静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画093: 『散歩する侵略者』

f:id:gadguard-twitter:20170927135142j:image

監督:黒沢清

出演:長澤まさみ松田龍平長谷川博己高杉真宙恒松祐里前田敦子満島真之介東出昌大小泉今日子笹野高史

 

 

「地球という惑星において人類はたまたま一番繁殖した一生物種にすぎない」という主張は最早自分の中のテーマになりつつあって、吉田大八が『美しい星』で取り上げてくれた時は我が意を得たりだったんだけど、今度は黒沢清御大がやってくれた。この作品が『美しい星』より一歩踏み込んでると思うのは、人類が地球に相応しい生物かどうか判断するための材料が具体的に用意されていること。

(原作者の劇団イキウメの前川知大は恐らく三島由紀夫の「美しい星」を読んでいるだろうから意図的にワンアイデア足したのかもしれない)

 

どのように判断するかというと、宇宙人たちが人類から「概念」を抜き取って学習するという。この作品のユニークなところであって、僕ら観客が「その設定どう活かしてくれんの?」ワクワクするところ。

 

このリアクションで面白いのは意外にも抜いた方ではなく抜かれた方のそれだった。人にとって大事であろう概念を抜き取られて地面にへたり込み「そりゃそうなるわ」と思ったら人が変わったように笑ったり明るくなったり。概念とは人を縛る枠組みのことなのかもしれない。いつか書いたかもしれないけど、僕は夏目漱石が「肩こり」というワードを発明しなければこの世に肩こりに悩まされる人はいなかったんじゃないかと前から思っている。多分そんな感じなのだ。多分。

 

そんな彼らが最後に人間から奪ってしまった概念でもって人類は救われる訳ですが、あれってなんなんでしょうね。言葉にすると超胡散臭いし。でもまあ「やんなっちゃうなあ」なんて言いながら甲斐甲斐しく世話することは確かに間違いなくそれなんでしょうね。高杉真宙くんと恒松祐里さんよかったよ。