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静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー42.5: 『シン・ゴジラ』 2回目の感想。(ネタバレ有)

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総監督、脚本:庵野秀明
監督、特技監督:樋口真嗣
准監督、特技統括:尾上克郎
音楽:鷺巣詩郎
出演:長谷川博己竹野内豊石原さとみ高良健吾大杉漣柄本明國村隼余貴美子市川実日子平泉成松尾諭、渡辺哲、中村育二、矢島健一高橋一生津田寛治塚本晋也光石研モロ師岡犬童一心嶋田久作ピエール瀧野間口徹三浦貴大神尾佑、黒田大輔、古田新太松尾スズキ小出恵介、諏訪太郎、鶴見辰吾柳英里紗手塚とおる前田敦子、浜田晃、吉田ウーロン太、橋本じゅん藤木孝小林隆原一男緒方明片桐はいりKREVA、入江悠、川瀬陽太、マフィア梶田、斎藤工石垣佑磨野村萬斎

 

 

私今回、本作で(個人的に)満を侍して立川シネマシティの極上爆音上映デビューして参りました。6000万のラインアレイスピーカーが導入されたことで話題になったaスタジオH列。音っていうものが空気の振動であるっていうことを身体で思い出させるような体験でした。戦車の駆動音、ゴジラの足音、ビルの崩落音でいちいち全身が小刻みに震える感覚が気持ち良い。肩こりも取れました。オススメです。

 

というわけで『シン・ゴジラ』2回目の感想です。ネタバレしますから観てない人は読まないで下さい。間違いなく何も知らずに観た方が面白いので。ネタバレ無し感想は下リンクから。

 

qml.hatenablog.com

 

大意は上のネタバレ無感想の通りです。ありがとう、庵野秀明。ありがとう、日本人。もうエヴァとか気にしなくていいから。そんな感じです。最高です。とっ散らかるので語りたいことを箇条書きでつらつらやってきます。

 

ゴジラの咆哮

前回のエントリーで僕が予告編を見て懸念していたゴジラの鳴き声について。結果的に今回の鳴き声にはさしたる感動はなかったです。でも観てる時は気にならなかった。考えてみればそれはそのはず、第四形態が初めて鳴き声をあげるのは米軍のなんとか貫通爆弾を背中に刺された時でした。反射的に上を向いていたし、苦痛で思わず声があがってしまったという風に見えます。一方のギャレゴジさんは初登場時大見得を切ってタメにタメて自分のシマ(地球)を荒らす無法者に向かって怒りの大絶叫。

 

この咆哮の演出からはこの二作のゴジラに対するスタンスの違いが見てとれて面白い。本作ではあくまでゴジラの生物としての反射行動としての叫びを表現したかったのかもしれません。対してギャレゴジは、僕はゴジラシリーズをそんなに観ている訳ではないのであまりわかりませんけど、第2作『ゴジラの逆襲』以降の怪獣プロレスヒーローとしての面を推したかったのだろうと今では思ってます。話はズレますけどプロポーションもレスラーみたいにマッチョだしね。シン・ゴジラの腕が可動せず上を向いているのは究極生物故に戦う相手がおらず、捕食も必要ないから腕を使わないというのも、スタンスの違いが出ていて面白い。

 

んーでも、これはこのあとの苦言にも繋がるんですけど、やっぱり鳴き声は新たに作って欲しかったかなあ。

 

伊福部昭音楽の流用

もう人生ベスト級に好きな本作で一番好きじゃないのはぶっちゃけここ。ヤシオリ作戦の開始と同時に流れる勇ましいテーマはちょっと作品のトーンに合ってないような気もして……。あとヤシオリ作戦時の爆発音とか、前述の鳴き声とかもいちいち「あ、そこは使い回しなんだ」というメタなノイズが入ってしまう。劇中のリアリティは段々薄れていくとはいえさすがに気になった。僕は伊福部音楽にさして思い入れもないからテンションも上がらないし。というか僕は本作の鷺巣詩郎のスコアが本当に大好きなんですよ。だからかな。だからだな。そっち使ってよって思っちゃって。でもあのヤシオリ作戦の「今までゴジラに蹂躙されるだけだったビルや電車が一矢報いる!!!」展開にはあのマーチ以上はなかったのかもしれんなあ。

