静かなる備忘。

レビューと言いつつ映画の感想と触発されて考えたことをだらだら書いています。むしろ後者がメインになりつつある。

新作映画066: 『ラ・ラ・ランド』

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 監督:デイミアン・チャゼル

出演:エマ・ストーンライアン・ゴズリング、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ、フィン・ウィットロック、ジョシュ・ペンス、ジョン・レジェンド

 

※若干内容に触れます

 

大阪は万博記念公園の側にある109シネマズ大阪エキスポシティでIMAXwithレーザーというIMAXのすごいやつで観た。幸運にも元々計画していた大阪旅行の初日が公開日だったので。

 

期待が高かったのは否めない。やっぱりTOHOシネマズ新宿の営業初日に観た『セッション』には、始終半開きの口から涎がたれかける程度に度肝を抜かれたから。ただミュージカル映画は本当にほぼ観たことがなかったし、フォーマットにあんまり合わなそうというぼんやりした不安もあった。

 

とりあえずアバンタイトルで懸念が吹き飛ばされた。無人島キネマ(イントロダクション - 無人島キネマ)のウシダトモユキさんも言っていたけど、音楽に乗せて楽しそうに歌ったり踊ったりする映像を見ると泣いてしまうタチなのかもしれない。『ジャージー・ボーイズ』のエンディングでもそうだった。開始1分で号泣したし、これでタイトルがロサンゼルスの空に出て終わりでも良いぐらいだった。「お、オレは凄いものを今見ているッ……」という実感が心の底から湧いてきて、そんな光景が司会を覆い尽くしている。純然たる多幸感だった。映画館で映画観るのって最高だなと思えた。

 

予告では「夢を追う二人のサクセスラブストーリー!二人で頑張ってハッピー!」みたいな感じだと思っていた。アバンの勢いでガーッとやってワーッと終わればいいなとナメた鑑賞態度でいたけど、今振り返れば紛れもなく『セッション』のデミアン・チャゼルの映画だったんだと居住まいを正される。

 

なぜかと言うと「夢を追うことで失うもの」から目を逸らさない姿勢が共通していると感じたから。『セッション』は失いまくって突き抜けた結果おかしなことになっていたところが魅力的だった。そういう因果地平を振り切った二人の神々の戦いを眺めているような気分になった。

 

対する今回の二人は間違いなく自分を取り巻く現実と向き合い通していた。結果別々の道を行った二人が再会した時「もしもあの時こうしていなかったら」という儚い夢を見る。間違いなく夢を追うことで二人一緒の時間は失われてしまった。でも、特にゴズリン力が大爆発していた二人の別れ際の表情で全て報われる感じがした。夢を叶えた人(或いは叶えられなかった人、持たない人)が夢の代わりに見る過去の美しい記憶になっていくのかもしれない。

 

ただ自分の人生を参照して語ったり、夢に対する持論を展開したりしたくなるような熱が上がる作品ではなかったことは否めない。とても素晴らしい作品なのは間違いないけど俺のではないかな、という。この監督、次作は本作のライアン・ゴズリングと宇宙飛行士の話をやるらしい。どんなことになるのか。マストで追いかけたい人であるのは間違いない。

 

 

新作映画065: 『たかが世界の終わり』

 

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監督:グザヴィエ・ドラン

出演:ギャスパー・ウリエルレア・セドゥーマリオン・コティヤール、バンサン・カッセル、ナタリー・バイ 

 

 

「たかが世界の終わり」とか言うので無数にある並行世界を管理するギャスパー・ウリエルが一つの世界の終わりを家族とやるせなく見届ける話かと思ったらそうでもなかった。何らかの理由でもうすぐ死ぬギャスパー・ウリエルが家族にそのことを告げるために12年ぶりに実家に帰る話。

 

原作であるジャン・リュック=ラガルスの舞台版は「まさに世界の終わり」という題が添えられている。「たかが〜」と「まさに〜」では受ける印象がかなり違う。前者は「うん、まあ、終わりだな」ぐらいの感じに思える。後者だと「おしまいだ!!世界の終わりだ!!」とか、何となく絶望感のあるニュアンスがあるような気がする。

 

今作に関しては「たかが世界の終わり」という邦題が合っていたと思う。なぜかと問われたら「諦念」が感じられるからだと答えたい。人が死ねば恐らくその人の世界は終わる。「たかが」という言葉は物事を小さく見たい時に使う。「たかが世界の終わり」という作品には主人公にとっての全ての終わりすら些細なものだと思わせる諦念が漂っていた。

 

