静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画076: 『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

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監督:石井裕也

出演:池松壮亮石橋静河松田龍平市川実日子田中哲司佐藤玲三浦貴大、ポール・マグサリン

 

 

僕らは映画の中で起こることを神の視点から客観的に見下ろすことができますが、その登場人物たちはそうはいきません。僕らの不安や心配をよそに、目の前のことに反応し行動するのみです。大体は。

 

現実では僕らも同じです。僕らはこの世界(→星→国→街)に生きていて、五感で感じ取れる範囲でしか物事を知覚できません。壁一枚隔てた向こうの出来事や、5分後に起こる事を見たりすることは(基本)不可能です。

 

世界(→星→国→街)には数多の人や生き物がいて、ものがあります。ここにも度々書いてる気がしますけど、自分が「知らない」ものは、自分にとって「ない」ことに等しい。

 

僕らは映画の観客って立場に立てば、世界の見えざる部分を見ることができます。例えば、マンションの隣室の様子とか、こないだ道端にいた子犬のその後とか。

 

この映画の登場人物たちはそんなことを知らずに楽しんだり笑ったりしています。僕らはそれと同時に別の場所で起こっている悲しいことを見てなんとも言えない気分になります。逆もまた然りです。

 

でも多分この世界(→星→国→街)、或いは社会で生きるというのはそういことなのです。自分の幸せの絶頂の時には誰かの生命が絶たれるし、自分が人生のどん底で本当死ぬかと思っていると、1分後に思わぬ幸せが舞い込んできたりする。それは誰にもわからない。だからこそとにかく五感で感じられる範囲の幸せにひたむきになるしかない。

 

で、そんなことを分かち合える人がいればこそ人生はもっといい。朝おはようと言える人がいるということは、一緒に朝を迎えられる人がいるということですからね。この映画ではそれがたまたま恋愛という形に昇華していました。その過程もまた愛おしくなるようなものでしたが、恋愛だけが形ではないと思います。

 

(つくづく当たり前のことしか書いてませんが、当たり前のことを改めて心から実感できる機会というのは貴重な気がします。)

 

それを体現していたのが田中哲司さん演じる岩下さんですね。まー彼が本当によかった。細かいこと抜きにしてもとにかく生きてなきゃダメですね。本当に。

 

あとこの映画、主人公と岩下さん含む4人が工事現場で働いていていつもつるんでる(『オーバー・フェンス』を思い出した。)んですが、その4人が現場で働く様がさながら戦争映画のようでした。一人があんなことになるのも含めて。なんか切り取り方とか見せ方、つまり演出で工事現場がこんな風に見えるんだなと感心しました。

 

公式サイトに乗ってる村上虹郎くんの応援メッセージがよかったので引用して締めます。

「カラオケは好きじゃないけど、この映画のカラオケのシーンは大好きです。

死ぬまで生きるさ。いただきました。」