庵野秀明は脚本執筆時から伊福部音楽を使用することを決めていたぐらいだから、まあベストな選択だったのかもしれませんけど僕はちょっとここはノレなかった。かな。

 

石原さとみと演者たち

政治家や官僚を取材した結果を反映しての台詞の早口さが、テロップと合わせて情報量の多さ(これが途轍もなく気持ちいい)、長尺化の抑制、演技の均質化(=全体の雰囲気の統一感の演出=リアルさ)、中盤に出てきて一人だけめっちゃゆっくり喋る平泉成の大物感演出(個人的に『椿三十郎』のラストに出てくる城代家老の睦田さんを思い出した)など様々な恩恵を与えていた本作。樋口真嗣が監督と聞いて絶望していたけど、その辺は庵野秀明の尽力があったらしく役者陣は皆良かった。特に長谷川博己は『ラブ&ピース』『進撃の巨人』を続けて観てたせいで本当にダメな人だと思っていたので驚いた。すみませんでした。

 

個人的MVPは高橋一生。IQ高すぎて我々パンピーと会話できなそうな感じが目線の動かし方とかで表現できてて、でも立川に再集合した時の表情とか…!!!塚本晋也市川実日子も大好き。ドラマ及び映画『SP 警視庁警備部警護課第四係』の面子(松尾諭野間口徹神尾佑)が活躍しててとても嬉しかった。特に「できるデブ」として美味しい役回りだった与党幹事長候補松尾諭。「SPでは真木よう子に引っぱたかれるだけのデブだったのに」と感動を禁じ得なかった。電話口で民間企業に頭をさげる吉田ウーロン太も好き。防災担当特命担当大臣のくせに「想定外」って4回言う中村育二もいかにもって感じが出てた。総務大臣を演じる浜田晃さんは本当に政治家みたいなルックと喋り方だった。國村隼の「仕事ですから」は多分1秒にも満たないが今年ベストカット。

 

「大統領が決めるわ」というのは石原さとみ演じるカヨコの台詞だけど、日本政府では大杉漣柄本明以下大臣たちに決断を迫られまくってて、トップダウンボトムアップが対照的で面白かった。柄本明官房長官大杉漣総理大臣の普段の公務の様子が見てみたい。

 

メインストリームから自主映画、小規模映画でよく見る人たち(黒田大輔、川瀬陽太)までが揃っていて、キャスティングにおいても日本の総力戦の様相を呈していたのが良かった。あと、エンドロールの協力している企業や人の多さもそんな感じが出てて感動した。

 

石原さとみの話するの忘れてた。結果として僕はギリギリセーフ…かなと思っている。まず彼女の登場のタイミングの話をしたい。初登場は巨災対が設置された直後。巨災対が設置されてからは例のエヴァのBGMや伊福部音楽も相まって少しずつフィクション度が上がっていくイメージだったので、ここに本作でゴジラの次にフィクショナルな存在である彼女が登場するのはあり。第一形態発見~第三形態退場までの「現実にゴジラが現れたら」のシミュレーションパートで出てきてたらぶち壊しどころではない。

 

ただ、被爆三世(ですよね?)がアメリカ人とのハーフで大統領特使やってて、日本にまた原爆落ちるのを阻止するために大統領出世コース捨てるってだけ書いたら結構熱いキャラ設定な気はするんだけど、そこはあんまり伝わってこなかった気はするかも…。ヤシオリ作戦で彼女がどう頑張ったかぐらいは描いて良かったかもしれない。よくわからなかったので。そういうのもあってあのルックの目立ちぶりに対するキャラの薄さは一概に石原さとみの演技のせいとは言えないのではないかなあと思う。

 

進撃があまりに酷すぎた(=朴璐美演じるアニメ版ハンジのモノマネに終始していた)というのもあって演技自体はあまり責める気にはならない。良くはなかったけど、日本人キャラの中に一人だけ放り込まれたにしては頑張ったんじゃないですかね。責める気にはならん。

 

