静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画レビュー048: 『オーバー・フェンス』

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監督:山下敦弘

脚本:高田亮

撮影:近藤龍人

音楽:田中拓人

出演:オダギリジョー蒼井優松田翔太北村有起哉満島真之介、優香、鈴木常吉、塚本晋也(声) 他

 

 

佐藤泰志原作の映画の3本目ということで「函館三部作」の最終章として位置付けられた本作。第二作である『そこのみにて光輝く』は人生ベスト級に好きな作品だ。異なる境遇のどん底者同士が、純粋で不器用な青年を通じてどうしようもなく惹かれあっていく様を痛切に描いていた。撮影、音楽、演出がそれぞれ主張しつつもぴったり調和していたように感じられた。

 

今回『そこのみにて〜』撮影と音楽、脚本のトリオが続投しているけど、特に前二つの主張がかなり抑え気味だったような気がした。僕の感じ方だとはっきり言って物足りなかった。撮影の近藤龍人は『太陽』でもロケーションの魅力を倍増するような遠景の撮影をしていたし、尚更そう思った。

 

エキセントリックな癇癪の起こし方が印象的だった蒼井優演じるヒロインが僕にはダメだった。原作では割に普通に女性だったのを、脚本の高田亮が佐藤泰志の他の作品のヒロインの要素を足してああいう風になったという。愛のない言い方かもしれないが、ただただ不気味で不快だった。演じる蒼井優本人が「マイノリティを肯定するのが映画」みたいなことをどこかで言っていて、それは全くもってその通りだと思うんだけど、ここまで肩入れできないマイノリティは初めてと思っちゃうレベルだった。

 

ただ、どこかで「実家内の離れで暮らしている上に夜中にガラスを割っても鑑賞してこない両親の家庭で育ったというところに孤独を感じた」という感想があって、描かないことで表現できるものがあるんだなと少し納得、反省。

 

オダギリジョーが物腰の柔らかい大人な白岩にすごくハマっているなあと感じた。喧嘩の仲裁したのに自分から率先して「悪かったね」とイキった若いのに謝れるところに素直に感心した。それだけにいきなり焼肉屋でダークモードに入った時は肝が冷えた。大人怖い。その後の北村有起哉宅での笑いの緩急に振り回されつつ楽しんだ。北村有起哉さん良かった。SPで病院テロリストやってたね。

 

松田翔太がやってた兄ちゃんの人の存在を軽視してるが故の人付き合いの巧さの嫌ーーーな感じはやっぱ上手に演じているから出るんだなあと思う。ただ松田翔太がやる程の役立ったのかとも思う。

 

ラストの着地は軽やかで、前二作が重々しかった三部作のシメには良かったのかもしれない。

新作映画レビュー047: 『後妻業の女』

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脚本・監督:鶴橋康夫

撮影:柳島克己

音楽:羽岡佳

出演:大竹しのぶ豊川悦司尾野真千子長谷川京子水川あさみ風間俊介余貴美子ミムラ松尾諭笑福亭鶴光樋井明日香梶原善六平直政森本レオ伊武雅刀泉谷しげる柄本明笑福亭鶴瓶津川雅彦永瀬正敏

 

 

映画を観たのが9/14、原作を読み終わったのが9/22辺りで大分時間が空いてしまった。なんせ雨ばっかりで何もやる気が出なかった。何でも雨のせいにする。

 

加えてと言うべきか微妙だけど、この映画から貰ったエネルギーは、原作を読むことに遣ってしまったようだった。映画は登場人物たちの年齢や立場と関係なく、ただ自分の欲に忠実で活動的な人たちの話で、エネルギッシュな魅力に溢れていた。

 

一方で、原作版は(これは読み手のイマジネーションの問題でもあるかもしれないけど)どことなくささくれ立っていて、重たい。軽快に読み進められる関西弁のやり取りに挟み込まれる、金のみで繋がった者同士心情描写がその表面上のノリと乖離していて、なんだか気が重い。人物の周辺のことも掘り下げられ、「皆色々事情があるのね」と同情してしまう。