何が彼をそのような境地に導いたのか、僕らはスクリーンを凝視して考えるしかない。もっと言えばこの映画は基本スクリーンで現在進行形で起こっていることしか映さない。その中で台詞の端々や、印象的に挿入される思い出の曲をバックにした短いフラッシュバックがある。これが「なぜこんなことになってしまっているのか」という想像力を掻き立てる。ルイや家族が今に至る明確な正解がある映画ではないと思う。そういうところに観客それぞれの生い立ちや家族観が介入してきて味わいが増す。とても映画っぽい映画だと思った。例えば兄貴がルイに強く当たるのは、地元で工具を作ってる自分に対し外の世界に出て活躍する弟へのコンプレックスなのかもとか。

 

僕個人はラストまで見てルイくんをとても応援したい気持ちになった。動物だって家族のいないところでのたうち回って死ぬかもしれないんだから、同じ人間だってそうでいいと思う。家族に何でも言えて、家庭がこれ以上ない安息地というのは良いと思う。そうでなければ別の場所にそういうのを求めればいい。別の港に船を寄せればよい。僕にはそういう風に見えた。作中では説明されないけど、ルイくんは12年そういうのを気持ちで外の世界に接してきたから名うての劇作家になれたのかもしれない。

 

余談。僕の周りに3兄弟の真ん中の人がいるが、結構中立の立場というか、上と下の兄弟、両親の雰囲気を読んで立ち回る立場になりがちらしい。集団の場での自己主張は強くなく、人に合わせることが多い。彼は(妹はまだ小さかったとは言え)そういうのに嫌気が指したのかもしれない。

 

別にとても面白く見たとか特別好きって訳じゃない。でも考える上で自分の人生や境遇を参照し確認する必要がある映画。小津安二郎作品の後味にちょっと近いかもしれない。こうして振り返ると味わいが増す。27でこういうのが撮れちゃって見せ方も印象的なところがある。『マザー』はいまいちピンとこなかったけど、ようやくグザヴィエ・ドランの凄みに気付けたかも。あとギャスパー・ウリエルはかっこよすぎて嫉妬。

 

新作映画064: 『ザ・コンサルタント』

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監督:ギャビン・オコナー

出演:ベン・アフレックアナ・ケンドリックJ・K・シモンズジョン・バーンサルジョン・リスゴー

 

 

 ナメてた会計士が殺人マシーンでしたモノ。しがない田舎の会計士のクリスチャン・ウルフには実は世界の危険人物の帳簿を仕切り、狙った獲物は外さない凄腕スナイパーという裏の顔があったのだッッッ……!!!

 

これだけ見るとなんかたまにあるやつ風ですけど。『イコライザー』とか、まあスパイダーマンとかスーパーマンとかもそうっちゃそうだし。しかし今作で特徴的なのは彼に「高機能自閉症」という設定が添加されているところかと。

 

わかりやすく1シーンを挙げるなら、幼少期から裏返しにしたジグゾーパズルを完成させられるほどの空間認識能力を持つが、一つのことを終わらせないとパニックを起こしてしまうので、ピースの一つが見当たらないことで同様の症状が起きてしまうシーンなど。ちなみに真っ白なパズルを作るっていうのはJAXAの宇宙飛行士の試験で実際にある。宇宙兄弟で読んだ。それだけスゴい能力を持っているのだ。

 

 そんな彼がそのワザマエで悪代官をバスバス撃ち殺す痛快な映画なのかと思われがちな気がするし、僕もそんなイメージを持っていた。が、見ているとなんかおかしい。おかしいというかあまりに淡々としすぎているので逆にびっくりした。効果音で言うとモソモソしている。なんかモソモソモソモソしていた。

 

初めて実力を発揮するシーンもシチュエーションと描き方のせいでどこかぬべーっとしている。とにかくヒロイックに描こうとしていない。ただしかしウルフがやっていることはこれ以上ないぐらいヒロイックである。僕は「これ以上ないぐらいヒロイックなことをあまりヒロイックに描かない」というところにまず惚れた。

 

僕にはこのあまりに素直で飾らない描き方がウルフの朴訥で実直な人柄にも重なるようで、とても好みである。

 

そして何よりこの作品が素晴らしいと思うのは、「高機能自閉症」というレッテルを「確かな人物の個性と魅力」に転化しているところだ。「障がいがあるから応援したい」などという(どこかの国の感動ポルノよろしく)短絡的でクソな上から目線に立たせることなく、単に得意なことも多いが苦手なことも多い、尖った個性的な一個人として接することをさせてくれる。症状の総称としての名称は必要でも、それ以上でもそれ以下でもないということを気付かせてくれる。クリスチャン・ウルフという人物の裏表、過去と現在を描くことで、それらの全てが一つとなっているのが今の彼自身であるということを実感する。それがつまり人間を描けているということなのだと思う。

