静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画119: 『犬猿』 (一人っ子の感想)

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監督:吉田恵輔

出演:窪田正孝新井浩文江上敬子筧美和子

 

 

女女男三兄弟の真ん中の人と一緒に観にいった。あの姉妹のようないがみあいは実際にあるらしい。身体的なこととか、現在の状況に関することとか、恋愛的なこととか、メンタル的なこととか。そういう姉に対する嫉妬、また自分もたまに嫉妬されるところもあるということを、彼女は劇場を出ると聞いてもいないのに語り始めた。良くも悪くも見えてしまうんだろう。普段話を聞いていたり、実際会ってみたりするとと仲の良い兄弟なんだなと思っていたけど、そういう話は比較的少なめだったので興味深かった。ちなみに弟と包丁持ち出すレベルの喧嘩をしたことがあるという話を初めて聞いた。映画と同じぐらい面白かった。

 

窪田正孝ファンの友人は姉弟の長女なんだけど、逆に観ている間弟のことは一切頭に浮かばず、ただただ人として各キャラに思い当たるところがあり心に刺さったという風に語っていた。異性の二人兄弟だとそういうもんなのかな。ちなみに一番感情移入したのは新井浩文演じる兄だったらしい。すごい。

 

自分は一人っ子なのでスクリーンとの距離が縮まるような気持ちにはならなかったけど、至極真っ当に面白く観た。

 

「兄弟ってこういうものなんだなあ」としみじみ思ったのは弟と妹が遊園地でテーブルを挟んでする会話のシーン。どちらかが相手の兄弟の悪口を言えば、普段は嫌っていてもその場にいなければちゃんと庇ってあげたりする。良くも悪くも特別な存在なんだろうな、ということは作品のテーマではあるだろうけど、あの1シーンにはそのエッセンスが凝縮されていた。

 

笑った直後にいたたまれない、笑ってしまった自分に気まずさを覚える感じもよかった。姉が、妹と弟が付き合っていると知った途端それまで下請け企業の社長として、恋する乙女としてへーこらしていた態度をひっくり返して攻勢に出るシーンが筆頭。「そんなことしちゃってえ」なんて笑っていると弟にマジギレし始めてしまいには妹にも露骨に酷い仕打ちをし始める。お金払って映画観にきてるのになんでこんな思いしなきゃいけないんだと(無論良い意味で)ゲッソリ。かと思えば姉が兄にベビースターをぶちまける場面で「やべえやべえ」なんて焦っていると思わぬケミストリーで思わず吹き出してしまったりする。終始吉田恵輔のニヤけ面が頭に浮かんでいた。

 

ただ救急車中のやりとりで冷めてしまったりして吉田監督の過去作に比べると秀でた感じはなかったというのが正直なところではある。俺4人の昔の写真がチラッと映るだけですげー笑っちゃったから回想シーンとかは心底要らなかったんだよ。ヒメアノ〜ルの麦茶で味しめてんじゃねえのって感じまでしてしまって。かと思えば露骨にアドリブ合戦の病院の屋上シーンとかはいいんだよな〜。総じて楽しかったですよ。誰かと語るのが楽しい映画。