 

勿論映画版は原作をベースにしているから、柏木が小夜子を煙たがりつつも利用している点は共通なんだけど、でも映画版の小夜子には大竹しのぶが演じる以上どことない憎めなさがあって、それは豊川悦司演じる柏木さんとて同じなようで、ラストでは満面の笑みでタイタニックの真似事をするという心象風景のようなものが挿入される。屈託の無い笑顔でアホなことをしていて、その前のクライマックスの展開も相まって(良い意味で)呆れつつ笑ってしまった。

 

映画版で印象的なシーンはほとんど映画オリジナルのものというのが驚きだった。冒頭の海辺婚活パーティー、船上での自己紹介、思い出のツイストダンス、ニセブランド屋、すごいベロキス(すごい)、タクシー生着替え、焼肉屋乱闘、そしてクライマックスの展開…。会話と書類、聞き込みが主な原作の骨子をそのままに、生の人間が躍動するシーンを散りばめていて、それが別の魅力に繋がっていくという素敵なアレンジの映画版だったと思う。

 

他の役者の話をすると、MVPは樋井明日香。もう「りさ」という女性の名前を聞くだけでちょっと興奮する。素晴らしい。風間俊介の使いっぱ役を観られたのは『任侠ヘルパー』好き的にはニヤニヤできて良かった。

 

 

 

新作映画レビュー046: 『君の名は。』

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監督・原作・脚本・絵コンテ・編集・撮影:新海誠

出演:神木隆之介上白石萌音長澤まさみ市原悦子、成田凌、悠木碧島崎信長石川界人谷花音

 

 

ほしのこえ』は僕がまだ映画にハマる前、ロボットアニメを頻繁に観ていた時期にふらっと観た記憶がある。思えば唯一観た深海作品であった。『君の名を。』を観ている時に、やっぱり同じ監督の作品なんだなあなんて思ってちょっと懐かしくなった。

 

そういう感慨が湧き上がってきたのは中盤のあるネタばらし以降のことで、そこに至るまでのギャグを交えた軽快な話運びはポンポン笑いが起こっててもれなく楽しかった。前にも何かで書いたけど、劇場で笑うことに不慣れと思われる人たちに知らない不特定多数の人と笑いながら映画を観る楽しさが伝わればいいなあと思う。監督本人も「誰もが楽しめるエンターテインメントを」と言っているし、そういう作品がウケているのは映画館通いの者としては嬉しい。

 

特にRADWIMPSの「前前前世」をバックに入れ替わった2人がそれぞれの生活に順応していくくだりは疾走感と多幸感に溢れていた。間違いなくこの映画のハイライトだと思うし、ここのカットの連なりが観られただけでも「元とったな」と思える出来で、ひとしきり満足した。

 

ふと、昔母親が『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃』を観に行ったあとに、一緒に行ったママ友に「冒頭の、みさえの普段の平日の朝の台所の様子をカメラ固定の早回しで捉えたくだりが面白すぎてずっと見ていたかった(大意)」という話をしていたのを思い出した。1シーンでも1カットでもそういうところがあれば気分が保てる、なんなら得した気分にもなれるってもんですね。『ゴジラ対メガロ』のダム決壊シーンとかね。

 

敢えて文句言うなら三葉の精神が入った瀧くんが奥寺先輩に気に入られる決定的なシーン(ある物を縫うシーン)は、そのシチュエーションまでの持って来方の無理矢理さもあって、今思えば全力で「ねえわ」と言いたいってぐらいだよ。ちなみに僕モテPodcastにそこを質問したら編集長の口から「奥寺先輩同性愛者説」というパワーワードが出てきたよ。画面に映ってないところまでしっかり考えられる観客になりたいっすね。

 