 

僕はこういうふわっとしたことしか書けないのですが、張り巡らされた伏線や人物関係などがいまいち把握し切れずネタバレ有の解説記事などを読むとなんとよくできたお話かと驚かされました。同時に自分の理解力の低さに泣いた。余談ですが『裏切りのサーカス』とか『マーシュランド』とか、説明的でない映画をきっちり脳内処理できるようになりたいです。

 

割とあらゆる面で素晴らしい作品。オススメ。

書いてたらもう一回観たくなってきた…。

新作映画063: 『マグニフィセント・セブン』

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監督:アントワーン・フークア

出演:デンゼル・ワシントンクリス・プラットイーサン・ホークイ・ビョンホン、ビンセント・ドノフリオ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアー、ピーター・サースガード、ヘイリー・ベネット 他

 

 

※内容に触れてるのでこれから観ようという人はあれしてください

 

滑り込みでやっと観られた。それだけにレコメンが遅くなってしまったのが悔やまれる良作でした。正直『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』とかあんまりピンとこなかったけど『グッドバッドウィアード』は好きぐらいの西部劇弱者ですがこの作品は十分楽しめました。リテラシーとか関係なく面白いよ。

 

評判の高さと尺の長さから割と身構えていたのだけど、期待以上に満足。『七人の侍』フォーマットの中でコンパクトにまとめられていて、過不足なくちょうど良い感じを受けた。個人的に黒澤明御大の原典はさすがに尺が長すぎると思ってるので、多少リクルートシーンがあっさり目でもこっちの方が好みではある。

 

やっぱり掴みというのは大事で、アバンタイトルでノせられると「いいねいいね〜」と口の端が釣りあがってしまう。本作においては金採掘の権利を有するボーグ氏一味が平和だったであろう街のメインストリートの突き当たりに位置する教会で悪虐非道の限りを尽くすシーン。

 

特にボーグ氏の初登場のタイミングが絶妙。街に住む若者がボーグ氏と戦おうと勇ましい声を上げると、それに賛同する人が現れ…ようとするところにバーンと大見得を切って登場。一目で悪党とわかる上に、手に持った謎の小瓶が一層不穏感を煽る。子どもにそれを触らせるところでそれがピークに達すると一転、ただの塵であることがわかる。「なんだ」と思っているとそこからボーグ氏が自らの目的を高らかに宣言、住民たちは十分な金も与えられず街を追われ、さもなければ命を取られることがわかる。こいつ、腐ってやがるッ…と憤る間も無く神父を始めとした村人は教会を追われ、教会は炎に包まれ、声を挙げた若者をはじめ無辜の住人たちは殺害され…。

 

あまりの仕打ちにこっちまで悲しくなってきたところにタイトル。この無念を晴らしてくれと祈らずにいられない瞬間。アバンタイトルでお膳立ては完璧。多少ガンマンたちの動機が弱くてカタルシスが薄くても、それを補う悪役演出、お見事です。

 

続くデンゼル・ワシントン演ずるサム・チザムが荒くれ者たちのたむろする酒場に現れるシーン、こちらまで固唾を飲んで見守ってしまう。騒いでいたガンマンたちが静まり返り、思わず懐の銃に手をかける数カットがたまらない。電車に乗ってる時にヤバそうな奴が乗車してきた時の空気感に似ていた。

 

サム・チザム(声に出して読みたい英語)に関してはこの導入から最後まで描き方がいちいち完璧にキマっていた。早撃ちがマジでこっちにまで見えなくて笑ってしまった。あの乗馬しながら真後ろの敵を撃つ動作も真似したくなる(できない)。この人のネタバラシに関してはまああってもなくてもいいと思う。僕はベタながらこの人推しですね。あとインディアンも好き。

 

ヘイリー・ベネットのヒロインもこちら側に表情の変化で訴えてくる演技が見事でした。ボーグ氏の演説を聞いている時や彼氏が声を上げた時に見せる不安げな顔とガンマンたちの前で見せる男勝りな顔のギャップ。でもやっぱりお墓の前で泣いちゃう感じ、守りたい。ちょっとソバカスとかあって幼顔なのもグッとくる。素晴らしい。

 

セットや衣装、ロケーションがリッチで眺めているだけで満足感があり、銘々キャラも最高。総じて申し分ない、過不足ない、滅多にない、ないない尽くしの秀作だと思います。オススメ。

