静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー039: 『クリーピー 偽りの隣人』

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監督:黒沢清

出演:西島秀俊香川照之竹内結子藤野涼子東出昌大

 


『クリーピー 偽りの隣人』予告編

 

creepy【形容動詞】「ぞっとするさま。ぞくぞくするさま。」

 

揺れるカーテン、風に吹かれる植物、画面の奥で蠢く学生たち。画面が常にざわざわしてました。画面に自分の心がシンクロするかのように、僕はそわそわそわそわしていました。一瞬も落ち着けない。登場人物に感じる微妙な違和感もそれを助長していたのだと思います。絶対的に「おかしい」とは思えないレベルの絶妙なズレ。例えば引越しの挨拶でそれを持っていくのかとか、夏にそれ放置したらダメなのでは…とか。なんだろう、「ん…?」って引っかかるものはあるんだけど、何シーンかすると忘れちゃうレベルの微細なフックが散りばめられているというか。

 

ていうのも僕は上に貼った予告編に騙されて観てたんですよ。騙されたと言ったら被害者面で聞こえは良いけど、予告編で「こういう映画です」と提示されたのを鵜呑みにしたまま、その枠に当てはめて映画を観てしまっていた。つまり、「普通で幸せな夫婦vs奇怪な隣人」というフォーマットの話だと思い込んでいたんですけど。全くそんな浅い図式の作品ではなかったんですね。もう猛省しております。

 

このことに気付けたのはネットや各種媒体で他の人の観方を色々見たからなんですけど。特に僕モテメルマガの大川編集長の指摘の数々はゾゾゾのゾでした。「このシーンや台詞はこういうことだったのか」と発見や気付きがあって、やっぱり色んな人の観方を摂取するのは楽しいなと改めて思いました。過去最大級に他の人の批評や感想に影響された映画かも知れない。やっぱ映画を映画館の中だけで消費するのはやっぱ勿体無いよ。勧めてくれた友人と話したのも楽しかった。香川照之の「いいと思います」のモノマネとかしてさ。

 

観てるときの純粋な感想に戻ると、観る前尺を確認せずに観に行ったんですけど、僕の体感上映時間は3時間30分ぐらいでした。劇場を出て携帯を観て、2時間ちょいしか経ってなくて愕然としたのが忘れられません。とにかく長く感じた。いつ終わるんだどころか早く終わってくれとすら思っている自分がいました。「まだまだ行くぞ~」じゃねえよ!!みたいな。もう本当に観た後は良い意味で最悪でした。「最悪ゥー!!!」みたいな。突き抜けた後味の悪さって良い。

 

(ちなみにびっくりするシーンでいちいち大きいリアクションをとっていた隣のババアがエンドロールに入った瞬間「え、これで終わり…!?」、ロール後に「(連れのおばちゃんに)つまんなかったわねえ」って言ったのは悪い意味で最悪でした。やっぱ映画の日に映画とか観に行くもんじゃねえな!)

 

『CURE』も観てみたんですけど、これもものすごかった。僕はむしろCUREの方が好きかも。やっぱり黒沢監督は何の変哲もない景色を恐ろしいものに変える力がすごい。これが演出力ってやつなんでしょうけど。クリーピーが照明で画面を支配しているとしたら、CUREは完全に音の映画。環境音ですら怖い。洗濯機の音が怖い。萩原聖人が怖い!!!役所広司が(略

 

『CURE』に出会えたことなど、色々込み込みで観て良かったなあと思います。