フィクションって良い意味で宗教みたいなもんで、自分の都合の良いようにこの世や自分を捉えられて気が楽になれば、それはフィクションの存在価値としてアリなんじゃないでしょうか。少なくとも気楽な一般大衆の一人としては。そういう意味でこの作品は、もしかしたら隣にいる人とは不可知な縁がどこかであったのかもしれない、あるいはそういう出会いがこれからあるかもしれないな、とちょっと気が楽になるような考えができる、優しい作品だったと思います。なんならちょっとウルっとくるようなシーンもあって、総じて申し分なく楽しめました。

新作映画レビュー045: 『ケンとカズ』

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 『ケンとカズ』

監督、脚本、編集:小路紘史

撮影:山本周平

出演:カトウシンスケ、毎熊克哉、飯島珠奈、藤原季節、高野春樹、江原大介、杉山拓也、岡慶悟 他

 

 

友人のけんす。さんや僕モテメルマガのプッシュで観てきた。後者ではとにかく役者の「顔」が良いという推され方をしていたけど、全くそう思う。今ゴッドファーザーを観てるんだけど、良い勝負してるんじゃないかなぐらいに。なんか良い意味で脂ぎってるんだよ。ちょっと汗でテカってる感じにすごく息遣いが伝わってくるような臨場感や実在感があった。これはもう画像検索してスチールを観れば伝わるレベル。

 

男どもがそういう存在感を放ってるのに対して、女性陣は絶妙なすっぴん感というか。あくまで男たちの話であり、女性たちは話を転がすための関係として配置されてるから、そこは肌や顔で主張して来ない。2人女性が出てくるんだけど、2人とも薄顔なんだよな。意図的なキャスティングなんだろうか。

 

終映後は23時にも関わらず、監督と主要キャストの4人が舞台挨拶に来て質疑の時間を設けてくれていた。

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その時監督は本作を撮るにあたって韓国ノワールに影響を受けたと仰っていた。僕が韓国映画に対して感じる良さは、登場人物を物語やバイオレンスを駆使して、物理的に精神的にいじめ抜くところにある。作品の底に流れるSっ気にニヤニヤしてしまうことが多いのである。本作でもそういうところにぬかりはなく、甘さがない。

 

それに対して日本映画の魅力の一つとして「八方塞がり感」というものがあると僕は思う。直前の危機というよりはやんわり「ああ、もうダメかも。厳しい。」という諦念を抱かせるような重たい手触りというか。小規模な日本映画において郊外や地方の閉塞感とセットで描かれることが多いような気がする。

 

この『ケンとカズ』はその2つの良いとこ取りというか、ハイブリッドのような映画なのかなあと思っている。目前に差し迫った危機と、やんわり遠方にゆらめくような漠然とした不安のようなものが画面に同居しているというイメージというか。ラーメンで例えると豚骨と魚貝のダブルスープですね(下手)。

 

とっても好きなのがケンとカズが夜の街で覚せい剤を売りさばくシーンで、あそこは編集のスピーディーさに目を開かされた。ニヤつくほどの小気味好さがある。あと冒頭のケンがカズのケツを後ろから蹴って無言でパチンコに行くシーンですよ!長年一緒にいる2人のノンバーバルなやりとりから言い知れぬ関係性が伝わってきて、冒頭にこういう気の利いたカットが入るのと入らないのではその後の感じが全く違ってくるだろうなと思いましたねえ。

 

東京では、渋谷ユーロスペースでは終わってしてしまったようですが、10/8から下北沢トリウッドで上映するみたいです。本作を観ずして邦画当たり年を語るなかれと言いたくなる。オススメです。

 

 

新作映画レビュー044: 『ラサへの歩き方 祈りの2400km』

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監督・脚本: チャン・ヤン

撮影:グオ・ダーミン

出演:チベット現地の人たち

 

 

ご無沙汰です。この度、渋谷はシアターイメージフォーラムにて一部(主に僕モテメルマガ界隈)で話題沸騰の本作を観てきました。チベットのプラ村の老若男女11人が聖地ラサへの1200km、その向こうのカイラス山への1200kmを、仏教において最も丁寧な礼拝方法である五体投地で進みながら巡礼していくというフィクション映画です。ドキュメンタリーではなく。

