているからなんだと思う。だから人物への共感は二の次三の次でいいというか。

(前にある「恋愛映画」を観たとき登場人物の誰一人として共感できなすぎてダメだったので余計そう思う。)

 

田中に惹かれる理由がほぼ描かれないのも面白い理由の一つだと思う。

ただそこを考える映画でもない気もする。そうだからそうでいいじゃんっていうか。
とにかく山田さんという巨大な謎がこの映画にすごい引力を発生させてる。

 

 

 

《20代後半の恋愛ー未知の世界 》
上述のクソ童貞は大学生の時ある子に出会った。すごく気も趣味も合う良い子だったので早めに告白したらたまたまOKだった。
そのまま今に至るけど、この映画を経た今ではシンプルだったんだなと感じる。良い悪い、合う合わないぐらいしか要素がなかった。
(ついでに言えばそんな時に出会えたのは超幸運だったんだと思う。)

 

だからこの映画で描かれる、そして実際にもあるらしい「20代後半の恋愛なんてなんとなく始まっていくもんだろう」という感じは今の自分によくわからない。てかまあ観ながら「こじれちゃってんなあ。」とすら思ってた。

でもやっぱりそれで切り捨てがたい魅力がある。

 

この映画は僕にとっては、人の人に対する執念とか依存とか憧れとか甘えとか寂しさとかそういうのが混然一体になってる力場が広がった未知の世界だった。
それは多分恋とか愛とかなんて一言で表せない、他人への想いのグラデーションなんだろう。

単純じゃないから美しい。複雑だから面白い。面倒くさいから愛おしい。

映画に描いてほしいのはこういうことだと改めて思う。

 

観終わった後そのままタピオカの列に並んでそうな女子にとっても、喉奥に残って取れない魚の骨みたいな映画であってほしい。

 

今泉監督の映画は初めて観たんだけど、こういうとところが持ち味だとしたらとても面白い監督だなと思う。

 

 最後に。

成田凌に「俺はどっちかって言うとかっこ悪い」と言わせるのはやめてくださいよ。
だったらせめてファッション誌の編集やっててオシャレって設定はなくすとかさ。自分が嫌になるだろ。お前は確かにかっこ悪いけど自分では言うなよ。

あと成田凌はファンサービスでも舞台挨拶で追いケチャップポーズをやるのはやめろ。やめろ。

 

新作映画124:『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ※途中からネタバレ有※

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アベンジャーズ/エンドゲーム』

監督:アンソニー・ルッソジョー・ルッソ

出演:ロバート・ダウニー・Jrクリス・エヴァンスクリス・ヘムズワースマーク・ラファロスカーレット・ヨハンソンジェレミー・レナードン・チードルポール・ラッドブリー・ラーソン、カレン・ギラン、ダナイ・グリラブラッドリー・クーパー

 

 

※途中までネタバレなし、ネタバレゾーンに入る前に言います※

 

《インフィニティ・ウォーの感想》

アベンジャーズとしての前作、インフィニティ・ウォーの感想をこのブログに書いていなかったので、ここで簡単に。

 

あれは単体でばっちり完結した傑作だと思ってます。アベンジャーズと銘打たれてはいますが、実質的な主役はサノスです。なぜなら彼が自分なりのやり方で宇宙を救済しようと自ら行動し、それを成し遂げる話だからです。問答無用で他者の命を奪うというやり方は歪なものですが、時には愛する者の喪失に涙しながら、信念を持って進む姿は見応えのあるものだったし、ラストシーンに不思議な感慨を覚えたのは事実です。

 

(結果的な)犯罪者の姿を描いた映画でも、その人の止むに止まれぬ事情にクローズアップしたものや、確固たる思想の下で実行する姿には不思議と心打たれる時があります。何をするかより、何故そこに至り、どう実行するか。それが今の自分の思想や姿と遠ければ遠い程魅力的です。サノスには少なからずそういうところがあった。

 

もちろんそれを全力で阻止しようとするアベンジャーズとのぶつかり合いも見所しかありません。アクションシーンはそれぞれの個性を生かしつつ見易いし、シナリオは本当に整理されていて、クロスオーバーしたキャラ同士の掛け合いも気が利きすぎている。1シーン1カット足りとも無駄がない。驚くべき大胆さと繊細な心遣いに満ちた、心底すごい作品だと思いました。

 

ここまで海外コメンテーターの翻訳のような優しい口調で理性的に感想を述べましたが、最初の鑑賞直後のテンションは「いやいやいや(苦笑)……いゃあ………(溜息)……」みたいな感じでした。