新作映画062: 『ドクター・ストレンジ』

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監督:スコット・デリクソン

出演:ベネディクト・カンバーバッチキウェテル・イジョフォーレイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、マイケル・スタールバーグ、ベンジャミン・ブラット、スコット・アドキンス、マッツ・ミケルセンティルダ・スウィントン

 

 

どうも。なんか皆騒いでるからと半ば義務感で観たキャプテン・アメリカの新作がヒーローバトルだと聞いて映画館に行った結果目を見開かされた者です。いやシビルウォーは本当に最高だった。脳みそが特撮ヒーローが好きだった頃の(今でも好きだけど)純粋な幼稚園児に戻っていた。

 

なので本作がMCU作品を映画館で観るのは2回目なんだ。立川シネマシティの極上爆音で観て、ビルが曲がるたびに背もたれが音で揺れる体感はやっぱり迫力あったね。でもIMAX3Dで観たいなぁーこれは。2Dで観ながら「これは3Dやー」ってすごく思ってしまった。

 

や、ただもう一回観に行くかと言われればそれは否。断じて否。

 

ストレンジが魔法使いとして成長していくシーンが最初以外ほぼないのがまず残念。予告にもあった「研究と実践」をしっかり見せてくれるのではないかと期待していただけに。修行シーンって面白くなるじゃん。NARUTOの螺旋丸の修行とか超ワクワクしたじゃん。主人公に言わせたんだからそこは見せてくれよ。雪山からゼエゼエ言いながら出てきた時は結構がっかりしたよ。ペッパーポッツが部屋の前で時計見てたらいきなり社長が新しいアイアンマンスーツ着て出てきたら拍子抜けするじゃん。そんな感じ。

 

もうビルが曲がったり伸びたり、宇宙に飛ばされたりとか映像は新鮮だった。それだけに構成、というか脚本がどうなのかなと思った。つまり冒頭にエンシェント・ワンとカエシリウス様のバトルを見せすぎたのではないかと思う。そのせいで似たような絵面の中盤の戦いはいまいちアガらなかった気がする。もし冒頭にそれをやるなら中盤の戦いはもうちょっと差別化してほしかった。だから最後のストレンジの蹴りのつけ方は予想外で、そこはよかった。

 

なんか宣伝配給かなんかのおばちゃんが言ってた恋愛要素ってやつが本当に話に全く寄与していなくて全然必要性を感じなかった。そのくせ手術とかはさせるから都合の良さばかり目についた。いきなり運んできて手が空いてたらそんなテンポで手術できるんすか。

 

や、でもヒロインとの関係性とかって1だとそんなもんなのかもしれない(その点アントマンはいい)。無人島キネマでウシダトモユキさんも言ってたけど続きで面白くなりそうな要素はいっぱいある。これからどんな魔法を見せてくれるのか、他のマーベルヒーローとどのように絡んでいくのか、エンドロールのあいつが何をするのか、大いなる力の代償など。楽しみ。

新作映画061: 『沈黙 -サイレンス-』 と無神論者の僕が考える宗教。

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監督:マーティン・スコセッシ

出演:アダム・ドライバー、アンドリュー・ガーフィールドリーアム・ニーソン、キアラン・ハライズ、浅野忠信窪塚洋介イッセー尾形塚本晋也小松菜奈加瀬亮

原作:遠藤周作

 

 

かなり遅めの2017年新作映画初めでした。改めて今年もよろしくお願いします。だらだらしてたらもう二月なっちゃいましたけど。

 

まず暗転〜1カット目までの流れに魅了された。流麗で美しい。アカデミー撮影賞にノミネートされた後に観たからかもしれないけど、巻き戻して見返したくなるようなカットがままあった。よく言われることだけど、ことこの映画に関しては「カメラの視点=神の視点」という意識を保持しながら観てた(何かわかったとは言ってない)。真上から登場人物を見下ろすカメラアングルが何度かあったからかもしれない。撮り方に注目してみるとまた面白そう。

 

特定の宗派を信奉していないどころか初詣にも行かないレベルの無神論者の僕がこの映画を観て信仰というものについて考えた時、僕の頭に思い浮かんだのは「溺れる者は藁をも掴む」という諺でした。

 

この世をすごく流れの速い川だとしましょうよ。気が付いたらそんな川に突き落とされてる状況。目に口に冷たい水が入って辛い、皮膚の感覚がなくなってきて向こう岸まで泳ぎ切る気力もない、そもそも泳ぎ渡ったところに何があるのかもよくわかんない。もうやめちまおうかと匙を投げそうになる人がいます。

