静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

2018年新作映画ベスト10・他の話。

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あけましておめでとうございます!!

2018年の新作映画ベスト10だヨ。

 

2018年は4月頃から通勤電車でやらなきゃいけないことができちゃってこのブログお休みしてました。ご無沙汰してました。これを機にぼちぼちリハビリしてく所存です。前は新作全部書いてたけど、2本に1回ぐらいは書きたい…ですね。

 

映画館で観た新作は45本で2017年から10本減ぐらい。乱雑な感想とまとめたので読んでやって下さい。

 

 

10位:ゲッベルスと私

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7月26日、神保町シアターで。

 

ナチスドイツの宣伝大臣・ゲッベルスの秘書を務めていた御年103歳のブルンヒルデ・ポルゼムの証言を収めたドキュメンタリー。

 

ドキュメンタリーなのに、ファーストカットから「これは!!」と思った。コントラストをバッキバキに強調した白黒の画面に深く刻まれた皺、分厚い眼鏡のレンズ、憂いに満ちた眼差しが後悔と共に過ごした年月を一発で感じさせたから。被写体として優秀な人。

 

インタビューとそれを裏付けるような当時のフッテージが挿入されるので、納得度が高くテンポもいい。

 

当時無知で条件の良い仕事を言われるままこなしていた彼女を責める気は毛頭ないけど、この映画を観た後では、無知が無罪とは思えなくなってしまう。思い出したくもないだろうに、わざわざ矢面に立ってくれたことに感謝。

 

 

9位:寝ても覚めても

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9月8日、テアトル新宿

 

突然失踪した元カレに未練たらたらなまま性格は全く違うけど顔は同じな今カレと付き合ってたら元カレ再登場でどーしよーッ!?っていう感じの話。

 

麦(元カレ)と朝子の関係性が突飛すぎて、ラストシーンをやるために2人が動かされてる感じ、つまりあまり血が通った人間に見えないって不満もあるんだけど、ラストが見事だったので結局ランク入り。ラストはぐちゃぐちゃだけどキャラが生きてる感じがしたという意味で去年のベスト『あゝ、荒野』と対照的な気がした。

 

衝動で結ばれた恋人と情で結ばれた夫婦の対比が非常に映画的に表されてて見事だった。つまり、前者同士は向かい合ってお互いを見る構図が多いんだけど、後者は同じ方向を向いて何かをしているのが多いんですよ。この対比がシビアだけど、うわー映画っぽ!!って感服した。濱口竜介監督、噂に違わぬ逸材でした。

 

 

8位:カメラを止めるな!

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7月9日、新宿K'sシネマで。

 

観た直後「こんなん誰がどう見ても面白いし海外でもかかんねえかな」とツイートしたんだけど、これはどっかの映画祭とかに引っかかってかけてくれないかな程度に思ってただけで、まさか日本中のシネコンにムーブオーバーして流行語大賞にノミネートされるなんて夢にも思ってなかった。

 

準備パートを経て再びファーストシーンに戻った時の、「同じことやってるのに響きが全然違う!!」と興奮と大笑いが同居した感じは忘れられないだろうな。上田慎一郎監督の今後のフィルモグラフィーがどうなるのか非常に気になる。

 

 

7位:志乃ちゃんは自分の名前が言えない

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8月3日、シネ・リーブル神戸で。

変なホールの地下みたいなとこにあってわかりにくかった。

 

吃音でうまく喋れないけど歌が上手い志乃ちゃんと弾き語りやりたいけど歌が下手な加代ちゃんがデュオで路上ライブとかやり始めるんだけど、クラスで浮いてる男子の介入とかで色々ある話。

 

神戸旅行に行ったとき予定が合ったから観たけど、思わぬ掘り出し物で嬉しくなった。

 

互いのコンプレックスや不得手を認め合う美しさにニヤけ、思春期のアイデンティティの脆さはもどかしい。誰も悪者ではない。痛さの先に踏み出した時新しく射す光に感動。こういうの本当弱いっす。そのうち新しくできた友達に笑って話せる思い出になるといいよね。

 

あと田舎の海辺の町が舞台なんだけど、ロケーションが最高だった。どこなんだあれは。

 

 

6位:華氏119

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11月16日、TOHOシネマズ新宿。

 