 

「残った人達で頑張る」ということしか分からない予告でひたすら期待を煽り続けたエンドゲーム。サノスとまた戦うにしても、あいつを倒して皆が戻ってくるでもなし。一旦何をどう頑張るのか?期待以上に疑問が尽きない公開前でした。

 

 

《エンドゲームの感想(ネタバレなし)》

作り手側が自分たちの作ってるものとその原作が本当に好きで、それが好きなお前らも愛してるぜ!!ここまで付き合ってくれてありがとな!っていうビーム?みたいなものを全身で浴びまくってこんな感じ↓でした。

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イデが。無限力が発動してた。

 

観終わったあとはひたすらぼーっとしてましたね。シネマシティの椅子で30分ぐらい。その後2時間ぐらい家に向かって歩きました。もう1本別の映画行くつもりだったんですけど無理でした。良い映画に浸ったあとは何もしたくなくなります。

 

スタン・リーがこの作品を観れずに亡くなったと思うと、訃報を聞いた時より切なくなってきました。改めてありがとうと言いたい。あなたとその作品のおかげで僕は今こんな思いができている。

 

MCUが積み上げてきた全てを、1本の作品の中でフル活用する豪腕。今迄は僕ら観客が自分の中で今までのメモリーを反芻して味わいが増してたんだけど、今回はもうそういう次元ではない。観客が追ってきた映像そのものが…これ以上言えない。

 

僕はウィンター・ソルジャーを劇場スルーしてシビル・ウォーでどハマりしてからほぼ全作マラソンした生粋の愚か者ですが、途中参加でも追いかけてきて本当に良かったな。小学校4年生ぐらいで転校してきたけど卒業式でドバドバ泣いた(?)

 

じゃあネタバレ有パートいきますよ。

観てない人は読まないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《エンドゲーム感想 ※ネタバレ有り※》

 

とっ散らかったありのままの感想。

 

まあ泣いた。ちょっと嗚咽が漏れたのは『クリード チャンプを継ぐ男』以来かもしれない。大の大人がヒーロー映画でウッ、グフッなどと情けない声を漏らして映画館で泣いた。サム・ウィルソンのかすれた無線が聞こえてきた瞬間涙腺が決壊した。アッセンブルで画面が見えなくなった。次は我慢してちゃんと見る。

 

この映画のベストカット。

キャップが画面左側に立ち、右側からサノスの大軍勢がやってくる超ロングのカット。絶対当初のイメージビジュアルからこれがあって、ここに向けてやってきたんだろう。絶望的な状況だけど、間違いなくMCU史上最も美しい画。本当に絵画みたいだった。万が一印象に残らなかった人がもしいたら刮目して見てくれ。

 

この映画、締めるところはこれ以上ないぐらい締めてくれるけど、ユーモアを忘れていないところも素晴らしい。特に序盤は背景のシリアスさにそぐわないレベルで細かく笑えるところが多く、満員の劇場の反応もすごく良かった。

 

MCU過去作を俯瞰して見た時のセルフツッコミとかもすごく冴えてた。GotGの伝説のタイトルバックとかはたから見ても笑えるのがすごい。

 

何と言っても前半のパートに普通のおじさんことスコット・ラングがいてくれて本当に良かった。キャップとは別種の安心感がすごい。そしてスコットを復活させたネズミがガチで全宇宙の救世主で笑った。あいつはスタン・リーの生まれ変わりだと思う。

 

サノスについて。

サノスの物語はIWで完全に完結させたと作り手も判断したに違いない。というか最初からつもりだったのだろう。IWを経た彼の首があっさりと落とされた瞬間そう確信した。

 

最終的に彼の前に立ちはだかったのは2014年から来た過去のサノスだった。当時の彼は2人の娘を手駒にする単なる悪役に見えた。そこには愛する者や無辜の命を犠牲にする覚悟の重さは見えず、しまいには地球の破壊は楽しませてもらうなどと言い出す始末で、僕にはとても前作と同じサノスに見えなかった。

 

こはちょっと残念だったってのはあるんだよね。IWを経たサノスがあんなにあっけなく殺されるのも、別人のような彼がその代わりを果たすのも。僕の理想としては数多の犠牲の上に目的を成し遂げたあのサノスに対してavengeして欲しくて、そのぶつかり合いに期待してたところもあったというか。あのサノスに対して逆襲することに生まれる意味があった気はしてる。まだ何もまとまってないんですが。何度も言う通りサノスの話は終わってて、今回はアベンジャーズのパートだからっていう割り切りは全然理解できるんだけどね。あのアゴ金玉も好きなキャラだったってだけの話かな。