形態変化の衝撃

前回、初鑑賞前に「ここまでネタバレになるような情報を漏らさずいてくれてありがとう」的なことを書いたけど、蒲田に上陸した第二形態を知らずに観られたのは本当に良かったと思っている。ありがとう東宝。ちなみにTwitterの一部で第二形態が「蒲田くん」、第三形態が「品川くん」と呼ばれていて個人的にツボだったので僕もこれに倣う。

 

初見時は上陸寸前の幅の狭い川をボートを押し流しながら潜行しているような感じだったのを見て「え?これ尻尾の先?ゴジラさんなんで内陸に向かってバックしてるの??」ととても混乱した。予告1で使われた「Persection of the Masses」に合わせて蒲田くんが初めて全貌を表した時は脳みそが混乱してついて行けなかった。


01. Persecution of the Masses - Shin Godzilla OST.

 

大破壊を目から受け入れると同時に「この怪獣はアンギラスアンギラス的な噛ませ怪獣??それともゴジラの息子的な??」と必死に考えを巡らせていた。ここから品川くんが退場するまではファーストカットの途中(開始10秒ぐらい)から、あまりの展開の速さと描写の迫真ぶりに物理的な意味で開いた口が塞がらなかった。同時に上の劇伴と状況のシンクロがすごすぎて本当に泣きそうになった。このシークエンス観たさに3回目も検討している。

 

どっかの評論か感想で読んだことを流用させてもらうなら、この形態変化のアイディアは2016年の僕らに1954年、日本人が大戸島の山越しにゴジラに初めて遭遇したあの日の感覚を味あわせるために採用したのかもしれない。全くその通りだと思う。初代ゴジラに敬意を払いつつ、当時の体験を蘇らせる脱構築の手腕に脱帽です。本当に驚いたもん。

 

ヤシオリ作戦

初見時の印象は、地味。加えて「ちょっとムリがあるのでは…」とまで思った。

皆大好き無人在来線爆弾やビルの逆襲でも自衛隊の攻撃で無傷だったゴジラが倒れるか、とか、そんなに都合よく口開けてくれるかなとか、前述の伊福部マーチが足を引っ張って(往年のファンの皆さんすみません)あまりアガらなかった。正直。

ただ、劇中で「歯並びが悪いところに言及している(エクスキューズがある)し、充電中のところを無理やり叩き起こした上に無人爆撃機でエネルギーを消耗させていることを考えると、2回目はそういう都合の良さは気にならなくなった。

 

で、ゴジラを撃退も殺傷もせず東京のど真ん中で凍らせて、これからも付き合っていくしかないっていうのは、明らかに現実の日本における地震のことを示唆している。排除でなく共存、というのも日本らしいと言えばそうなのかもしれない。科学技術館の手すりによっかかる長谷川博己と背景の凍結されたゴジラの構図がハマってて良い。

 

ラストシーンに関してはまあ群体としての進化が目前だったという風に見るのが妥当だと思う。ただ初見時は放射能地震で亡くなった人間を表しているのかなあなどと考えてた。

 

「シン」の意味

タイトルのシンの意味は。神、新、罪、真あたりはまあよく言われてるので省略。漢字辞典で「しん」をバーっと見て目に付いたのは「呻」。訓読みは「うめく」。初めての鳴き声が呻きに近いものだったのを考えるとしっくりくる。地震のことを踏まえているという意味では「震」も勿論当たるだろうし。あと「請」とか?官僚や政治家たちが民間企業や外国の人に協力を請う姿が印象的だった。力を尽くすの「尽」でもいい。ゴジラも日本も前に進むし上に伸びるし、「進」でも「伸」でもいいや。日本人がチームとしてゴジラに当たる様に感動した身として一番しっくり来たのは「請」かも。

 

僕からはこんな感じです。シリーズ動員が1億人突破したり、初日2日目の興行収入がギャレゴジ上回ったとか、ランキング1位とったとか嬉しいニュースは続いてますね。公開から1週間経って否定的な意見も少しずつ目立つようになってきてて、感想を読む楽しみも益々増してきました。

 

まだまだ多くの人(というか日本人)に届くといいなあ届くと思っています。では。