マイケルムーアがトランプ撮ったら面白いジャーン」と意気揚々と足を運んでやられた。トランプのことは冒頭で軽く小バカにして終わりで最早ムーアの眼中になく、トランプと同じく資本家目線で政治を動かすやつが何をやらかしているのかを中心に、現在のフッテージのパッチワークを通して観客の目線をも未来に向けさせようとしていたところに感心した。

 

ゲッベルスと私』と同じく、大衆の無関心や諦めがのさばらせる欲望の危険性を(こっちはいくらかライトに)説いているように感じた。

 

世界はやらない善人よりやる悪人が動かしている。船が止まれば流れに流されるしかなくなる。今日本のどれだけの人が自分のオールを手放していないのか、そもそも持っていることがわかってるのか。映画館を出た後の歌舞伎町の景色が気味悪いぐらい違って見えた。

 

何より8:2で負けると予想されていたトランプの当選をムーアが的中させたという事実がこの作品の価値を押し上げてる。観てよかった。てかまあ単純に面白いよ。

 

 

5位:バンクシーを盗んだ男

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8月17日、新宿シネマカリテで。

 

世界的かつ正体不明のストリートアーティスト・バンクシーパレスチナに出現、イスラエルとを分断する高さ8メートルの壁に1枚の絵を描いた。その絵が住民たちの反感を買い、切り取られ売り飛ばされてしまう。実行した内の1人のタクシー運転手への密着をはじめ、負の側面も含めたその影響を記録したドキュメンタリー。

 

2016年、『バンクシー・ダス・ニューヨーク』でバンクシーの作品がニューヨークに巻き起こしたムーブメントを初めて目の当たりにした。とりわけ印象に残ったのが街中の作品の前に居座って「バンクシーのアートを見たけりゃ俺に金を払いな」とか言い出す屈強な黒人。自分には、言ったら壁の落書きが人々の行動に与える影響が興味深く見えた。

 

話は逸れるけど、この映画を観る1ヶ月ほど前にも同じような体験をした。金沢旅行の中で現代アートの展示で有名な21世紀美術館に足を運んだ時のこと。インドネシアの45歳の女性の個展だったんだけど、作品を見れど見れど全く意味は分からなかった。2m×2mぐらいのキャンバスに、ある程度色が統一された絵の具が無造作(に見えた)に踊っている作品が大半を占めていた。たまに何らかの形に見えるものがあり、「これ龍じゃない?」とか言いながらぷらぷら鑑賞した。

 

作品自体に対しては始終そんな感じだったんだけど、見ている間「この作品から何かを受け取り、価値を見出し、値段をつけ、買い取り、運び、展示する『人間』がいる」ということが面白くて仕方がなかった。大学生の時授業で岡本太郎の勉強をしたことがあって、今思えばその時も同じ感覚を覚えていたような。

 

という訳で、この映画はそんな自分の興味の器を溢れんばかりに満たしたくれた。謎の男の壁の落書きが人々の中の何かを刺激し、行動させる。その渦中に一歩踏み込んでそれぞれの感情、考え、スタンスに迫る。人間と作品の関係性って面白いなあとつくづく思った。この手の作品があったら是非教えて欲しい。

 

 

4位:アベンジャーズ インフィニティ・ウォー

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4月27日、立川シネマシティ。他2回。

 

最初チャンピオン枠というか特別賞的なとこに入れようかと思ったんだけど、そっちは別の作品にしたので、真っ当にランキングに入れて考えたらまあこの順位になるよねという。

 

サノスを軸に据えた極めて整理された話運びのわかりやすさ、各キャラの見せ場の用意周到さ、アクションシーンのかっこよさ、終わった後の劇場の空気、本当に言うことないっす。ブラックパンサーしかMCU観てない彼女を連れて行ったら「サノス先輩はいい人だ」と楽しめていたのも素晴らしいなと。

 

エンドゲーム、伏して待つ。

 

3位:太陽の塔

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10月7日、新宿シネマカリテ。

 

岡本太郎が大阪に打ち立てたあの塔は何だったのか、何なのか、何になっていくのか?様々な分野の専門家や芸術家のインタビュー映像を繋げたドキュメンタリー。

 

バンクシーを盗んだ男』と、(一見意味不明な)芸術に解釈と価値を与え動かされる人々のドキュメンタリーという共通点はあるんだけど、こっちは行動より解釈にフォーカスしている感じ。

 