 

ついでにちょい残念だったところを続けると、ブルース・バナーの扱い。彼に対してハルクやナターシャとの関係性でもって広げた風呂敷の大きさに対して畳みが足りてないんじゃないかとは思った。BIG3の割り食った感が否めず。例えばなんか戦いの中でハルクと対話して共生できるようになるとかさ。あの解決だとハルクの人格が消えたように見えちゃって微妙な気持ちになった。ハルクブルース自体は笑えたけど。荷台に乗ってるのが可愛い。車高が限界を超えて低くなってて笑った。

 

一つ観る前に気になっていたことがあって。それは指パッチンの抽選にサノス自身が含まれていたのかどうかってこと。これは映画を通して知り合った方の言だけど、「農園をやりたい」とその後の話をしてたあたり自分は勘定に入ってない可能性が高い。自分を安置に据えて他人の命をどうこうするなんて、救済という目的意識があってもやっぱヴィランの所業だよな、とは思う。

 

アベンジャーズはそれに対してアッセンブルすることで打ち勝った。さまざまな信条、能力、生い立ちを持った多様な人達が知恵や力を出し合い協力することで、可能性を閉ざし、自由を奪い、人々を分断する存在を打倒した。

 

こうして書くとヒーローものとして真新しいことをやってる訳じゃないのに、極めて現代的なテーマを描いている事が分かる気がする。しかもそこに尋常でない感動が生まれる。アベンジャーズが時代に迎合したのではなく、時代が求めるものがアベンジャーズだったのかもしれない。

 

皆で協力すればなんとかなるっしょ、なんて思うのは甘々だとわかってる。でもそういう希望や綺麗事を思い出させてくれるのが物語の力だっていうのはまだ短い映画人生で実感したことの一つだ。そういう力が本当に詰まってた。少なくともこんな青臭い感想を書かせる力はあったってこと。

 

余談。

あの世界はあの後も大変だと思う。消えなかった人はそのまま5歳加齢したのに消えた人はその時のまま。ピーターとネッドはお互い消えたみたいだからその時の姿で再会できたけど、あの科学クラブの面子で消えなかった人がいたらその人だけ卒業してしまっていることになる。チタウリの残骸からヴァルチャーを生み出すMCUならそういう齟齬すら作劇に利用してきそうな感じはするけど。あとファーフロムホームの舞台は2024年ってこと?とか気になる疑問は尽きない。

 

兎にも角にも、次の10年も見届けたい。一旦の区切りになりますが。とりあえず10年間ありがとう。万感の感謝を。

 

 

 

※ネタバレキャスト※

出演:ジョシュ・ブローリンレティーシャ・ライトエヴァンジェリン・リリーセバスチャン・スタンチャドウィック・ボーズマンミシェル・ファイファーデイヴ・バウティスタ、ジョン・ファブロー、グウィネス・パルトロー、タイ・シンプキンス、真田広之ヘイリー・アトウェルナタリー・ポートマンテッサ・トンプソンティルダ・スウィントンレネ・ルッソベネディクト・ウォンマイケル・ダグラストム・ヒドルストンポール・ベタニークリス・プラットヴィン・ディーゼルサミュエル・L・ジャクソンゾーイ・サルダナアンソニー・マッキー

新作映画123: 『チワワちゃん』

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監督:二宮健

出演:門脇麦成田凌、筧一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎、仲万美、古川琴音、篠原悠伸、上遠野太洸、松本妃代、松本穂香栗山千明浅野忠信

 

 

青春の擬人化。チワワちゃんという人間を一言で表すならこれかなと。彼女は若さと美貌を武器にして後先考えず気持ちいい方に走り続けていたからそう思った。理由はもう一つある。それは彼女の物語上の役割の中に見えた。

 

主人公のミキ(門脇麦)はチワワちゃんと同じグループにいたのに、彼女をあまりよく知らなかった。いつの間にか現れて、グループの中心になってて、インスタのフォロワーも抜かされて、ちょっと嫉妬していたことはよく覚えてるみたいだったけど。

 

だから彼女はチワワちゃんがバラバラ死体になったことをきっかけに、チワワちゃんのことを知ろうとした。もうこの世にいないのに。

 

しかし僕にはそれが建前に見えた。楽しかったあの頃に戻るための建前に見えた。生前の彼女を知るために、かつてつるんでいた仲間を訪ね歩くことで、かつて確かにあった青春の残滓を掬いとろうとしているように見えた。