 

そんな彼の閉じかけの目の前に上流から藁が流れてきました。激しい流れに乗って咄嗟に掴んだそれを眼にし、彼は上流にいてこの藁を流した存在がいるのかもしれないと思ってしまう。対岸に渡りきってその存在を一目拝んでみたいというモチベーションを得た彼は、再び泳ぐ気力を奮い立たせるのであった―。

 

この映画におけるキリスト教(あるいは宣教師)が藁です。ポイントなのは藁自体は川を渡ることにおいて何ら「役に立たない」ということです。藁が進ませてくれるのではなく、進むのはあくまで人間です。藁はモチベーションを上げるためのきっかけでしかない。もっと言うなら人間がたかが藁如きに勝手に意味を与え、それを信じ込むことで勝手に盛り上がっているだけです。

 

更に付け加えるなら、この下手くそな例え話が「彼は無事川を渡ることができました。めでたしめでたし。」で終わるかどうかもわかりません。藁に触発されて泳ぎ続けた結果、そこで諦めた方が楽なぐらいキツい目にあって結局溺死することも有り得るからです。ピラニアの群れに全身食いちぎられることだってあるかもしれません。今作中で弾圧され、中には命を散らした日本の隠れ切支丹たちはまさしくこのパターンに当てはまると言えるでしょう。

 

いつかにどこかでで「お坊さんが宗教とは人が幸せに生きるための『手段』であると言っていた」という文を読みました(多分僕モテメルマガ)。あくまで手段ですから良い結果を呼び込むとは限りません。ただ、自分が選択した手段を一心に信じ、その教えを実践することに価値が有ると思い込むことが、彼らにとっててはこの世を生きる糧になっているのかもれません。例えその手段のせいで死という悪い結果を呼び込むことになっても、宗教という手段を貫いた人生に悔いはないと思えるのかもしれません。僕は塚本晋也の身体を張った壮絶な演技を観ながらそんなことを考えていました。

 

そういう手段と結果を天秤にかけ、いつも生き抜くという結果が勝ってしまうのが窪塚洋介演じるキチジローなのでしょう。生き残る度にまたぬけぬけとやって来て許しを請う、そういう情けない存在を赦すロドリゴもまたその度救われていたのかもしれません。

 

僕、相田みつをの「幸せはいつも自分の心が決める」って言葉が好きというかこれはもう普遍の真理だと思っているんですけど、多分宗教はそういう意味で最強の手段なんでしょうね。信仰のせいでキツい目に遭っても「いや、でも俺は信仰できて幸せだから」と思えてしまう。思えてしまうというか、そこを絶対的に信じることから入るべきものなのだろうと思います。

 

貧しい暮らしを強いられていた人が多くいた時代、宗教という手段を取った人々の気持ちはこの映画を観てからこうして考えれば全くわからないものではありません。それは現代でもまた然りです。今までは宗教に浸る人の気持ちが一切わからなかったのですが、うーん、ほんのちょっとわかったかもしれません。体感として納得できたというか。そういう意味では観てよかったです。

 

映画:オールタイムベスト10の話('17 1/16現在)。

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突然ですが、今までちゃんと決めたことのなかったオールタイムベスト10を考えてみました。と言ってもちゃんと映画を観るようになってから3年半ぐらいしか経っておらず、本数で言えば550本程度しか観ていないのですが。

邦画10→洋画10→混合10の順で。

 

〈邦画〉

10位:生きる (1952)

監督:黒澤明

主演:志村喬

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観た中で一番励まされた映画。

余命が幾ばくもないことを知り怯える老人、あることをきっかけに(文字通り)お役所仕事をやめて余命を燃やす老人を志村喬が全身で表す。特に暗闇に光る眼が忘れられない。僕は「例え死ぬ半年前でも人は変われるかもしれない、始めるのに遅いことはない」というメッセージと捉えた。誰もがそうでないというバランスのラストも綺麗事のみに終始していなくて好き。

 

 

9位:秋立ちぬ (1960)

監督:成瀬巳喜男

主演:大沢健三郎

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観た中で一番嬉しい発見だった映画。

たまたま空いた時間に初めてふらっと入った池袋新文芸坐で出会った作品。

秀男は父を亡くし田舎から母と東京に出てきたが、母は住み込みで働く旅館の客と駆け落ちしてしまう。都会暮らしに馴染めない秀男だったが、旅館の娘の順子と仲良くなっていく。

