静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画124:『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ※途中からネタバレ有※

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アベンジャーズ/エンドゲーム』

監督:アンソニー・ルッソジョー・ルッソ

出演:ロバート・ダウニー・Jrクリス・エヴァンスクリス・ヘムズワースマーク・ラファロスカーレット・ヨハンソンジェレミー・レナードン・チードルポール・ラッドブリー・ラーソン、カレン・ギラン、ダナイ・グリラブラッドリー・クーパー

 

 

※途中までネタバレなし、ネタバレゾーンに入る前に言います※

 

《インフィニティ・ウォーの感想》

アベンジャーズとしての前作、インフィニティ・ウォーの感想をこのブログに書いていなかったので、ここで簡単に。

 

あれは単体でばっちり完結した傑作だと思ってます。アベンジャーズと銘打たれてはいますが、実質的な主役はサノスです。なぜなら彼が自分なりのやり方で宇宙を救済しようと自ら行動し、それを成し遂げる話だからです。問答無用で他者の命を奪うというやり方は歪なものですが、時には愛する者の喪失に涙しながら、信念を持って進む姿は見応えのあるものだったし、ラストシーンに不思議な感慨を覚えたのは事実です。

 

(結果的な)犯罪者の姿を描いた映画でも、その人の止むに止まれぬ事情にクローズアップしたものや、確固たる思想の下で実行する姿には不思議と心打たれる時があります。何をするかより、何故そこに至り、どう実行するか。それが今の自分の思想や姿と遠ければ遠い程魅力的です。サノスには少なからずそういうところがあった。

 

もちろんそれを全力で阻止しようとするアベンジャーズとのぶつかり合いも見所しかありません。アクションシーンはそれぞれの個性を生かしつつ見易いし、シナリオは本当に整理されていて、クロスオーバーしたキャラ同士の掛け合いも気が利きすぎている。1シーン1カット足りとも無駄がない。驚くべき大胆さと繊細な心遣いに満ちた、心底すごい作品だと思いました。

 

ここまで海外コメンテーターの翻訳のような優しい口調で理性的に感想を述べましたが、最初の鑑賞直後のテンションは「いやいやいや(苦笑)……いゃあ………(溜息)……」みたいな感じでした。

 

「残った人達で頑張る」ということしか分からない予告でひたすら期待を煽り続けたエンドゲーム。サノスとまた戦うにしても、あいつを倒して皆が戻ってくるでもなし。一旦何をどう頑張るのか?期待以上に疑問が尽きない公開前でした。

 

 

《エンドゲームの感想(ネタバレなし)》

作り手側が自分たちの作ってるものとその原作が本当に好きで、それが好きなお前らも愛してるぜ!!ここまで付き合ってくれてありがとな!っていうビーム?みたいなものを全身で浴びまくってこんな感じ↓でした。

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イデが。無限力が発動してた。

 

観終わったあとはひたすらぼーっとしてましたね。シネマシティの椅子で30分ぐらい。その後2時間ぐらい家に向かって歩きました。もう1本別の映画行くつもりだったんですけど無理でした。良い映画に浸ったあとは何もしたくなくなります。

 

スタン・リーがこの作品を観れずに亡くなったと思うと、訃報を聞いた時より切なくなってきました。改めてありがとうと言いたい。あなたとその作品のおかげで僕は今こんな思いができている。

 

MCUが積み上げてきた全てを、1本の作品の中でフル活用する豪腕。今迄は僕ら観客が自分の中で今までのメモリーを反芻して味わいが増してたんだけど、今回はもうそういう次元ではない。観客が追ってきた映像そのものが…これ以上言えない。

 

僕はウィンター・ソルジャーを劇場スルーしてシビル・ウォーでどハマりしてからほぼ全作マラソンした生粋の愚か者ですが、途中参加でも追いかけてきて本当に良かったな。小学校4年生ぐらいで転校してきたけど卒業式でドバドバ泣いた(?)

 

じゃあネタバレ有パートいきますよ。

観てない人は読まないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《エンドゲーム感想 ※ネタバレ有り※》

 

とっ散らかったありのままの感想。

 

まあ泣いた。ちょっと嗚咽が漏れたのは『クリード チャンプを継ぐ男』以来かもしれない。大の大人がヒーロー映画でウッ、グフッなどと情けない声を漏らして映画館で泣いた。サム・ウィルソンのかすれた無線が聞こえてきた瞬間涙腺が決壊した。アッセンブルで画面が見えなくなった。次は我慢してちゃんと見る。

 

この映画のベストカット。

キャップが画面左側に立ち、右側からサノスの大軍勢がやってくる超ロングのカット。絶対当初のイメージビジュアルからこれがあって、ここに向けてやってきたんだろう。絶望的な状況だけど、間違いなくMCU史上最も美しい画。本当に絵画みたいだった。万が一印象に残らなかった人がもしいたら刮目して見てくれ。

 

この映画、締めるところはこれ以上ないぐらい締めてくれるけど、ユーモアを忘れていないところも素晴らしい。特に序盤は背景のシリアスさにそぐわないレベルで細かく笑えるところが多く、満員の劇場の反応もすごく良かった。