太郎が万博に携わった経緯や彼の生い立ちは導入で一応やるんだけど、何せ面白かったのは語り部たちがそれぞれの立場から太陽の塔のルーツや込められた意味、類似する文化や学者の思想、この先あの塔が果たす役割を、熱に浮かされたように好き勝手語りまくるところ。

 

この人たちの様子を見てるだけであの塔にどれだけのパワーがあるのか伺える。これはナレーションを排してインタビュー映像のみを繋げたのが功奏してる。内容は勿論なんだけど、語ってる人の熱が伝わってくるのは映画ならではだと思う。

 

映画ならではと言えばドキュメンタリーにも関わらず要所要所で差し込まれるドラマパートもすごく良かった。下手すると寒い感じになりかねない気もするんだけど、現人類が滅んだ後も居続ける太陽の塔と対峙する少女というイメージが、このインタビューのパッチワークをただの資料ではなく、魂の入った映画に昇華するための芯を通しているように感じた。

 

1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」名の下でそれぞれの国がその国の文化や技術の到達点を展示する催しだった。それらパビリオンは跡形もなくなって、2004年の愛知万博から14年経った今も、そして恐らく2025年の大阪万博が終わっても尚そこに立ち続けて、その時の人は何かを受け取るだろうなって確信がこっちにまで伝播してきた。

 

(母校の教授が実質主演みたいに出番が多かったのに驚きました。)

 

 

2位:パシフィック・リム アップライジン

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4月21日、TOHOシネマズ新宿。

 

褒めている人をあまり見たことがない。でも俺はめっちゃ好きなんすよ。普通に考えてアベンジャーズIWよりこれが上ってことはないよ。ないけどなんかもう可愛いのよ。出来悪いけど一生懸命作った感じがどうしても好き。

 

ヒロインの子が主人公と土壇場でドリフトして前作でジプシー・デンジャーがやってた包拳礼みたいなポーズやるじゃん?やった瞬間ドリフト上手くいかなくなってぶっ倒れるじゃん?僕はここがスティーブン・S・デナイトの謙虚さの表れだと思ってて。「俺はデルトロみたいに上手くできないけど彼のことはリスペクトしてるから頑張るよ!!!」ってメッセージに見えちゃってさ。この作品のキュートさを象徴するシーンだと思ってる。

 

でもフラットに見ても前作より良いところは沢山ある。まず全編通して昼間の戦いであること。まあ絵面は夜のがかっこよく見えるんだけど、何が起こってるかわかりやすいし、イェーガー(ロボ)のディティールもよく見える。戦闘シーンの見せ方も申し分なく、少なくとも何やってるかわかんないようなところはなかった(上手いかどうかは知らん)。

 

あとイェーガーvsイェーガー戦をガッツリやってくれたところ。1でvs怪獣だったら2はvsイェーガー同士の戦い見たいもんやっぱ(平成ライダーファン並の感想)。オブシディアン・フューリー(黒いロボ)が初登場するとこで海から鳥が飛んでくるとこめっっっっちゃ好き。巨大なヤツが来る!ってワクワク感をくすぐる予兆の描写が上手だとそれだけで満足できてしまう。巨大感演出も冒頭のスクラッパー(可愛い)とノーベンバー・エイジャックスのとことか良かったですし。

 

そして何より全体的に明るいところが好きだ。ジョン・ボイエガをキャスティングして昼間のシーンばっかりなあたり意図的なんだろうけど、人類が窮地に陥っていて皆割と余裕がなかった前作とは真逆のアッパーなテンションが好ましい。まあ観た時期も良かったのかな。

 

特にスクラッパー再登場(アニメみたいで最高)以降はド根性マシマシのハチャメチャ展開で笑ってしまうレベルなんだけど、「いや、でも元々ロボットアニメとかこんな感じだったよな」とむしろ肩の力を抜かれた上でライドできた。決着のつけ方は本当に「おい最後はマジンガーZでキメようぜウェェェエイwwwww」という身体は大人頭脳は子どもな作り手たちの笑い声が聞こえてくるようで、そのままゲタゲタ笑いながら富士山で雪合戦やって終わりという清々しいラストで大変元気になって映画館を出たのだった。ちなみに去年の元気映画枠は『ジャスティス・リーグ』。2019年もこういう映画に出会いたいぜ。

 

