静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画80.5:『22年目の告白 私が殺人犯です』 2回目/ネタバレ有編

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監督: 入江悠

出演:藤原竜也伊藤英明仲村トオル夏帆竜星涼早乙女太一野村周平石橋杏奈岩松了平田満宇野祥平黒田大輔、川瀬陽太、板橋駿谷、岩城滉一

 

 

※26日目のネタバレ 私がブログサボリ魔です ※

(ネタバレするので観てない人は今すぐ観にいって!)

ネタバレなしの感想はこち

http://qml.hatenablog.com/entry/2017/06/12/130018

 

 

 

結局計3回映画館で観てしまった。わかっちゃいたけど2回目は冒頭から全てが違って見えた。

 

特に藤原竜也演じる曽根崎と伊藤英明演じる牧村の表情。

僕がエキストラで参加した出版記念サイン会のイベント、僕は最前列の向かって一番左で記者の役をやっていた。その時から曽根崎が登壇し群衆に向かって手を挙げた時の若干戸惑いがまじったような表情が気になっていたのだけど、あれはもしかしたら「多少カリスマ性を持った殺人犯に踊らされる世間のうかつさを初めて生で目の当たりにした時の困惑や残念さが滲んだ表情」だったのかもしれないとか。牧村刑事が本屋のバックヤードで夏帆と話すシーン、父のことについて3ページしか触れてないことに激怒する夏帆を見るときの表情は、自分が書いたからこその申し訳なさに由来するものだったのかとか。加えるなら3ページしか書かなかったのは辛くて書けなかったのかもしれないとか。

 

元になったチョン・ビョンギル監督の『殺人の告白』も観てみた。TSUTAYA行ってサスペンス/ミステリーの棚になくて、諦めてアクションの棚流し見してたらあってびっくり。いざ観てみると本当に(結構荒唐無稽な)アクション映画だった。恋人を殺された若者が顔を変えて捜査情報を知る刑事と組み暴露本を出版、連続殺人の真犯人をおびき出すという骨子は全く同じ。だが被害者遺族が5人程で組んで全力で曽根崎(日本名)の命を狙いに来たり拉致したりするところが違う。夏帆がボウガンで曽根崎の肩をブチ抜いたりする。

 

恐らく日本でやったらギャグだろう。だからリメイク元ではアクションに費やしていた尺をこの日本版では「犯人の動機」を描くことに充てていた(リメイク元ではほぼ描かれてない)。

 

仙堂がフリーの戦場ジャーナリストだった頃に目の前で見たトラウマを他の人間で再現することで、自分以外に同じ境遇の人がこの世にいるという事実を作り出して精神の安定を図っていたというのがそれ。まずプロデューサーからキャスターが真犯人というアイデアが出たそうだけど、そんな立場の人が連続殺人を犯す動機が納得できる(前も書いたけどパンフの犯罪心理監修の人の文章がいい)。「なぜやったのか」というのは「俺はこうこうこういうことがあってこういう思いだったんだ〜ッ」とお涙頂戴的に利用されがちだけど、そこはあくまでドライに徹している。尚且つ最後にキッチリ罰は与えるところが好き。それにしても仲村トオルの独白はゾッとする。「闇が深い」という形容がピッタリくる。

 

余談だけどたまたま映画秘宝のオールタイムベスト10をパラパラ読んでいたら入江監督がベストに『フォックスキャッチャー』を入れていた。アメリカの御曹司がレスリングの金メダリストを殺害した実話をベースにした映画。脚本段階で影響を受けたのか、作ってる時ににたまたまタイムリーなタイミングで出会ったのかわからないけど、恐らく何かしら関係あると思う。僕個人も生涯ベスト級に好きな作品なので、22年目の告白の犯人像に惹かれた人には是非オススメしたい。

 

とにかくリメイク元の一番面白い部分を抜き出した上での日本独自の肉付けと補強が上手くいっているんじゃないかなあと思う。正直そこまで期待してたわけじゃなかったので驚くぐらい面白かった。リメイク元観ないで行ったってのもあるけど。大ヒットもしてめでたい。監督の次回作『ビジランテ』(12月公開)にも期待(ただこっちはエンタメ!って感じじゃなさそうだけど)。