 

彼女はこの映画において主人公の青春そのものであり、そしてこの映画は彼女の名を冠している。

 

エンドロールを眺めている間中、切なくて仕方なかった。観ている時は、時に醜くていびつに見えた彼らのあの頃の一瞬一瞬がかけがえのないものに思えてきて。こんなパリピなルックの映画からこんな後味がするのかという嬉しい驚き。

 

そして観て5日程経った今、この映画そのものが自分の中でかけがえのないものになりつつある。もう一度観たら理由がわかるかな。

 

ただ一個理由として確かなのは、二宮健監督(27)がスクリーンを引きちぎる勢いで自分の爪痕を残そうとしてたことがビンビンに伝わってきたこと。この人の映画を初めて観たけど、タイトルロールの前に監督の名前出るとこでめちゃニヤついた。

 

ともすれば嫌悪感も残しかねない筆致の強さ・荒さだったけど、この映画では眩すぎる一瞬の火花としての青春を描くのにすごくマッチしてたと思う。この人でなきゃこんなに残らなかった。

 

早くも今年ベスト級出ました。出ました。

新作映画122: 『クリード 炎の宿敵』

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監督:スティーブン・ケイプル・Jr.

出演:マイケル・B・ジョーダンシルベスター・スタローンドルフ・ラングレンテッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、フロリアンムンテアヌブリジット・ニールセン

 

前作の感想はこちら。

(今でも拙い感想だけど初期も初期なのでさらに恥ずかしい)

新作映画レビュー:003 『クリード チャンプを継ぐ男』 (+ロッキーシリーズ) ※ネタバレ無 - 静かなる備忘。

 

前作の『クリード チャンプを継ぐ男』が人生ベスト級に好きだ。故に上がり続ける期待値と無名の新人監督へのバトンタッチ要素に感じる不安がせめぎあったまま公開日を迎えた。1回目は公開日鑑賞にこだわるあまりコンディションも万全でなかったので、2回目は完璧な状態で判断したいと思い1週間でロッキーシリーズ7作を観返し、体調も万全に整えて赴いた。

(なぜか初見で微妙だった5がすげーよかった。)

 

1回目の印象が帳消しになったわけではないけど、シリーズ、とりわけロッキー4とクリード1へのリスペクトが詰まった素晴らしい続編だった。

 

何と言ってもかつてのロッキーの宿敵ドラゴとその息子ヴィクターが登場するシーンはすべて良い。栄光や名誉とは縁遠い現在の彼らの暮らしぶりと、それを表すようなウクライナの寒々しい空気感が伝わってくるファーストシーンで既に心を掴まれた。息子の単なる栄養補給でしかない飯の食い方(一人飯シーンのある映画は名作)とか、ドラゴの無慈悲な起こし方とか、喜びのない生活をずっと二人でしてきたんだなと。特に2回目は知っているだけに余計切ない。

 

アドニスは初めて公衆の面前で完膚なきまでに叩き潰され、子どもとかいう未知の生物まで抱えた受難が苦しい。僕は人生で一番辛い時というのは、辛い目にあってる時もそうだけど、解決すべき問題があるのはわかってるけど踏み出せずに悶々としている時でもあると思う。チャンピオンという立場にかかるプレシャーや、強敵への恐怖で動き出せないアドニスを見守るこっちも辛かった。だからこそ覚悟を決める瞬間のアドニスを背後から見守るアポロの構図は本当にグッときた。

 

そういう溜めもあってトレーニングシーンは「やったれやったれ」と拳を握って心中で応援した。熱砂の土地での猛特訓はドラゴ親子の寒冷地での粛々と行われるそれとは好対照でキマっていたし、シリーズでも観たことのない味があってよかった。ハイウェイのダッシュといい、水中でのトレーニングといい、この監督は要所の画面もハッとさせられる。

 

そんな二人の決着のつけ方の意味するところを考えると、もうこれ以上ない幕引きだったと思える。ロッキー4のやり直しでない上に、ドラゴの中の変化を言葉でないアクションで描いた、考え抜かれた結末だった。観終わった人の中から「あの敵の親子がかわいそう」みたいな声が方々から聞こえてきて、もちろん境遇を鑑みればそう思う。でもロッキーの言葉を借りるなら彼らもまた「自分を憐れんではいない」はずだ。あの行動をとったドラゴとヴィクターなら、本当の意味で自分のために戦えるだろう。試合後の1カットは冒頭と同じなのにまったく違うものに見えた。

 