 

五体投地というのはまあ一言で言うとスライディング土下座です。数歩歩いている間に3回手を鳴らして合唱、木や革で作った道具で保護した両手両足を地面に勢いよくズザーッとつけ、最後に頭を接地しその状態で静止したまま拝み、また立ち上がり…というのが流れで、これを繰り返して2400km進むわけです。googlemapで調べてみたら、北海道の札幌駅から九州の鹿児島空港までが2478kmだったのでほぼ日本縦断の距離ですね。

 

 かくいう僕も勿論五体投地なんて言葉すら知らなかったので、映画館で初めて五体投地を目にした時は驚きでちょっと笑ってしまいました。思いのほか勢い良く滑り込んでくるんですよ。人が。画面の外から。ちょっと今までに観たことないアクションだなと思って。そして、村人たちの生活をじっくり観察する冒頭30分以降はかなりの割合で五体投地シーンが続くわけですが、見ていて飽きない。

 

キャストの演技のリアリティーも高く、それは現地の人なんだからまあ当たり前っちゃ当たり前なんですけど、それだけでは説明のつかない馴染み方があったような気もします。

 

以前『百円の恋』を見たときにボクシングのトレーナー役の松浦慎一郎さんがすごく良いなあと思ったことがあったんですが、あとで調べてみたら実際にトレーナーの資格を持っている方だったということがありました。逆に(2話ぐらいしか見たことないんですが)ドラマ「孤独のグルメ」で主人公が食事するお店の店員が役者の人っていうのがあまりにナチュラルで驚いたりしたこともありました。演技のリアリティって難しいし面白いなあと思う次第です。

 

僕が好きな五体投地シーンは、一行の男性陣がとある理由で普通の徒歩での移動を余儀なくされた時、徒歩を始めた地点まで歩いて戻ってまたその分の五体投地を再開するシーンであります。「さすがに歩くよね」とタカをくくっていたので、不意を突かれて感動してしまった。あと五体投地するには良くないコンディションの地面を目の前にした時の「これやる?笑」「やるでしょ笑」「やるか…笑」みたいな無言のやり取りがあったように見える彼らの表情もとても生き生きしてました。

 

彼らの表情が生きていることは、この映画が宗教という彼らの絶対善(という言い方が良いのかどうかわかりませんけど)を理想に近い形で行っているからなのかもしれません。特に村からラサまでの1200kmの道のりは、公式サイトのプロダクションノートを読むと本当にやっているようですからね。無宗教な僕らには日常の中にそういう絶対的な善というものはなかなかありませんし、まあ本当に嬉しいのかもね。

 

仏教が善かどうかは置いといて、とりあえずそれを自分たちの中で善的なものとして設定しておいて幸せを感じるなら(誰に迷惑かけるわけでもないし)良いよねぐらいのスタンスなのかもしれません。そんなことすら考えてなくて、とりあえずあるものを享受しているだけなのかも…。「かも」を多用しすぎですね笑

 

いずれにしても、あんな苦行にしか見えないことを延々やってる人たちの表情が生きていることが印象的な作品でした。

 

『シン・ゴジラ』がもっと面白くなるオススメ記事・動画他まとめ。

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こんにちはー。

 

今回は変則で『シン・ゴジラ』についてのオススメの記事や動画をまとめてみたいと思いますよ。普段映画をあまり観ない人も劇場に足を運んでいる現状に加えて、ちょっと見た事がないぐらい感想や評論が盛り上がっている本作に便乗して、他の人の映画の感想・評論に触れるコトの楽しさを知ってもらいたいというのが狙いです。さすがに大分ブームが落ち着いてはきましたけど、下記の記事を読んだらもう1回行きたくなる…かも。当然既に観た人向けの内容です。