 

MCU過去作を俯瞰して見た時のセルフツッコミとかもすごく冴えてた。GotGの伝説のタイトルバックとかはたから見ても笑えるのがすごい。

 

何と言っても前半のパートに普通のおじさんことスコット・ラングがいてくれて本当に良かった。キャップとは別種の安心感がすごい。そしてスコットを復活させたネズミがガチで全宇宙の救世主で笑った。あいつはスタン・リーの生まれ変わりだと思う。

 

サノスについて。

サノスの物語はIWで完全に完結させたと作り手も判断したに違いない。というか最初からつもりだったのだろう。IWを経た彼の首があっさりと落とされた瞬間そう確信した。

 

最終的に彼の前に立ちはだかったのは2014年から来た過去のサノスだった。当時の彼は2人の娘を手駒にする単なる悪役に見えた。そこには愛する者や無辜の命を犠牲にする覚悟の重さは見えず、しまいには地球の破壊は楽しませてもらうなどと言い出す始末で、僕にはとても前作と同じサノスに見えなかった。

 

こはちょっと残念だったってのはあるんだよね。IWを経たサノスがあんなにあっけなく殺されるのも、別人のような彼がその代わりを果たすのも。僕の理想としては数多の犠牲の上に目的を成し遂げたあのサノスに対してavengeして欲しくて、そのぶつかり合いに期待してたところもあったというか。あのサノスに対して逆襲することに生まれる意味があった気はしてる。まだ何もまとまってないんですが。何度も言う通りサノスの話は終わってて、今回はアベンジャーズのパートだからっていう割り切りは全然理解できるんだけどね。あのアゴ金玉も好きなキャラだったってだけの話かな。

 

ついでにちょい残念だったところを続けると、ブルース・バナーの扱い。彼に対してハルクやナターシャとの関係性でもって広げた風呂敷の大きさに対して畳みが足りてないんじゃないかとは思った。BIG3の割り食った感が否めず。例えばなんか戦いの中でハルクと対話して共生できるようになるとかさ。あの解決だとハルクの人格が消えたように見えちゃって微妙な気持ちになった。ハルクブルース自体は笑えたけど。荷台に乗ってるのが可愛い。車高が限界を超えて低くなってて笑った。

 

一つ観る前に気になっていたことがあって。それは指パッチンの抽選にサノス自身が含まれていたのかどうかってこと。これは映画を通して知り合った方の言だけど、「農園をやりたい」とその後の話をしてたあたり自分は勘定に入ってない可能性が高い。自分を安置に据えて他人の命をどうこうするなんて、救済という目的意識があってもやっぱヴィランの所業だよな、とは思う。

 

アベンジャーズはそれに対してアッセンブルすることで打ち勝った。さまざまな信条、能力、生い立ちを持った多様な人達が知恵や力を出し合い協力することで、可能性を閉ざし、自由を奪い、人々を分断する存在を打倒した。

 

こうして書くとヒーローものとして真新しいことをやってる訳じゃないのに、極めて現代的なテーマを描いている事が分かる気がする。しかもそこに尋常でない感動が生まれる。アベンジャーズが時代に迎合したのではなく、時代が求めるものがアベンジャーズだったのかもしれない。

 

皆で協力すればなんとかなるっしょ、なんて思うのは甘々だとわかってる。でもそういう希望や綺麗事を思い出させてくれるのが物語の力だっていうのはまだ短い映画人生で実感したことの一つだ。そういう力が本当に詰まってた。少なくともこんな青臭い感想を書かせる力はあったってこと。

 

余談。

あの世界はあの後も大変だと思う。消えなかった人はそのまま5歳加齢したのに消えた人はその時のまま。ピーターとネッドはお互い消えたみたいだからその時の姿で再会できたけど、あの科学クラブの面子で消えなかった人がいたらその人だけ卒業してしまっていることになる。チタウリの残骸からヴァルチャーを生み出すMCUならそういう齟齬すら作劇に利用してきそうな感じはするけど。あとファーフロムホームの舞台は2024年ってこと?とか気になる疑問は尽きない。

 

兎にも角にも、次の10年も見届けたい。一旦の区切りになりますが。とりあえず10年間ありがとう。万感の感謝を。

 

 

 

※ネタバレキャスト※

出演:ジョシュ・ブローリンレティーシャ・ライトエヴァンジェリン・リリーセバスチャン・スタンチャドウィック・ボーズマンミシェル・ファイファーデイヴ・バウティスタ、ジョン・ファブロー、グウィネス・パルトロー、タイ・シンプキンス、真田広之ヘイリー・アトウェルナタリー・ポートマンテッサ・トンプソンティルダ・スウィントンレネ・ルッソベネディクト・ウォンマイケル・ダグラストム・ヒドルストンポール・ベタニークリス・プラットヴィン・ディーゼルサミュエル・L・ジャクソンゾーイ・サルダナアンソニー・マッキー