全体の印象として、特に振り返りの予習などをせずに公開日に観た1回目は、ぶっちゃけそこまで来るものはなかった。するまいするまいと意識していたのだけど、やっぱり前作と頭のどこかで比較してしまっていた自分はいた。今作は前作より印象的なシーンが少なく、特に前半は割と淡泊な感じすらあって、ドスンとくる感じがなかったなという印象が先行した結果だと思う。敢えて言うならファイトシーンの迫力や、要所要所の劇的な演出はクーグラーの方が上手で、自分はそっちのが好みだった。かな。というのは。ある。

 

いやでもスティーブン・ケープル・Jr.は立派に役割を果たしたよ。素晴らしい仕事だった。

 

2018年新作映画ベスト10・他の話。

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あけましておめでとうございます!!

2018年の新作映画ベスト10だヨ。

 

2018年は4月頃から通勤電車でやらなきゃいけないことができちゃってこのブログお休みしてました。ご無沙汰してました。これを機にぼちぼちリハビリしてく所存です。前は新作全部書いてたけど、2本に1回ぐらいは書きたい…ですね。

 

映画館で観た新作は45本で2017年から10本減ぐらい。乱雑な感想とまとめたので読んでやって下さい。

 

 

10位:ゲッベルスと私

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7月26日、神保町シアターで。

 

ナチスドイツの宣伝大臣・ゲッベルスの秘書を務めていた御年103歳のブルンヒルデ・ポルゼムの証言を収めたドキュメンタリー。

 

ドキュメンタリーなのに、ファーストカットから「これは!!」と思った。コントラストをバッキバキに強調した白黒の画面に深く刻まれた皺、分厚い眼鏡のレンズ、憂いに満ちた眼差しが後悔と共に過ごした年月を一発で感じさせたから。被写体として優秀な人。

 

インタビューとそれを裏付けるような当時のフッテージが挿入されるので、納得度が高くテンポもいい。

 

当時無知で条件の良い仕事を言われるままこなしていた彼女を責める気は毛頭ないけど、この映画を観た後では、無知が無罪とは思えなくなってしまう。思い出したくもないだろうに、わざわざ矢面に立ってくれたことに感謝。

 

 

9位:寝ても覚めても

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9月8日、テアトル新宿

 

突然失踪した元カレに未練たらたらなまま性格は全く違うけど顔は同じな今カレと付き合ってたら元カレ再登場でどーしよーッ!?っていう感じの話。

 

麦(元カレ)と朝子の関係性が突飛すぎて、ラストシーンをやるために2人が動かされてる感じ、つまりあまり血が通った人間に見えないって不満もあるんだけど、ラストが見事だったので結局ランク入り。ラストはぐちゃぐちゃだけどキャラが生きてる感じがしたという意味で去年のベスト『あゝ、荒野』と対照的な気がした。

 

衝動で結ばれた恋人と情で結ばれた夫婦の対比が非常に映画的に表されてて見事だった。つまり、前者同士は向かい合ってお互いを見る構図が多いんだけど、後者は同じ方向を向いて何かをしているのが多いんですよ。この対比がシビアだけど、うわー映画っぽ!!って感服した。濱口竜介監督、噂に違わぬ逸材でした。

 

 

8位:カメラを止めるな!

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7月9日、新宿K'sシネマで。

 

観た直後「こんなん誰がどう見ても面白いし海外でもかかんねえかな」とツイートしたんだけど、これはどっかの映画祭とかに引っかかってかけてくれないかな程度に思ってただけで、まさか日本中のシネコンにムーブオーバーして流行語大賞にノミネートされるなんて夢にも思ってなかった。

 

準備パートを経て再びファーストシーンに戻った時の、「同じことやってるのに響きが全然違う!!」と興奮と大笑いが同居した感じは忘れられないだろうな。上田慎一郎監督の今後のフィルモグラフィーがどうなるのか非常に気になる。

 

 

7位:志乃ちゃんは自分の名前が言えない

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8月3日、シネ・リーブル神戸で。

変なホールの地下みたいなとこにあってわかりにくかった。

 

吃音でうまく喋れないけど歌が上手い志乃ちゃんと弾き語りやりたいけど歌が下手な加代ちゃんがデュオで路上ライブとかやり始めるんだけど、クラスで浮いてる男子の介入とかで色々ある話。

 

神戸旅行に行ったとき予定が合ったから観たけど、思わぬ掘り出し物で嬉しくなった。

 