(恐れ多いですがリンクを貼るだけでもなんなのでコメントを添えさせて頂きます。)

 

ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル:週刊映画時評ムービーウォッチメン

www.youtube.com

僕が紹介するまでもないでしょうが、改めて。

評論としての民意の代弁と独自見解のバランス、そして一観客としての面白がりっぷりに毎度楽しませてもらってます。本作に関しては要素が多く時間が足りず前者が多め。

 

樋口尚文の千夜千本

bylines.news.yahoo.co.jp

恐らく世界最速の本格評論。『太陽を盗んだ男』から『はたらくくるま』まで、過去の作品を引用しながら「国難映画」としての真のゴジラを評する。

 

現代ビジネス:賢者の知恵

gendai.ismedia.jp

近現代史研究者の辻田真佐憲氏による、「立派な指導者が出てくれば、日本はまだまだやれる」というメッセージを間に受けるなよと釘を刺すような文章。「野暮は承知であえて言う」と前置きしてあります。高橋ヨシキもメルマガで大筋同じようなことを言ってたけど、少し冷静になった今なら一理あると思える。

 

ASCII.jp

ascii.jp

小道具のノートPCに触れた変わり種。ちゃんとこだわってるんだなあ。

あと、小道具つながりでこんなツイートも発見。笑

 

無人島キネマ

【航:16『シン・ゴジラ』と『庵野秀明論』】 - 無人島キネマ

「無人島に持っていく100本の映画を選び続ける」というユニークな趣旨のブログ。

管理人のウシダさんは自らPodcastを配信していて、本作に関してはそちらで触れています。庵野秀明論、勉強になりました。

 

素敵なものが欲しいけど

yoda44.hatenablog.com

伸びちゃったラーメンの店まで特定される始末。恐るべし。

3回目は竹野内豊に注目して観てみよーっと。

 

 

エキサイトニュース

www.excite.co.jp

最も端的に興奮と感動が伝わってくる、ライターの多根さんによるレビュー。

 

www.excite.co.jp

何言ってるかよくわからないけど楽しそうで何より。

 

www.excite.co.jp

タイトルからはわかりづらいけど、関連書籍の内容紹介が主。

特撮秘宝は僕も買って読んだけど、細かすぎて何言ってるかわからない!笑

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ…欲しい…。

 

www.excite.co.jp

賛否ある石原さとみ(カヨコ)をフィーチャー。

個の象徴、清涼剤か。納得。

 

www.excite.co.jp

涅槃に彼岸かあ。なるほどねえ(思考停止)。

 

シン・ゴジラ』に観る緊急事態法制

bylines.news.yahoo.co.jp

 本職の弁護士の人が書いた記事。作中でも言及されていた有害鳥獣駆除における自衛隊出動のケースも紹介されています。びっくり。

 

HIROKIM BLOG

hirokimochizuki.hatenablog.com

 3.11の当時経済産業省に勤めていた方のレビュー。

これまでの日本に感じていた不満が、ゴジラの出現により解消されることに気持ちよさがあるという指摘、すごく同意です。

 

note.mu

国内・国際政治とミリタリーにかなり造詣の深い方のようです。

特に「フランスの核兵器の意味と価値の描き方」について説得力のある文章は、ほかでは中々読めないんじゃないかなと思います。

 

BLOGOS

blogos.com

自分も虚構の力を信じ、その勝利を真っ向から描く姿勢に心打たれていたんだなと納得。

 

YU@Kの不定期村

blog.goo.ne.jp

最近では特撮秘宝に寄稿もしている特撮・映画ブロガーのYU@K氏による待望のシン・ゴジラ論。形態変化が僕らの意識に及ぼす作用の話には膝を打った。やっぱ単純に文がうまいなと思う。

 

放談主義~映画と音楽のブログ

映画レビュー:No.405 シンゴジラ - 映画レビュー

 本作がファーストゴジラかつダメだった派という貴重な立ち位置のレビュー。

公開日の午前1時に観に行った上でのボロカス具合にフェアさを感じて清々しいです。

(なんでFC2ブログって埋め込み式でリンク貼れないんだろう。)

 

bylines.news.yahoo.co.jp

プロデューサーが庵野秀明に和製ゴジラの仕切り直しを託した経緯が簡潔に語られています。あんたがきっかけだったんかい!!

