静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画103: 『わたしたち』

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監督:ユン・ガウン

出演:チェ・スイン、ソン・ヘイン、イ・ソヨン、カン・ミンジュン

 

ノーマークだったけど僕モテメルマガで知って、初めてMOVIX昭島に行った。ロビーの無重力マッサージチェアが気になった。

 

クラスの人付き合いが上手くいってないソンちゃんは夏休み前最後の放課後に秋からクラスに転校してくるジアちゃんに出会う。夏休みを通して二人は仲良くなるが、新学期が始まるとジアちゃんの様子があれ、なんかおかしい…。

 

 なんかツイッターでまわってきた漫画でさ、人類が狩猟採集生活をしてた時、男は外に狩りにや採集に出かけるから話し合って協力しなきゃいけなくて、かたや女性は洞穴の中で作業しながらお喋りするから話を通して周りに同調するようになった、みたいのが流れてきたんですよ。本当かどうかわからないけど納得度は高いよなと思って。

 

小学生の時、女子は派閥や一匹狼に分かれてケンカばかりしていたイメージ。小6の時なんかの時間に男子は廊下に放り出されて女子は教室の中でケンカの話し合いを先生を議長にしてやってたのははっきり覚えてる。

 

性差の話をしたいわけじゃないんだけど、まあ女の子はそういうのあるよなって子供ながら思ってた。今でも職場のパートのおばちゃん見てて思うしな。

 

この映画の上手くて残酷なところは二人を夏休み直前に出会わせて仲良くさせてからクラスという箱の中に放り込むところですよ。

 

もうちょっと大きくなってそこそこ人付き合いがうまくなれば、この映画は元友映画になってたかもしれないのよね。別にジアちゃんじゃなくてもいいし、疎遠になっても別のコミュニティでやればいいやって。でも小学生だからクラスは世界のほぼ全部なんだよ。(ちなみに英題は「The world of us」)。一人の友達でも分母が少ないから諦めるには重すぎる関係なんだよな。

 

ただそんな打算的な理由は大人の僕が考えたクソなアレな訳で 、経験値が少なくて不器用なソンちゃんにはジアちゃんとのそれまで人生で経験したことないようなキラッキラの思い出があるからその繋がりを保とうとする。まずそれが「あぁ…」ってなるわけです。

 

さらに、この映画のいいとこはここで終わんないこと。並のフィクションならソンちゃんの思いにジアちゃんが振り向いたとこで終わると思う。ただ、ここにボラちゃんというクラスのカースト上位の女の子が介入してくる。ソンちゃんも人間だから揺らぐ。この子がある種キーマンで、単なるクラスの人間関係の話を見たことない地平に導いてる。またこの子にも色々あるんだわ。一筋縄でいかないという形容がぴったりハマる。

 

そしてそして、どん詰まりの状況で思いがけない人物がMVP級の名言をぶちかましてくる。複雑に見えた人間関係の問題を、パラっと解きほぐす。本当にシンプルなことだったんだと。ここは本当にグッとくる。本人に一切そういう心づもりがないのもすごい。そうだよ、そうしなきゃいつまでもできないもんな。

 

そして映画は最高のラストを迎える。それは是非観て確かめて欲しい。今年のベストラストシーンだろうな。以下は観た人向け!おススメ!

 

 

 

※ここから冒頭とラストシーンのネタバレします※

 

  

 

僕はあのドッジボールの枠の中が彼女らが今まで見ていた世界(=クラス)だと思ってます。冒頭、一人で早々とそこから弾かれていたソンちゃん。「あぁ、この子はクラスから浮いてるんだな」とわからせるための状況説明のシーン(長回しの1カット)のように思えた。

 

紆余曲折を経たラスト、冒頭と同じシチュエーションなのに横を見れば、あの子がいる。

 

(冒頭とラストで同じことをやって意味合いが違うのは個人的なツボと繰り返し言っておきたい。おススメ教えてください。いや、事前に知ってたらダメか。)

 

映画的に言えば二人が同じカットに収まっている。冒頭で窮屈にソンの顔だけ捉えていたカットが、二人の顔を捉えることで何倍にも広がっている。映画のカットはその世界を切り取ったもの。それが一人でなく、二人の顔を同時に映すことで確かに広がっている。「The world of us」が広がっている。なんと映画的、感動的なラストだろう。唸った。

 

この二人がこの後どうなるかはわからない。仲良しのまま死ぬまで親友かもしれないし、2年後には別々の中学に進学して疎遠になるかもしれない。別になんでもいいと思う。お互いの存在が記憶に刻まれているだろうから。敢えていうなら、願わくば二人一緒にボラちゃんとも仲良くやってくれよというところかな。

 

全然どうでもいいけどこの二人がこのまま小中高と付き合い続けた結果『スウィート17モンスター』の親友コンビみたいなことになったらめっちゃ面白いよね。『わたしたち』のアフターストーリーとして観たらもっと笑える(台無し)かもね。