互いのコンプレックスや不得手を認め合う美しさにニヤけ、思春期のアイデンティティの脆さはもどかしい。誰も悪者ではない。痛さの先に踏み出した時新しく射す光に感動。こういうの本当弱いっす。そのうち新しくできた友達に笑って話せる思い出になるといいよね。

 

あと田舎の海辺の町が舞台なんだけど、ロケーションが最高だった。どこなんだあれは。

 

 

6位:華氏119

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11月16日、TOHOシネマズ新宿。

 

マイケルムーアがトランプ撮ったら面白いジャーン」と意気揚々と足を運んでやられた。トランプのことは冒頭で軽く小バカにして終わりで最早ムーアの眼中になく、トランプと同じく資本家目線で政治を動かすやつが何をやらかしているのかを中心に、現在のフッテージのパッチワークを通して観客の目線をも未来に向けさせようとしていたところに感心した。

 

ゲッベルスと私』と同じく、大衆の無関心や諦めがのさばらせる欲望の危険性を(こっちはいくらかライトに)説いているように感じた。

 

世界はやらない善人よりやる悪人が動かしている。船が止まれば流れに流されるしかなくなる。今日本のどれだけの人が自分のオールを手放していないのか、そもそも持っていることがわかってるのか。映画館を出た後の歌舞伎町の景色が気味悪いぐらい違って見えた。

 

何より8:2で負けると予想されていたトランプの当選をムーアが的中させたという事実がこの作品の価値を押し上げてる。観てよかった。てかまあ単純に面白いよ。

 

 

5位:バンクシーを盗んだ男

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8月17日、新宿シネマカリテで。

 

世界的かつ正体不明のストリートアーティスト・バンクシーパレスチナに出現、イスラエルとを分断する高さ8メートルの壁に1枚の絵を描いた。その絵が住民たちの反感を買い、切り取られ売り飛ばされてしまう。実行した内の1人のタクシー運転手への密着をはじめ、負の側面も含めたその影響を記録したドキュメンタリー。

 

2016年、『バンクシー・ダス・ニューヨーク』でバンクシーの作品がニューヨークに巻き起こしたムーブメントを初めて目の当たりにした。とりわけ印象に残ったのが街中の作品の前に居座って「バンクシーのアートを見たけりゃ俺に金を払いな」とか言い出す屈強な黒人。自分には、言ったら壁の落書きが人々の行動に与える影響が興味深く見えた。

 

話は逸れるけど、この映画を観る1ヶ月ほど前にも同じような体験をした。金沢旅行の中で現代アートの展示で有名な21世紀美術館に足を運んだ時のこと。インドネシアの45歳の女性の個展だったんだけど、作品を見れど見れど全く意味は分からなかった。2m×2mぐらいのキャンバスに、ある程度色が統一された絵の具が無造作(に見えた)に踊っている作品が大半を占めていた。たまに何らかの形に見えるものがあり、「これ龍じゃない?」とか言いながらぷらぷら鑑賞した。

 

作品自体に対しては始終そんな感じだったんだけど、見ている間「この作品から何かを受け取り、価値を見出し、値段をつけ、買い取り、運び、展示する『人間』がいる」ということが面白くて仕方がなかった。大学生の時授業で岡本太郎の勉強をしたことがあって、今思えばその時も同じ感覚を覚えていたような。

 

という訳で、この映画はそんな自分の興味の器を溢れんばかりに満たしたくれた。謎の男の壁の落書きが人々の中の何かを刺激し、行動させる。その渦中に一歩踏み込んでそれぞれの感情、考え、スタンスに迫る。人間と作品の関係性って面白いなあとつくづく思った。この手の作品があったら是非教えて欲しい。

 

 

4位:アベンジャーズ インフィニティ・ウォー

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4月27日、立川シネマシティ。他2回。

 

最初チャンピオン枠というか特別賞的なとこに入れようかと思ったんだけど、そっちは別の作品にしたので、真っ当にランキングに入れて考えたらまあこの順位になるよねという。

 

サノスを軸に据えた極めて整理された話運びのわかりやすさ、各キャラの見せ場の用意周到さ、アクションシーンのかっこよさ、終わった後の劇場の空気、本当に言うことないっす。ブラックパンサーしかMCU観てない彼女を連れて行ったら「サノス先輩はいい人だ」と楽しめていたのも素晴らしいなと。

 

エンドゲーム、伏して待つ。

 

3位:太陽の塔

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10月7日、新宿シネマカリテ。

 

岡本太郎が大阪に打ち立てたあの塔は何だったのか、何なのか、何になっていくのか?様々な分野の専門家や芸術家のインタビュー映像を繋げたドキュメンタリー。

 