二人の子供がお互いを居場所とし仲を深める様がとても微笑ましくも切ない。「~ずら」「~じゃん」と田舎訛りが抜けない小六の秀男くんと小四にも関わらずやたら「大人をわかった」ようなことを言う都会っ子の順子ちゃんのやりとりが笑いを誘うのだけどどこかやりきれない感じ。それは彼らが絶えず大人の都合に振り回されているから。恐らく子どもであるということの良し悪しを同時にスクリーンに投影しているからなのだと思う。

鑑賞後に調べるとソフト化されていないという。口惜しいのと同時に貴重な機会に巡り会えたと少し嬉しくなる自分もいた。

 

 

8位:CURE (1997)

監督:黒沢清

主演:役所広司

 

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観た中で一番怖い映画。

入江悠監督の「黒沢清作品は『はっきりした私(主人公)とあいまいなあなた』というテーマに貫かれているという指摘はまさしくと思った。あいまいな存在に主人公が侵略されるにつれ、スクリーンに映る全体もその色に染まっていくような感じ。ひいてはそれが観たあとの僕らの日常にも残像として焼きついて景色が違って見える感覚がこの作品にはある。街中で独り言を喋っている知らない人を見ると確実にこの映画を思い出す。

詳しくは個別記事で。

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7位:シン・ゴジラ (2016)

総監督:庵野秀明 監督:樋口真嗣

主演:長谷川博己

 

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観た中で一番圧倒された映画。

それは展開のスピーディーさ、情報量の多さ、画面に映るもの、耳からはいるものあらゆる意味において。前情報なしでこの作品世界に入り込めたことで、今かかってる映画を映画館に観に行くことの喜びも改めて感じられた。

僕は特撮作品が好きなのでオールタイムベストを決めるなら一本は入れようと思ってたけど、その枠は迷いなくこの作品にした。

 詳しくは個別記事で。

 

qml.hatenablog.com

 

 

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6位:何者 (2016)

監督:三浦大輔

主演:佐藤健

 

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観た中で一番俺の映画。

語り尽くしたので最早何も言うまいという感じすらある。

自分が今このタイミングで公開されたのもそうだし、内容的にもドンピシャだった。

詳しくは個別記事で。

qml.hatenablog.com

 

 

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5位:SR サイタマノラッパー (2009)

監督:入江悠

主演:駒木根隆介

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観た中で一番映画の多様性を感じた映画。

主人公は何かを達成するわけでもないし、むしろ映画開始時より後退してる。

ダメでみっともないけど、だからこそそこに目を向け目を逸らさない。

観たのが映画を観るようになってすぐだったというのもあり、こういう映画もあるんだと驚いた。

一回目はラストに困惑したけど、エンドロールを見ている内にキャラクターたちへの思い入れが深まってその場で二回目を見始めた稀有な作品でもある。

そういうのもあってやっぱり1が一番好きかな。

 

 

4位:あの夏、いちばん静かな海。 (1991)

監督:北野武

主演:真木蔵人

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観た中で一番美しい映画。 

主人公はまずしい格好だし、サーファーたちのルックはモロに90年代風でクソダサいし、サーフィン映画なのに海や砂浜も汚い。なのになぜか異様な美しさを感じるあたりやっぱり北野武なのかもしれない。ファーストカットから素晴らしい。あと音やセリフが少なくて作業に適しているので一時部屋にいるとき延々流していた。

僕はどうしてもラストのショットの連なりが好きすぎてならない。もうどうしてもあの河原さぶの表情で泣く。

 

 

3位:私たちのハァハァ (2015)

監督:松居大悟

主演:大関れいか、真山朔、井上苑子三浦透子

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観た中で一番作り手の優しい眼差しを感じた映画。

自分たちが世界の中心と思っているようなノリ(街中にめっちゃいる)の女子高生四人組がクリープハイプ(バンド)のライブのため勢いで北九州から東京に自転車で繰り出すのだが、勿論一筋縄で行かず、世界の広さやままならなさ、自分に出来ること、そして出来ないことを思い知り鼻っ柱を叩きおられる話です。甘やかしがほぼ感じられず、ハッキリ若さの愚かさの部分にスポットを当てている。ただ本当に感動したのはラストシーンで愚かさ込みで彼女たちを肯定する目線を感じたこと。これは前述のサイタマノラッパーや、これから挙げる幾つかの作品にも通じる要素ですが。

単純に全編通して四人が異様なリアリティを発揮していて、かつて女子高生だった人やそれを見てた男どもはそれだけで面白いこと請け合い。

 

 

2位:椿三十郎 (1962)

監督:黒澤明

主演:三船敏郎

 