 

togetter

togetter.com

SNS集合知最高~。ちなみに私はここ。

 

 

という訳で、極々一部ですが『シン・ゴジラ』についての記事等紹介させて頂きました。 見劣りは承知ですが下記の当ブログの記事もよろしくお願いします。では!!

 

qml.hatenablog.com

qml.hatenablog.com

 

 

 

旧作映画レビュー002:観た後の世界が違って見える、黒沢清『CURE』。

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監督:黒沢清

出演:役所広司萩原聖人うじきつよし中川安奈、でんでん、螢雪次朗大杉漣

 

 

かなり時間が経ってしまったけど。『クリーピー 偽りの隣人』は、他の人のレビューを読んで改めて、「色んな観方ができる映画って面白いなあ」と思った一本であった。そんな作品を作った黒沢清監督の代表作として名高い『CURE』を観てみた。四方田犬彦の「日本映画史110年」など所々で聞き及んではいたのだが、いいきっかけだと思ったので。

 

結果度肝を抜かれた。直後の僕のチンパンジー並の感想がこれ。

 

クリーピーを観た映画好きの友人にも勧めたところ、絶賛していた。久しぶりに旧作について書く。どこからどういけばいいのかわからない。

 

とりあえず、クリーピーの記事でこの映画について一言だけ触れた。「クリーピーが光と影の映画なら、CUREは音の映画だ」みたいなことを書いた。生活音をバックに淡々と狂気(と、僕らの日常レベルからは見えるモノ)が行われる本作を観た後だと、逆に生活音がその狂気を想起させる媒体として実生活の中で立ち上がってくる。洗濯機、ガス台、車、エレベーター、踏切の信号、水、蛍光灯、テープレコーダー、波、風、木々のざわめき、鳥のさえずり、なんか大きい機械の作動音、ミキサー、電車、遠くの工事音、ファックス(?)、蓄音機…。今電車の中で書いているけど、当時に比べたら静かな電車の走行音をバックに、目の前のおばちゃんが刃物を取り出して来ないとは限らないなという。僕は普段街中ではイヤホンをしている時が多いけどますます手放せなくなりそう。

 

間宮は人々の心の中にほんの少しある恐怖心や嫉妬心を増幅させアウトプットさせる術を手に入れたのだとと僕は思った。女医との診察のシーンは、その結果自分の心を失ってしまったことを示唆する会話の場面だったのかもしれない。

 

この映画は間宮(萩原聖人)そのものだ。この映画が増幅させるのは、僕らの日常に潜む小さい歪み。編集、演技、音楽、ライティングなどを駆使して僕らを世界の裏側の目撃者に仕立て上げる。ありふれたものをデフォルメして改めて見せてくれるのは映画の面白いところだと思う。それどころか現実がフィクションに侵食される感覚がある。それが上記のような錯覚に繋がっている。

 

その映画を観て良かったかどうか考えるときに「観る前とどこまで違う自分になっているか」という基準を僕は持っている。例えば最悪な登場人物がいる映画を観た後滅多にないぐらい憤ってたりとか。普段は考えもしないようなことを考えたりとか。間宮がこの映画だとしたら僕らは高部(役所広司)である。感じたことのない感覚を持った自分になっているというか。高部にとってその変化こそ他ならぬCURE(治療)だったのかもしれない。

 

今年観た旧作の中のみならず、今まで観てきた映画の中でも上位の見て欲しさ。積極的に誰にでもオススメできる作品ではないけど、ある程度以上の映画好きなら必見。特に邦画ダサい病にかかっちゃってる奴には観ておいて欲しいよ〜。