バンクシーを盗んだ男』と、(一見意味不明な)芸術に解釈と価値を与え動かされる人々のドキュメンタリーという共通点はあるんだけど、こっちは行動より解釈にフォーカスしている感じ。

 

太郎が万博に携わった経緯や彼の生い立ちは導入で一応やるんだけど、何せ面白かったのは語り部たちがそれぞれの立場から太陽の塔のルーツや込められた意味、類似する文化や学者の思想、この先あの塔が果たす役割を、熱に浮かされたように好き勝手語りまくるところ。

 

この人たちの様子を見てるだけであの塔にどれだけのパワーがあるのか伺える。これはナレーションを排してインタビュー映像のみを繋げたのが功奏してる。内容は勿論なんだけど、語ってる人の熱が伝わってくるのは映画ならではだと思う。

 

映画ならではと言えばドキュメンタリーにも関わらず要所要所で差し込まれるドラマパートもすごく良かった。下手すると寒い感じになりかねない気もするんだけど、現人類が滅んだ後も居続ける太陽の塔と対峙する少女というイメージが、このインタビューのパッチワークをただの資料ではなく、魂の入った映画に昇華するための芯を通しているように感じた。

 

1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」名の下でそれぞれの国がその国の文化や技術の到達点を展示する催しだった。それらパビリオンは跡形もなくなって、2004年の愛知万博から14年経った今も、そして恐らく2025年の大阪万博が終わっても尚そこに立ち続けて、その時の人は何かを受け取るだろうなって確信がこっちにまで伝播してきた。

 

(母校の教授が実質主演みたいに出番が多かったのに驚きました。)

 

 

2位:パシフィック・リム アップライジン

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4月21日、TOHOシネマズ新宿。

 

褒めている人をあまり見たことがない。でも俺はめっちゃ好きなんすよ。普通に考えてアベンジャーズIWよりこれが上ってことはないよ。ないけどなんかもう可愛いのよ。出来悪いけど一生懸命作った感じがどうしても好き。

 

ヒロインの子が主人公と土壇場でドリフトして前作でジプシー・デンジャーがやってた包拳礼みたいなポーズやるじゃん?やった瞬間ドリフト上手くいかなくなってぶっ倒れるじゃん?僕はここがスティーブン・S・デナイトの謙虚さの表れだと思ってて。「俺はデルトロみたいに上手くできないけど彼のことはリスペクトしてるから頑張るよ!!!」ってメッセージに見えちゃってさ。この作品のキュートさを象徴するシーンだと思ってる。

 

でもフラットに見ても前作より良いところは沢山ある。まず全編通して昼間の戦いであること。まあ絵面は夜のがかっこよく見えるんだけど、何が起こってるかわかりやすいし、イェーガー(ロボ)のディティールもよく見える。戦闘シーンの見せ方も申し分なく、少なくとも何やってるかわかんないようなところはなかった(上手いかどうかは知らん)。

 

あとイェーガーvsイェーガー戦をガッツリやってくれたところ。1でvs怪獣だったら2はvsイェーガー同士の戦い見たいもんやっぱ(平成ライダーファン並の感想)。オブシディアン・フューリー(黒いロボ)が初登場するとこで海から鳥が飛んでくるとこめっっっっちゃ好き。巨大なヤツが来る!ってワクワク感をくすぐる予兆の描写が上手だとそれだけで満足できてしまう。巨大感演出も冒頭のスクラッパー(可愛い)とノーベンバー・エイジャックスのとことか良かったですし。

 

そして何より全体的に明るいところが好きだ。ジョン・ボイエガをキャスティングして昼間のシーンばっかりなあたり意図的なんだろうけど、人類が窮地に陥っていて皆割と余裕がなかった前作とは真逆のアッパーなテンションが好ましい。まあ観た時期も良かったのかな。

 

特にスクラッパー再登場(アニメみたいで最高)以降はド根性マシマシのハチャメチャ展開で笑ってしまうレベルなんだけど、「いや、でも元々ロボットアニメとかこんな感じだったよな」とむしろ肩の力を抜かれた上でライドできた。決着のつけ方は本当に「おい最後はマジンガーZでキメようぜウェェェエイwwwww」という身体は大人頭脳は子どもな作り手たちの笑い声が聞こえてくるようで、そのままゲタゲタ笑いながら富士山で雪合戦やって終わりという清々しいラストで大変元気になって映画館を出たのだった。ちなみに去年の元気映画枠は『ジャスティス・リーグ』。2019年もこういう映画に出会いたいぜ。