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観た中で一番面白いと思った映画。 

勉強のために観た『生きる』とこの作品が良すぎて黒澤明フルマラソンをやった思い出。とにかく三船敏郎がかっこいいし話も単純明快で面白い。何より素晴らしいのが尺が96分。

詳しくは個別記事で。

qml.hatenablog.com

 

 

1位:そこのみにて光輝く (2014)

監督:呉美保

主演:綾野剛

 

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観た中で一番「観て良かった」と思った映画。

どん底にいる男女が引力とか言えないような力に導かれて距離を縮めていく様に「これが映画か」とテアトル新宿の暗闇で思った記憶。加えて一人の優しい若者が凶行に及ぶまでの心の動きが克明に静謐に描かれている。撮影、音楽、役者のすべてがこれ以上ないように思えるのは、キャストとスタッフがこれ以外ないハマりかたをしているからなのだろう。質、内容ともにベスト邦画とさせて頂きました。

 

 

〈外国映画〉

10位:明日、君がいない (2006 オーストラリア)

監督:ムラーリ・K・タルリ 

主演:テリーサ・パーマー

 

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観た中で一番忘れられない映画。

冒頭、学校内で誰かが命を絶つ。話はその日の朝に戻り、6人の高校生たちの悩みや問題が互いに交差しながら描かれていく群像劇。

ネタバレはしたくないので詳しく言えないけど、僕はこの当時19歳の監督の意図に見事にひっかかって、結果的に反省した。賛否分かれる作品だし重いテーマを扱ってるけど未だに頭にこびりついてたまに思い出す。学生たちのインタビュー映像が逐一挿入されたりして作品として良く出来てるのかどうかはわからないけど、メッセージ性の強さという一点でインパクトがある作品だった。入れるか迷ったけど入れた。

 

 

9位:グラントリノ (2008 アメリカ)

監督、主演:クリント・イーストウッド

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観た中で一番重みを感じた映画

コワルスキーがキャビンでバドワイザー飲みながらタオを見守るシーン最高。

頑固爺さんが近所の若いのと交流して心を開く話と言えばそれまでなんだけど、その骨子の周りに人種・戦争といったアメリカという国にまつわる要素やイーストウッド自身の人生で重ねてきたものが重層的に肉付けされているからこその感動があったと思う。

勝手にアメリカ映画=家族愛みたいなイメージを抱いていた頃だったので、それを裏切ってくれたストーリーも嬉しかった。血縁関係とか人種とか関係なく受け継がれていくものがあるってことなのかもしれない。

余談だけどこの映画を撮ったあのイーストウッドが行き過ぎたポリティカルコレクトネス主義社会に辟易した結果トランプ支持派にいるってのがなんか皮肉。その理由にこの映画の脚本を「ポリティカルコレクトネスに欠ける」と言われたエピソードを例に挙げててちょっと悲しいぞ。

 

 

8位:最後まで行く (2014 韓国)

監督:キム・ソンフン

主演:イ・ソンギュン

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観た中で一番意地の悪い映画。

以前「韓国映画の魅力は主人公を虐め抜くSっ気にあると思う」って書いたけど、それが最もエンターテインメントな形で発揮されてて最高に面白い作品(ちなみにシリアス方向で発揮されてて好きな作品は『息もできない』) 。

汚職警官の主人公が母親の葬儀途中に「科に財務監査が入った」と連絡を受け、中抜けして署に車を飛ばしてる途中で人をはねてそれらの火消しに奔走しまくる話。もうあらすじが酷い。それら隠蔽のプロセス一つ一つが絵ヅラとして間抜けだったり、意外な邪魔が入ったりしてバレそうになる様がいちいち笑える。主人公は大体こんな↑感じの顔をしている。

自分はこんな目に逢いたくないが見ている分には最高に面白い。映画の良いところだ。

 

 

7位:バッファロー'66 (1998 アメリカ)

監督、主演:ヴィンセント・ギャロ

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観た中で一番愛らしい映画。

主人公の印象が冒頭とラストで一番良くなった映画でもある。初見の感じの悪さにちゃんと理由があって納得度も高いのがいい。しかもとてもありふれた理由笑

「最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた」というキャッチの通り、出所したばかりの主人公の下に天使のようなクリスティーナ・リッチが現れる。色も全体的にめっちゃ白いし意図的なんだろうけど最早おとぎ話なレベルで天使。彼女を通して主人公ビリーの境遇が明らかになるにつれもう彼がたまらなく好きになってしまった。

もうラストはあれ以上ないと思う。愛すべき作品。

 

 

6位:イントゥザストーム (2014 アメリカ)