まあ敢えて言うなら前作キャラの扱いは叩かれてもしゃーないかなとは思う。僕は前作も大好きだけど、逆にこれを観て「そもそも前作も大した映画じゃなかったし、少なくともあれやデルトロを神格化してこれを叩くようなことは絶対あり得ないな」と思った。

 

 

1位:きみの鳥はうたえる

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9月28日、新宿武蔵野館

 

観た直後のツイートが端的に感じを言い表しているような気がするので貼り付け。

 

映画を観た後電車に乗ってスマホ見てると最寄り駅につくまでに覚めて現実に戻っちゃう感覚があるんだけど、この余韻から抜け出したくないな…と久しぶりに思った映画。これを味わいたくて映画館に行っている節がある。こういう時は気が済むまで線路沿い歩いて帰るんだけど、劇中の彼らの真似して缶のハイボール飲みながらフラフラ終電まで歩いた。ちなみに去年のベスト『あゝ、荒野』の時も同じような感慨に襲われて、歩いた。

 

具体的に何がよかったかと考えると意外と難しい。すごい不思議なんだけど。でも自分の日常と大差ないことやってたり、同じようなことを感じてる人たちが本当に美しく見えたからっていうのはある。大げさに言えば人生が良く思えるようになった。上のツイートの通り、その点で日本映画は日本人の僕には絶対的に分がある。三宅唱監督の映画は初めて観たけど本当に優しい人な気がした。

 

 

特別賞:ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

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11月14日、TOHOシネマズ上野にて。

会員デーで1100円で観れたのに6ポイント無料鑑賞使っちゃったの一生悔やむな。

 

もうこれは順位がつけられなくなってしまったので特別賞。

 

僕は賛否両論(否かなり多め)なハイエボ1も去年の4位に据えるぐらい好きなんだけど、一本の映画としてはまあ叩かれても仕方ないよなとは思ってた。

 

しかしこの2は遂に一本の映画としてもエウレカセブンの新作としても、良いものができたてよかったねえと素直に祝いたくなるような出来だった。相変わらず観客どこらかファンすら置いてけぼりなところもなくはなかったけど、今回は観客の手を引いて無理やり遠くまで連れて行くようなパワーがあったのは間違いない。

 

後半の展開は「なにこれ?笑」と半笑いで眺めていたんだけど、不思議と嫌な気はしなかった。ガリバー可愛いんじゃ。そしてラストでまんまとやられた。お前とも長い付き合いだけど貫禄がでてきたよね。

 

そもそも僕はテレビ版は好きだけど大して良くできたアニメではなかったと思ってるので、このハイエボシリーズは既にテレビ版を凌ぐ出来になっていて全肯定したいレベルになってる。ハイエボ3も2の路線で駆け抜けて欲しいなあ。超期待。

 

 

というわけで2018年のベスト10+特別賞でした。ドキュメンタリー映画の面白さに目を開かされた年だったので4本ランクインという結果に。

 

次点は以下。

来る、ギャングース日日是好日愛しのアイリーンちはやふる 結び、スリービルボードブラックパンサーいぬやしき君の名前で僕を呼んで、斬、

(ちなみにアベンジャーズ IWをランキングに入れる前は『斬、』を10位に据えてた。)

 

ワースト。2018年は本当に「こりゃダメだ。クソだ。悪口言わなきゃ気が済まねえ。」みたいのはなかったので特にないんだけど…本当に敢えて言うなら『羊の木』かな。主人公が終始何もせずに神の鉄槌でジエンドはない。バンドシーンとか会話シーンもダラダラして良い印象がない。悪い映画ではないけど全く刺さらなかった。沢村一輝がよかった。思えば2017年はワースト枠が豊作だったな。

 

あと、極個人的な不満で、今年は特撮映画が不作だった。『劇場版 ウルトラマンジード』『劇場版 仮面ライダーアマゾンズ 最後ノ審判』『仮面ライダービルド Be The One』『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFOREVER』の4本。平成ライダーアニバーサリーのジオウは面白いし、来年は新元号ライダーもスタートするしとにかく今後に期待ですね。

 

旧作ベストは『シング・ストリート』。噂に違わぬ傑作でした。ラストシーンの一見壁に思える大きな存在もやっぱり君を導いてくれるよってメッセージに感動した。そしてラストの彼の表情と監督からのメッセージで好きにならない訳がない。全ての兄弟たちへ。

 

というわけで皆さん2019年も良い映画ライフを送りましょう。また!