 

まあ敢えて言うなら前作キャラの扱いは叩かれてもしゃーないかなとは思う。僕は前作も大好きだけど、逆にこれを観て「そもそも前作も大した映画じゃなかったし、少なくともあれやデルトロを神格化してこれを叩くようなことは絶対あり得ないな」と思った。

 

 

1位:きみの鳥はうたえる

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9月28日、新宿武蔵野館

 

観た直後のツイートが端的に感じを言い表しているような気がするので貼り付け。

 

映画を観た後電車に乗ってスマホ見てると最寄り駅につくまでに覚めて現実に戻っちゃう感覚があるんだけど、この余韻から抜け出したくないな…と久しぶりに思った映画。これを味わいたくて映画館に行っている節がある。こういう時は気が済むまで線路沿い歩いて帰るんだけど、劇中の彼らの真似して缶のハイボール飲みながらフラフラ終電まで歩いた。ちなみに去年のベスト『あゝ、荒野』の時も同じような感慨に襲われて、歩いた。

 

具体的に何がよかったかと考えると意外と難しい。すごい不思議なんだけど。でも自分の日常と大差ないことやってたり、同じようなことを感じてる人たちが本当に美しく見えたからっていうのはある。大げさに言えば人生が良く思えるようになった。上のツイートの通り、その点で日本映画は日本人の僕には絶対的に分がある。三宅唱監督の映画は初めて観たけど本当に優しい人な気がした。

 

 

特別賞:ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

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11月14日、TOHOシネマズ上野にて。

会員デーで1100円で観れたのに6ポイント無料鑑賞使っちゃったの一生悔やむな。

 

もうこれは順位がつけられなくなってしまったので特別賞。

 

僕は賛否両論(否かなり多め)なハイエボ1も去年の4位に据えるぐらい好きなんだけど、一本の映画としてはまあ叩かれても仕方ないよなとは思ってた。

 

しかしこの2は遂に一本の映画としてもエウレカセブンの新作としても、良いものができたてよかったねえと素直に祝いたくなるような出来だった。相変わらず観客どこらかファンすら置いてけぼりなところもなくはなかったけど、今回は観客の手を引いて無理やり遠くまで連れて行くようなパワーがあったのは間違いない。

 

後半の展開は「なにこれ?笑」と半笑いで眺めていたんだけど、不思議と嫌な気はしなかった。ガリバー可愛いんじゃ。そしてラストでまんまとやられた。お前とも長い付き合いだけど貫禄がでてきたよね。

 

そもそも僕はテレビ版は好きだけど大して良くできたアニメではなかったと思ってるので、このハイエボシリーズは既にテレビ版を凌ぐ出来になっていて全肯定したいレベルになってる。ハイエボ3も2の路線で駆け抜けて欲しいなあ。超期待。

 

 

というわけで2018年のベスト10+特別賞でした。ドキュメンタリー映画の面白さに目を開かされた年だったので4本ランクインという結果に。

 

次点は以下。

来る、ギャングース日日是好日愛しのアイリーンちはやふる 結び、スリービルボードブラックパンサーいぬやしき君の名前で僕を呼んで、斬、

(ちなみにアベンジャーズ IWをランキングに入れる前は『斬、』を10位に据えてた。)

 

ワースト。2018年は本当に「こりゃダメだ。クソだ。悪口言わなきゃ気が済まねえ。」みたいのはなかったので特にないんだけど…本当に敢えて言うなら『羊の木』かな。主人公が終始何もせずに神の鉄槌でジエンドはない。バンドシーンとか会話シーンもダラダラして良い印象がない。悪い映画ではないけど全く刺さらなかった。沢村一輝がよかった。思えば2017年はワースト枠が豊作だったな。

 

あと、極個人的な不満で、今年は特撮映画が不作だった。『劇場版 ウルトラマンジード』『劇場版 仮面ライダーアマゾンズ 最後ノ審判』『仮面ライダービルド Be The One』『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFOREVER』の4本。平成ライダーアニバーサリーのジオウは面白いし、来年は新元号ライダーもスタートするしとにかく今後に期待ですね。

 

旧作ベストは『シング・ストリート』。噂に違わぬ傑作でした。ラストシーンの一見壁に思える大きな存在もやっぱり君を導いてくれるよってメッセージに感動した。そしてラストの彼の表情と監督からのメッセージで好きにならない訳がない。全ての兄弟たちへ。

 

というわけで皆さん2019年も良い映画ライフを送りましょう。また!