監督:スティーヴン・クォーレ

主演:リチャード・アーミティッジ

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観た中で一番登場人物に「頑張れ」と思った映画。

正直B級ディザスター映画だと思ってナメていた分、いやそれを抜きにしても人間ドラマの部分で非常に満足度が高かった。こんなに登場人物に死んで欲しくないと思った映画もそうない。

冒頭→(竜巻で死に際に直面した)中盤→(竜巻を経た)終盤の主人公たちのスタンスの変化にとても感心。手持ちカメラで撮ってる意味もちゃんとある。とてもよくできたドラマだと思います。竜巻が大迫力なのは言うまでもない。特にストームにイントゥするカットは出色。劇場で観られる機会があったら是非観て頂きたい。しかも89分!!!イントゥせよ!!!!!

 

 

5位:トレインスポッティング (1996 イギリス)

監督:ダニー・ボイル

主演:ユアン・マクレガー

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観た中で一番かっこいいと思った映画。

これはもうラストが本当に好きですね。元々映画のえの字も知らない高校生の時にUnderworld目当てで観たんですけどこれ以上ないかかり方してて。あの曲が流れだすタイミングがマークの決断を物語ってる。過去の自分と決別する瞬間。

そういう意味で今年公開の続編が蛇足にならないことを祈る…。

 

 

4位:22ジャンプストリート (2014 アメリカ)

監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー

主演:チャニング・テイタムジョナ・ヒル

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観た中で一番笑った映画。

映画で腹が痛くなるぐらい笑ったのはこの作品が唯一かもしれない。ジョナヒルが警部の娘とヤったことを知った時のチャニングテイタムとビュッフェで暴れるアイスキューブの時点で5億点です。前作じゃなくこっちを入れたのはアイスキューブ補正がデカい。映画館で観てみたいなあ。

 

 

3位:クリード チャンプを継ぐ男 (2015 アメリカ)

監督:ライアン・クーグラー

主演:マイケル・B・ジョーダン

 

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観た中で一番燃えた映画。

『ロッキー』の当時の感動が本当の意味で僕らの世代に蘇ったということなのかもしれない。

老境に達したロッキーと、ロッキー達の戦いに憧れた若者の最高の共闘はいつ観ても僕を奮い立たせてくれる。

詳しくは個別記事で。

 

 

qml.hatenablog.com

 

 

2位:フォックスキャッチャー (2015 アメリカ)

監督:ベネット・ミラー

主演:スティーブ・カレル

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観た中で一番悲しい映画。

 「なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?」というキャッチが気になって、特に評判も聞かずにふらっと観にいったら冒頭5分で「あ、いい」と直感した。「主人公はレスリングの金メダリストでありながら名声や富から程遠い生活をし、日々の生活に満足していない」という事実が静謐なタッチの画面からひしひし伝わってきたから。

この予感を最後まで裏切らない傑作だった。自分にないものを他者の中に見つけてしまったのに手に入れることが叶わなかった悲しい男の話。

 

1位:クロニクル (2013 アメリカ)

監督:ジョシュ・トランク

主演:デイン・デハーン

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観た中で一番影響を受けた映画。 

超能力を手に入れた高校生3人がその様を自分たちのカメラで撮影し始めるが、段々エスカレートしていく力の行使で3人の関係性に変化が生じていく話。

序盤のほのぼのバカ男子トーンから一転、中盤以降は主人公アンドリューの家庭環境や自身の「ある失敗」による凶行が描かれる。

初めてシネマカリテで観終わった時は茫然自失でしばらく立ち上がれなかった。しばらく3人のことばかり考えていた。同時に映画ってこんなに面白いんだな、もっとこういう作品に出会いたいなと思うようになった。

今映画館に通ったり家で過去作を観たりするようになったきっかけの作品というのもあるし、単純に一番登場人物を身近に感じたし思い入れがあるからというのもある。

文句なしの個人的ベスト。

 

 

というわけでオールタイムベスト10はこちら。

〈混合〉

10位:シン・ゴジラ (2016)

9位:何者 (2016)

8位:SR サイタマノラッパー (2009)

7位:あの夏、いちばん静かな海。 (1991)

6位:椿三十郎 (1962)

5位:クリード チャンプを継ぐ男 (2015)

4位:私たちのハァハァ (2015)

3位:そこのみにて光輝く (2014)

2位:フォックスキャッチャー(2015)

1位:クロニクル (2013)

 

案の定映画館で観た最近の映画が多くなっちゃってますけど…笑

これがどんどん塗り替えられてるような出会いがあればいいなあと思います。

じゃまた。